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富士山崩壊!

地表を揺るがす大爆音が関東平野全域に轟いた。
富士山が噴火し、山体は崩壊した。

スマホの警報が鳴り止まない。
テレビはどの局も富士山の噴火の臨時ニュース一色だ。

わたしはオフィスの窓からいつもなら富士山が見える丹沢の上空を見た。
黒い噴煙が上空まで舞い上がり、空を一面に覆っている。
午前11時だというのに夕方よりも暗い。
偏西風に乗った大量の粉塵がもうじき東京にも向かって来るのだろう。

「命を守る行動を!」 
会社の大画面モニターにつながれたテレビが絶叫している。
かつての中腹部あたりの2箇所から噴出した大量のマグマは、2つの巨大火砕流となって、1つは駿河湾方向に、もう1つは大井松田方向に猛烈な速度で向かっているという。
もう誰にも止められない。

恐ろしい地鳴りととももに激しい揺れが東京を襲った。
最新の免震構造を持つビルとはいえ、36階にあるわたしのオフィスは恐ろしいほど揺れた。
揺れと同時にわたしも同僚達も、オフィスにいた人間は例外なく、床に叩きつけられ、ビルの激しい揺れに合わせて、右に左にオフィスの床を転がり続けた。

ようやく激しい揺れが落ち着いてきたと思った時、お腹の底に響くようなとてつもなく大きな爆発音が東京の空に轟いた。
音というより衝撃波と言った方が近い。
厚さ32ミリの最新の合わせ強化ガラスでできたオフィスの窓という窓がいっせいにメキメキメキッと不気味な音を立て一瞬で粉々となった。

モニターの中で臨時ニュースを伝える男性キャスターが顔面蒼白になって何か叫んでいる。
衝撃波で音声が切れてしまったのか、何を言っているかわからない。
何か緊迫した事態が起こったのは間違いない。

テレビ画面にテロップが流れた。

午前11時47分頃、箱根大涌谷付近で大規模噴火が発生。
芦ノ湖は崩壊した模様。
政府は、火砕流、土石流が切迫、もしくは発生している可能性が高いとし、緊急安全確保を発令。
箱根から半径10km圏内の住民は直ちに身の安全の確保をしてください。

さっきの地震は箱根爆発だったのだ。
噴火の衝撃で発生したP波到達から約4分遅れで箱根の噴火音が東京に到達したということらしい。

なんだか無茶苦茶だ。
とんでもないことになった。

わたしはよろよろと立ち上がり、乱れる髪の毛を気にしながら、突風が吹き込む窓越しに再び丹沢方向の空を見る。
新たな巨大な噴煙が左手の地平線あたりからもくもくと立ち昇っている。
あれが箱根か・・・

街のあちこちから白い煙が幾筋も上がっていた。
街中で火災が起こっているようだ。
海側では炎が帯となって真っ赤に連なっている所もある。
コンビナートもやられたようだ。

道という道は車のブレーキランプが連なり、赤い筋となってどこまでも続いている。どこもかしこも大渋滞が起こっている。
これじゃ消防車の到達は期待できそうにない。

眼下の品川駅は入場できない人たちが歩道にあふれ、数百メートルは並んでいる。
電車はもう動いていないのだろう。
駅の構内では身動きできないぐらい人が押しあいへしあいしているのだろう。
家に帰るのは無理そうだ。

いつのまにか上空に10機以上のヘリが飛び舞っている。
Xの情報では、首相を含めた政府首脳は自衛隊ヘリを使って東京から脱出するらしい。
首都としての東京の機能はじきにダメになるということなんだろう。

東京終わったな。
わたしは呆然と噴煙が舞い上がる西の空を再び見つめる。

これはひょっとしてチャンスかも・・・
わたしはごったがえすオフィスビルの非常階段を人をかきわけ駆け下りる。
そして地表に降りると田町方面に向かって駆け出した。

ヤサイマシマシ、アブラ少なめ、ニンニク、カラメ!」

二郎に並ばずに食べれた初めての日になった。


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