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teamLab創業メンバーに聞く「集団でクリエイティブなことをやっていく方法」

この記事は、"武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース"というやたら長い名前の大学院での "クリエイティブリーダーシップ特論I" というこれまた長い名前の授業での学びを紹介する記事のシリーズ第六弾です。

この授業では、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されている方々をゲスト講師として、60分講義・30分ディスカッションというセットで学びを得ています。

第六回 (2021年5月17日)は、堺 大輔さんからお話を伺いました。

自己紹介

記事の本題に入る前に、簡単に自己紹介をさせてください。

私は、社会人として働きながら武蔵野美術大学の大学院に今月2021年4月に入学しました。仕事ではUXデザイナーとして働いており、大学院ではUXデザイナーの仕事に活かせる生きた知識を、体験も通して身に付けたいと思っています。

ゲスト講師のご紹介

チームラボ/堺 大輔

1978年、札幌市出身。東京大学工学部機械情報工学科、東京大学大学院学際情報学府修了。大学では、ヒューマノイドロボットのウェアラブル遠隔操作システムついて研究。主に、ソリューションを担当。
チームラボ株式会社 企業サイトより)

ゲスト講師の活動内容

teamLabの知名度の高さから、ここで説明する必要もないかもしれませんが、講演の中のスライドからご説明すると、2001年から活動を開始されておりプログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団です。

活動の枠組みとしてはDigital ArtとDigital Solutionの2つがあります。
Digital Artの方がよく知られている顔だと思います。

■ Digital Art
Digital Artは各技術のスペシャリスト達が技術を最大限に活用し、まったく新しい体験ができるデジタルアート作品を制作しています。

Body Immersive(身体ごと没入)
コンセプトの1つは、Body Immersive(身体ごと没入)です。これまで、画面を通してなど鑑賞者とアートには距離がありました。そこで5感を使ってアートを体感してもらうことをコンセプトにしています。

例えばチームラボ ボーダレスを2018年に東京・お台場にオープンしましたが、まさに身体ごとアートの入っていく


Relationships Among People(人々の関係性を変化させ、他社の存在をポジティブな存在に変える)
もう1つのコンセプトはRelationships Among People(人々の関係性を変化させ、他社の存在をポジティブな存在に変える)です。

例えば、ルーブル美術館にモナリザを観に行くと、私も観に行ったことがあるのですが、たくさんの人がモナリザの前に集っており、とにかく写真を撮って離れるような。とても鑑賞するという状況ではない状況です。この時、自分もその相手にとってはそうだろうなと思いながらも、「あぁ、もうちょっと人少なかったらよいのに…」と思ってしまいます。
つまり、いままでのアートは 「n 対1」つまり、多くの人がたった1つのアートに群がるような構造でした。

一方で、例えば「花と人、コントロールできないけれども共に生きる / Flowers and People, Cannot be Controlled but Live Together - Transcending Boundaries, A Whole Year per Hour」では、他者がいることにより花が咲いたり、「つながる!積み木列車 / Connecting! Train Block」では、子供たちがそれぞれ積木を置くことにより、その積木の間に線路が生まれるなど、他者がいることでさらに面白いことが起きる構造になっています。


■ Digital Solution
Digital Solutionでは、クライアントの課題や要望を咀嚼して、適切な課題解決を検討し、提案から実装まで一気通貫でサービス開発を行っています。

例えば、りそなグループの「りそなスマート口座」のスマホアプリの、企画・デザイン、UI/UX設計、開発、また、プロモーション戦略の立案、プロモーションサイトとプロモーションムービーの制作を担当されました。
様々な銀行取引を、アプリひとつで簡単に完結できるよう全体の画面と機能を設計されたそうで、振込、口座残高や入出金明細確認などはもちろん、AIが自動で顧客の口座状況や銀行取引を分析し、無駄な出費や貯金についてアドバイスしたり、様々な金融商品を提案する機能や、アプリからワンタップで直接チャットや、メール、電話で、アプリの使い方から金融商品まで質問、アドバイスを受けられる機能など、銀行そのものが手のひらの上にあるような体験になるよう開発されました。


授業から学んだこと

積み重ねによりクリエイティブを生み出す
チームラボのものの作り方は、0からではなくてソフトウェアとしてアップデートをしていく形なのだそうです。クリエイティブというと、0から新たなものをつくり出すというイメージが強く、teamLabなど人にいままで世界になかったものをみせる集団だからこそ、まさに新たなものを0からつくりだしていると思っていました。

しかし、「クリエイティブは、積み重ねだと思っている」と堺さんはおっしゃっていました。
例えは、Digital Artについても、「2Dだったのを3Dに。さらに、入っていける場所を作ったりと、積み重ねていっている」ということでした。
「0から作らない。今まで貯めたナレッジにアップデートをつける形でつくっている」とのこと。この信念こそが、人を驚かせるクオリティのクリエイティブをつくりだす鍵なのだと思いました。

■システム側とデザイン側が一緒に進んでいく
そもそも、teamLabは、アート、サイエンス、テクノロジー、クリエイティビティの境界を越えた集団的創造をコンセプトに活動されていますが、なにか新しいプロジェクトがあると、必ずシステム側とUI, UXのデザイナーの3人で入るそうです。
デザイナーがこうしたいと思っても、システム側でできなかったりするので、システム側とデザイン側が一緒に考えられるというのが重要とのことでした。

しかし、こう聞くとエンジニアの方とすこしでも働いたことのある人ならある疑問が湧いてくるはずです。
「エンジニアって、仕様を大変にすると自分が大変になるから、一般論でいうとエンジニアは新しい機能や取り組みについて保守的になりがちなのではないか」と。
しかも実は、teamLabは7割エンジニアで、残りがデザイナーなど他の専門領域を持つ方だそうです。
そんな状況でどうやってエンジニアも新しいことに挑戦していっているのでしょうか。

答えとしては、まずエンジニアリングをリスペクトする文化。さらに、デザイナーが決めた仕様ではなく、最初から一緒に話し、つくっていくことで、エンジニアとしても前向きに「ここをちょっとやれば同じことが簡単にできます」とかそういう話になるそうです。
降ってきた仕事ではなく、一緒にリスク取ったり楽しみながらやったりできるからこそ、エンジニアとデザイナーがチームとして進んでいけるそうです。

まずは世の中に出して、速いスピードで修正していく
さきほど、Digital Solutionの例として、りそなグループの「りそなスマート口座」のスマホアプリをご紹介しましたが、このアプリは出して2年で、2週間に1度ほどの頻度で改善していっているそうです。
「ユーザー調査とかも大事なものの、実際に作り込んで、ローンチしてそれを直していく」というマインドでこのような進め方を取られたそうです。

また、プロジェクトの進め方として、Digital ArtもDigital Solutionも、最初の段階からできる限り見える形に落としているそうです。
企画とか構想というフェーズよりできるだけ早く見える形にしていくことを大切にされています。
つくってみて実験してみてっていうのをやっているそうです。

そして、プロトタイプをつくり形がみえてきたら、開発はウォーターフォールで作るそうです。そして、世の中に出してみて、そこからアジャイル的に改善していくそうです。

合理的に真面目に考えて空間で人を変える
実は、今回の講演はまずteamLabのオンラインオフィスツアーから始まりました。オフィスには、机の天板が分厚いメモ帳になっている「メモデスク」や女性でも軽々と持ち上げられる椅子「ブロックチェア」がありました。

しかし、そのオフィスをそのまま自社に持ち込んだからといって、クリエイティブなものをつくり出せるかというとそういうわけではありません。
なにが必要かというと、試しながら合理的に考えて自分たちにベストなオフィスにすることです。

例えば、「メモデスク」がなぜ考案されたのか。
それは、ホワイトボードだと、誰かが書いて、みんなで聞くってなってしまい、誰か1人が答えを出す感じになってしまうこと、また、ちゃんとしたものを書かないといけないと思ってしまい、ホワイトボードだと緊張する人もいます。
そこで、ホワイトボードを使わず、答えがわからないものをみんなで書くので、天板を紙にした方が良いかなと考案されました。
手元に書いたプライベートなこととバブリックが近いため、ちゃんとしないといけないというのをできる限り省けているそうです。

このように形を模倣するのではなく、合理的に自分たちで考え、何が生産的なのかを考えてやってみることが大切です。

今後の活動につなげたいこと

UXデザイナーとして、今回の講義から活かしたいと思ったことはまずエンジニア側を最初から巻き込み、「突然降ってきた仕事」とならないようにするべきであること。
また、特にチームメンバー間で、できるだけ最初の段階から見える形に落としていくことを改めて心がけようと思いました。

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