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日本のシビックテックの先駆者に学ぶ「悩みながらも走る」こと

この記事は、"武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース"というやたら長い名前の大学院での "クリエイティブリーダーシップ特論I" というこれまた長い名前の授業での学びを紹介する記事のシリーズ第九弾です。

この授業では、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されている方々をゲスト講師として、60分講義・30分ディスカッションというセットで学びを得ています。

第九回 (2021年9月6日)は、関 治之さんからお話を伺いました。

自己紹介

記事の本題に入る前に、簡単に自己紹介をさせてください。

私は、社会人として働きながら武蔵野美術大学の大学院に今月2021年4月に入学しました。仕事ではUXデザイナーとして働いており、大学院ではUXデザイナーの仕事に活かせる生きた知識を、体験も通して身に付けたいと思っています。

ゲスト講師のご紹介

関 治之

一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事。「テクノロジーで、地域をより住みやすく」をモットーに、会社の枠を超えて様々なコミュニティで積極的に活動する。
住民や行政、企業が共創しながらより良い社会を作るための技術「シビックテック」を日本で推進している他、オープンソースGISを使ったシステム開発企業、合同会社 Georepublic Japan CEO及び、企業のオープンイノベーションを支援する株式会社HackCampの代表取締役社長も勤める。
また、デジタル庁のプロジェクトマネージャーや神戸市のチーフ・イノベーション・オフィサー、東京都のチーフデジタルサービスフェローなど、行政のオープンガバナンス化やデータ活用、デジタル活用を支援している。
その他の役職:総務省 地域情報化アドバイザー、内閣官房 オープンデータ伝道師 等

GitHubでのプロフィールより)


ゲスト講師の活動内容

「新型コロナウイルス感染症対策サイト」を公開

Code for Japanでは、東京都から委託されて、患者数、検査実施件数などのデータを一覧にまとめた「新型コロナウイルス感染症対策サイト」をに公開し、見やすさと情報の正しさで話題を呼びましたが、さらにGitHubでオープンソース化したことでも話題を呼びました。

3週間の間に224名が改善に協力、750件の提案があり671件が取り入れられる結果となったそうです。

面白いのは、〇〇版を立ち上げましたといったように、全都道府県に波及し、さらにコードがかけるエンジニアだけではなく、カバーのイラストを描いてくれる人が現れるなど、活動がひろがったことです。

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「Decidim(デシディム)」ツールの日本語化

「Decidim(デシディム)」というツールを一般社団法人コード・フォー・ジャパンが中心となり、日本語化しました。

「Decidim(デシディム)」は「我々で決める」を意味するカタルーニャ語にちなんで、2016年にバルセロナで誕生したオープンソースの参加型民主主義プラットフォームだそうです。バルセロナから世界中に広がり、スペイン、フィンランド、台湾をはじめとして180以上の組織、32万ユーザー、160以上のプロジェクトが立ち上がっています。

日本における導入は2020年10月。兵庫県加古川市で初めて導入されました。

加古川市版Decidimはこちら

授業から学んだこと

■ バザールモデルの強さ

関さんは自身のミッションとして、「組織の垣根を越えてつながる」ことを挙げられていました。組織課題、地域課題に対してまずは一緒に考えて、ともにつくっていく機会のたくさんある社会をつくっていきたい。そのために自治体を変えていくということをおっしゃっていました。

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ここにつながる考え方として、エリック・レイモンドによって書かれたオープンソースソフトウェア(OSS)のソフトウェア開発方式に関するエッセイとして『伽藍とバザール』を紹介してくださいました。

伽藍が示すのは中央集権的な方法です。綿密な計画や堅牢な設計を経て、長いリリース期間を経て完成していきます。
一方でバザールは、自律的な小集団。変更を受け入れ、早めにこまかくリリースを行うということで、いまでいうアジャイルの考え方です。

現在の行政は伽藍モデルにあてはまります。課題として、変化に弱い、1つの組織にノウハウが留まる、利用者側は手が出せないというものがあります。
ここに対し、「サービスを市民と共に作り、自治体間で公開、共有する関係へ」というバザールモデルへ変えていこうというのが関さんが取り組まれていることです。


詳しくは下記のYoutubeをご覧ください。


■ 悩みながら答えをさがす

「技術は人を幸せにするのだろうか」ということに関さんは悩まれていました。

2011年3月、東日本大震災発生のわずか4時間後に震災情報収集サイト「sinsai.info」を立ち上げた関さんですが、「sinsai.info」についても地震被害の大きい地域の方にとって役にたつのかという疑問をもち、肉体労働の方が役に立つのではないか、エンジニアはこういうとき無力なのではないかと感じられたそうです。

そして現在、「技術は人を幸せにするのだろうか」ということにはいまだに悩んでいると話されていました。
でも一旦の回答は、ちゃんとつかえば幸せにするだろうということ。
悪い方向につかうととんでもないディストピアができるが、正しい目的につかおうと思えれば良いことがおこると思うと話されていました。

ここに、悩みながらも走ること、その中で答えをみつけていくことの強さを学びました。

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