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「社会の創造性の土壌」を耕す方法

この記事は、"武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース"というやたら長い名前の大学院での "クリエイティブリーダーシップ特論I" というこれまた長い名前の授業での学びを紹介する記事のシリーズ第八弾です。

この授業では、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されている方々をゲスト講師として、60分講義・30分ディスカッションというセットで学びを得ています。

第八回 (2021年5月31日)は、安斎勇樹さんからお話を伺いました。

自己紹介

記事の本題に入る前に、簡単に自己紹介をさせてください。

私は、社会人として働きながら武蔵野美術大学の大学院に今月2021年4月に入学しました。仕事ではUXデザイナーとして働いており、大学院ではUXデザイナーの仕事に活かせる生きた知識を、体験も通して身に付けたいと思っています。

ゲスト講師のご紹介

ミミクリデザイン(Mimicry Design)/安斎勇樹

東京大学大学院 情報学環 特任助教。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。商品開発、人材育成、地域活性化などの産学連携プロジェクトに多数取り組みながら、多様なメンバーのコラボレーションを促進し、創造性を引き出すワークショップデザインとファシリテーションの方法論について研究している。主な著書に『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』(共著・慶応義塾大学出版会)、『協創の場のデザイン-ワークショップで企業と地域が変わる』(藝術学舎)がある。
コーポレートサイトより)

ゲスト講師の活動内容

いくつかの事例を紹介いただきましたが、特に印象的だった資生堂での事例をご紹介します。

この事例は、資生堂グループが掲げるVISION 2020 実現に向けたグローバル共通の行動指針<ワーキング・プリンシプル「TRUST 8」>を全世界のグループ社員一人ひとりに浸透させることを目的にしていたプロジェクトについての事例です。

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このプロジェクトでは、遊び心を大切にしたワークショップを資生堂の社員46000人にむけて開発されたそうです。
このワークショップの中で、特に面白いのが、「TRUST 8」の8つのビジョンのなかから「自分にとって大事な3つ」を選び、「8つのうち1つを削除して、新たな1つを追加して、自分のチームによりフィットする新しいTRUST8’(ダッシュ)をつくるとしたら?」という問いを投げかける部分です。

ビジョンを浸透させるワークショップを依頼されて、そのビジョンを壊しにいくという発想に驚かされました。
組織として大切にしたい理念やビジョンを、自分の目線から能動的に「編集し直す」ような経験を通して、日常のモードから離れて「TRUST8」を自分ごとで考えられて、なおかつ遊び心を持って取り組めるように設計されたそうです。


授業から学んだこと

■遊びの要素をいれる
Mimicry Designのビジョンの最初の一文は、「革新的なアイデアを生み出し、複雑な課題解決を推進するためには、そこに関わる一人一人が情熱と遊び心を持ち、既存の枠組みを問い直すプロセスを楽しめるチームを作ることが肝要です。」から始まります。上記、資生堂向けのワークショップも含め講演の中でも「遊び」というのが大きなキーワードになっていました。

「遊び心」が必要な理由は2つあるそうです。
1. 「物語的な思考」や、異なるものの間に類似性を発見する「アナロジー思考」を誘発し、発想を飛躍させるトリガーとなること。
2. チームの創造的なコラボレーションを促進し、ボトムアップ型で創造的な組織風土の醸成にもつながること。

■研究する目をもつ
安斎さんは、東京大学大学院情報学環特任助教としてワークショップデザインやファシリテーションを研究する研究者としての顔も持つそうですが、なるほど、と思ったことが講演のなかでありました。

2009年から放送されている人気番組『IPPONグランプリ』の過去のお題リストを観ていると、一定の問いのデザインパターンが存在することが見えてきたそうです。これらはもしかするとファシリテーションやイノベーションプロジェクトに応用できるかもしれないと感じた安斎さんは、パターン化し、見事にパターンを発見。
それを書いたNoteは、1203「いいね」がつくほど、話題となりました。

『IPPONグランプリ』の過去のお題からパターンを学ぶ姿勢は常にパターンを見出そうとする研究者の視点がなければありえないものだと思いました。


今後の活動につなげたいこと

UXデザイナーとして目の前のワークに全力で取り組むことはもちろん、パターンの理解や型化という研究者としての目線も持って取り組みたいと思いました。

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