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林業とヤマをデザインする「木こり」から学ぶ 「想いを現実にする鍵」

この記事は、"武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース"というやたら長い名前の大学院での "クリエイティブリーダーシップ特論I" というこれまた長い名前の授業での学びを紹介する記事のシリーズ第一弾です。

この授業では、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されている方々をゲスト講師として、60分講義・30分(と言いつつ大幅に延長しての)ディスカッションというセットで学びを得ています。

第一回 (2021年4月12日)は、林業アーティスト/足立成亮さん、建築家/陣内雄さんからお話を伺いました。

自己紹介

記事の本題に入る前に、初めてNoteで記事を書くので自己紹介をさせてください。

私は、社会人として働きながら武蔵野美術大学の大学院に今月2021年4月に入学しました。仕事ではUXデザイナーとして働いており、大学院ではUXデザイナーの仕事に活かせる生きた知識を、体験も通して身に付けたいと思っています。

改めて、”これまでの経歴” や "今後やっていきたいこと" を詳しく書いた自己紹介の記事も書かせていただこうと思うので、今日のところはこのぐらいにして、早速本題に入っていきたいと思います!

ゲスト講師のご紹介

まずは、第一回のゲスト講師である林業アーティスト/足立成亮さん、建築家/陣内雄さんのご紹介です。

outwoods / 足立 成亮
1982年札幌生まれ。
2008年まで札幌にて写真作品制作などの活動をしていたが、2009年の春、自身が森で働くイメージを強く抱き始め、北海道滝上町へ移住。森林調査/森林作業を行う企業にて山仕事の修行を始める。
2012年、北海道旭川市にて独立、outwoodsと名乗る。山奥の林業から里山アクティビティまでのヤマのコト、薪の販売などを生業としている。
2016年、故郷の札幌に本拠地を戻し、北海道各地で活動中。
TOBIU CAMPサイトより)
Facebookページにも活動の内容やたくさんの美しい写真を載せておられます!)
陣内 雄
1966年札幌生まれ。
東京芸大建築科卒。バブル期に設計事務所勤務、矛盾を感じ退職。
1992年、北海道に帰り、1993年より下川町森林組合の作業員として汗を流す。その後休職し東京で2年間音楽活動のち、1999年、再び北海道にもどり、下川町森林組合に復職。
2006年、森林組合を退職し旭川でNPO法人もりねっと北海道を設立、同代表。また北海道内の志ある森林プレーヤーがつながるための森林ガバナンス研究会設立に関わる。同代表。2015年、もりねっと代表辞任、フリー林業・森の空間づくり活動を始める。
陣内雄さんのWEBサイトより一部抜粋)

ゲスト講師の活動内容

足立さん・陣内さんはフリーの木こりとして働かれています。
伐採請負、つまり木を切って欲しいという依頼を受けて伐採を行っています。
ただし、やみくもに木を伐採している訳ではありません。お二人は「森林作業道」をつくり、人の目がヤマに入ることを実現しようとしています。
陣内さんのWebサイトによると「ヤマは、木が生えてる場所という意味」ということです)

「森林作業道」をつくる際には、「木々のキャスティング」という風に捉えて取り組まれているそうです。

「キャスティングは個性を生かした方が良い。森も一緒で、ひん曲がっているのがいてもいいし、スターがいてもいいし、そういう人も立っててもらわないといけない。だからこういう切り方をするってことにしている。人間に接するのと一緒。バイタリティをみたり、個性を見ている。さらに、施主がいて自分たちが成り立っているので、こういう施主の話があるからこうしないといけないけど、環境はこうしないといけない。そうすると道筋が見える、それが見えるまで、考えてから取り組む」という風に、デザインを考えて取り組まれています。

また、多くの人にヤマを知ってもらい、ヤマに入ってもらうための空間づくりや展示なども手がけられています。大丸札幌店での展示なども一例です。

"森林・林業現場への興味関心を高めることを目的に 『こんな森があったらいいよね』を共有・実現する場として、現役の木こりがひらく「もりのがっこう(仮)」を創立するアイデア" は、WOOD CHANGE AWARDで見事、ゴールド賞を受賞しています。

授業から学んだこと

■ 想いを現実にするために鍵となること
「地球温暖化」「森林伐採」「オゾン層破壊」そんなニュースをみて、子どもながらに「何かしないと」と思った経験がある人は多いのではないでしょうか。私自身、何かしないとと強く思った記憶はあるのですが、結局直接的には何もせずに暮らしてきています。

陣内さんも高校生のときに地球温暖化の話が本当に小さな記事で、新聞に載っているのを見つけ、「何とかしないと」と思ったことが、現在の林業につながっているそうです。

「何とかしないと」という想いを現実のものにする鍵は何なのか。お二人のお話から学んだことがあります。

①まずは現実にしたいものを描くこと
陣内さんはこんなまちをつくりたいという想いを絵に表されていました。自分の目指すもの、妄想をより具体的に描けること、可視化できることがまず第一歩なのだと学びました。

また、足立さんは「絵空事を現実に落としていこうとしている」と話されていて、絵空事というとあり得ないことと普通なら捉えてしまうものを成し遂げようとしているのだという覚悟があることと、その絵空事というのがありありとイメージできているのだなということを感じました。

②現場に入り、観察し体験から知識を得ること。想いをそのままに解像度をあげること
足立さんが「問題意識を持ち始めた時は、どこから手をつけたらいいんだろうと思っていた。そのときと、今の何とかしなきゃって想いは変わらない。でも解像度が変わっている。何とかしなきゃに対する観察力や想像力が劇的に上がっている。だから、気持ちは同じで、解像度が上がっている。」と話されていました。

「熊と林業機械の取り合いをした」エピソードなど、足立さんは活動の中でのエピソードもお話くださったのですが、現場に入り、日々暮らし、働くからこそのエピソードでした。現場に入り、観察し想像すること。それにより何をすれば良いのかの解像度を上げていくことをされているのだと、だからこそお二人の活動は机上の空論ではないのだと学びました。

(足立さんのお仕事を通してのエピソードは「森ではたらく! 27人の27の仕事」で書かれています!とても心に残るエピソードなので気になった方はぜひ。広告ではないので私にお金が入ることはなく、純粋なオススメです!)

③自分にできるサイズの仕事を丁寧にしながら、人に伝え巻き込むこと
新しいことを始めるときにはバッシングが起こりがちですが、お二人の活動も既存林業の方々からたくさんのバッシングを受けたそう。

そんな時の対応は、「自分サイズの仕事を一生懸命やる」こと。自分のやりたい仕事をきれいにやっていくことだったそうです。

林業変わるんかと言われたりもするそうですが、「どうやったら、興味がなかったかもしれないけど、興味を持ってくれそうな人を巻き込めるかな」と考え、ひとりの力ではどうにもならないかもしれないけれど、人を巻き込むことで現実にしていこうとされています。

その、「自分ひとりではどうにもならないから巻き込もう」と動かれることも、現実にするために大切なことなのだと感じました。

■ イノベーションは選択肢を増やすこと
もう1つ学びとして得たのは、新しいことを始めることというのは既存のものを否定することではなく、選択肢を増やすことなのだということです。

足立さんの言葉の中でとても印象的な言葉だったのが、選択肢を増やしたいんだという言葉。

「今は既存林業 か 自伐林業(著者注:委託せず、林所有者が自ら森林の整備を行う林業のこと)みたいな2つしか選択肢がない。
でも林業ってもっと多様性がある。だから提案していっている。」

「既存林業と違うよって言っているのも、違うから良いとかじゃなく、こういう林業に興味がある人は手を挙げてっていうことだと思う。」

前述のように、既存林業の方々からバッシングを受けたときに、自分たちのやっていることは、現在すでにあるものを否定するのではなく、選択肢を増やすのだと認知すること、そして否定ではない態度で対応することが成功への鍵だと学びました。

今後の活動につなげたいこと

今後、UXデザイナーとして働いていく上で今回の学びから活かしていきたいと思っていることは4つあります。

1つ目は、どういうことを実現するべきなのかを可視化してみんながそこに進めるようにすること。UXデザイナーとして、インサイトを得て、アイデアを掴んだときに、それがどのようなものなのかを可視化できるくらい深堀り、可視化することが必要だと学びました。

2つ目は、観察し体験から知識を得ること。ユーザーを初め、人々の行動を観察することはUXデザイナーとして手法の1つではありますが、「解像度をあげる」という視点はなかったので、大きな学びでした。

3つ目は、巻き込むこと。クライアントと併走するUXデザイナーとして、自分が走るのはもちろん、一緒に走っていただけるようにできなければ成功しません。巻き込み力をもっと磨いていきたい。
今回の授業が終わった後、部屋でつぶやいたのが「行ってみよーかな、ヤマ」でした。次の瞬間に、「これが足立さんと陣内さんの力か!」と思い知りました。そんな力をつけたいです。

4つ目は「選択肢を増やす」という視点。それまでのものを否定するのではなく、世の中に選択肢を増やす仕事をしていきたいです。

長くなりすぎました。
次回は、パーソンズ美術大学非常勤講師、Teknikio(ブルックリン)サービスデザイナー、Artrigger(東京)CXO等、研究者・実践者・教育者として日米で最新デザイン理論と実践の橋渡しに従事されている岩渕 正樹さんがゲストです。楽しみです!

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