見出し画像

【デッド•オワ•ライブ】(第三章) 『たまきんズ』

漫画原作案である「デッド・オワ・ライブ」という物語のシナリオ(第三章)を ざっくり作りましたので、随時アップしていきます

もし お時間ございましたら、少しだけでも読んで頂けると嬉しいです…!

※これは小説ではなく「シナリオ」です)

※第一章以降は どんな内容のストーリーなのかだけ分かるような、さらに噛み砕いたシナリオになっております。

ーーーーーーーーーーーーーーー


【第三章】「たまきんズ」


会場へ向かう途中、道雄は女性に尋ねる。

道雄「ところで、キミは どうして亡くなってしまったの?まだ随分と若いみたいだけど?

…てか、天国に来たばかりで
”死者としての常識“も無いから

こんな事、聞いて良いものか
分からないけどさ…」

女性「いえ!全然大丈夫ですよ!気にしないでください…!」

そして女性は うつむき
少し寂しそうな表情で続ける。

女性「私は今から…だいたい1年前くらいかな。
ある”事故“で死んでしまったんです。」

道雄「事故…?」

女性「はい。当時 私は骨折で入院していて
その病院の屋上から見える
綺麗な夕焼けを眺めていたんです。

そこで私、つい足を滑らせて
屋上から落ちてしまって…」

道雄「屋上から!? 柵とか無かったの!?」

女性「確か柵も低くて、バランスを崩した拍子に…」

道雄「そうだったんだ…それは辛かったね…
すごく痛かっただろうし…」


少し重苦しくなってしまった空気を変えるべく、道雄は自虐ネタをくりだす。


道雄「それに比べたら俺の死因なんて
マジでダサいの極みだよ…笑

聞く…?笑

スマホ、手から顔に落として
ビックリしてピクっ!!

からのショック死だよ?

ヤバくない?笑」

女性「え…そんなので死ぬ人、実際に いるんですか…?笑」


堅苦しい会話の中で
ようやく生まれた彼女の笑みに
少し安心感を抱く道雄。


女性「ごめんなさい、私ったら
人の死因で笑うなんて不謹慎すぎますよね…

…でも、ごめんなさい…笑

ちょっと おかしい 笑」


まるで天使のように素敵で可愛らしい笑顔の彼女に
道雄は ますます引き込まれていく。

それから2人は生前の他愛の無い話をし始めた。


彼女は雲のように柔らかく穏やかで
束の間の幸福を感じる道雄。


道雄「へぇ、キミ 大学1年生だったんだ!
じゃあ俺の一個下だね!近いじゃん…!


…ところで、またしても
こんなこと聞いていいか分からないんだけど…」


道雄は彼女と出会ってから
ずっと気になっていたことを
ついに投げかける。


道雄「ちなみに なんですが…
彼氏とかは いらっしゃいますか…?」


すると彼女は寂しそうな感情と嬉しそうな感情が入り混じったような
少し不思議な表情を浮かべながら答えた。


女性「はい…いましたよ…!
とっても大好きな人が…!」





道雄の心の声(ガーーーーーン…

まぁ ですよねーー。

いるわな、こんな可愛い子だもんな…

って、出会ったばかりの子に
なに期待してんだ俺…!

そもそも俺ら、もう死んでんのに…)



道雄「そっか…じゃあ、デッド•オワ•ライブに優勝して生き返ったら、また会えるといいな!
その彼氏さんに!」

女性「はい…!」



そして ようやく会場に着く道雄 達

それと同時に
女神の怒号が飛ぶ。



女神「何しとんねん!遅いわ!
もうすぐ出番やぞ…!」



舞台袖へと引っ張られる二人。
そして道雄は出番直前、女神に尋ねる。



道雄「なぁ、2つだけ確認しておきたい事があるんだけど…」


女神「おう、なんや?」

道雄「会場にいる お客さんは
どんな人達だ?」


女神「そんなん、かつては人間界を生きていた死者達に決まっとるやろ、ここは天国なんやから。」


道雄「分かった。あと、大会の審査方法は?」


女神「それはな、観客の投票で決まる…

つまり、会場にいる お客さん達を
一番 楽しませた奴が優勝や…!」

道雄「オーケー、それだけ分かれば充分だ。」



そして道雄は緊張する女性の手を引っ張り
舞台袖ギリギリまで歩みを進める。


道雄「大丈夫、心配しないで、俺がついてる。

さっきも言ったけど
キミは思った事、感じた事を
そのまま発して

俺と“お喋り“するだけで いいから…!」



舞台から はけて行く一組前のコンビ
消える照明に鳴り響く出囃子、踊るスポットライト。

そして明るい声質の元気なアナウンスが流れ出す。




アナウンス「それでは続いてのコンビに参りましょう…!

エントリーNo.1201『たまきんズ』の お二人です!
どうぞ〜!」




………

…………ん?

んんんんん?


もしかして 今 「たまきん」っつった??


たまきんってアレ?玉金のこと?
キャンタマのこと??


…え、俺らのコンビ名

“金玉”なの?


なんで?

え? 普通に嫌なんですけど。

え? え?


……

……え??




焦りながら女神の方を振り返る道雄。

ふと蘇る(第二章でコンビ名決めを頼んだ時の)
女神のキリッとした表情でのグーサインの残像。


女神「どや?えぇ名前やろ?
アンタらがコンビ名なんでもえぇ言うから
ワイがつけてやったんやで?」(小声)

道雄「いいわけねぇだろ!
ド下ネタじゃねぇか!」(小声)

女神「男が細かい事に いちいち文句言うな…!

ほら、出番やぞ!はよ いけ!」(小声)



道雄の心の声(あぁ、もう…!
あんな奴にコンビ名なんか頼むんじゃなかったぜ…

無難なヤツで頼むって言ったのに…!)


そして道雄は女神を睨み付けながらステージへと歩みを進める。

スタンドマイク越しに舞台から見下ろす客席は満席、物凄い数の人達で溢れかえっていた。

台本も準備も何もない
完全アドリブでの この舞台…

しかし、道雄は緊張するどころか
むしろ笑顔で喋り出す。

その余裕は一体どこから生まれるのか
女性は不思議で仕方なかった。



道雄「はい、ど〜も〜!
たまきんズです〜!
よろしくお願いします〜」




(漫才の大会なのに

“俺とお喋りするだけでいい”

なんて簡単に言うけど
いったい どうしたら良いのか分からない…)

そんな彼女の不安は

なんと、舞台に立って数秒で
魔法のように溶けて無くなり

彼女が“お喋りするだけでいい”という言葉の意味を理解するのに そう時間は要さなかった…


………


女性の心の声(す、凄い…!

道雄 君が軸となって基本、話を進めて

ポイント ポイントで私に話を振ってくれる…

そして私が何を返しても、そこからボキャブラリーの引き出しを最大限に活用し、1つの話題から

必ず2つ、3つ と笑いを生み出している…!

それに私が
ツッコミを入れたり、ボケているつもりがなくても

道雄君の巧みな話術と誘導で
私がいつの間にか ツッコミ、そしてボケの立ち回りになっている…!?

しかも、話のテーマも客層に合わせて

死者や死後の世界の”あるある“等で共感を惹きつけつつ、オーソドックスな生前のテーマでも話を進め

どこか懐かしさの中に笑いを作り出すテクニック。

ネタの内容も分かりやすくて
まるで道雄君に誘導されるかのごとく
私も自然と口から言葉が出てくる。

もし私が上手にツッコミのような事が出来なくても、独特な間でボケを重ね、自分でノリツッコミする事により

奇人を演じ、それすら笑いに変えている…!

私…本当に
ただ素の自分で
道雄君と お喋りしているだけだ…!)


会場からは拍手と笑い声が止まらない。

彼女が漫才に対して抱いていた その緊張は
いつしか客席のボルテージを反映するかのような
道雄に対する胸の高鳴りへと変わっていた。




二人の”お喋り“が始まって約三分ほどが経過…

彼女は まるで
舞台に立っている事を忘れているかのように

笑顔で道雄との
やり取りを心から楽しんでいた。



“ずっと この人の隣で喋っていたい”

”この楽しい時間が ずっと続いてほしい“



そんな想いが、彼女の中に自然と芽生え出していたのだった。



そして締めにかかる最後の部分…

「もう いいわ!」というストップが
道雄によりかけられ、出番は終了。

鳴り止まない拍手を背中に
二人は女神の待つ舞台袖へと戻っていく。
 

女神は笑い過ぎたのか
二人にグーサインを出しながら
少しだけ涙を流していた…


ーーーーーーーーーーーーーーー

そして、数時間後…



主催者(神)「デッド•オワ•ライブ…

今回の栄えある優勝者は…」


静まり返る会場内に鳴り響くドラムロールのような音…

蘇生がかかった
まさに命懸けの結果発表。

緊張の一瞬…

しかし、道雄は確信していた。


絶対に自分達が
“この中で一番面白い“と。



主催者(神)「エントリーNo.315『たまきんズ』! おめでとう…!」



(こればかりは仕方ないか…)
と実力の差を痛感しながら
渇いた拍手を送る他の出場者達の前で

飛び跳ねて喜ぶ女神、嬉し涙を流す彼女
そして小さくガッツポーズを作る道雄。


主催者(神)「では、さっそく今から
表彰式を行う。たまきんズの二人は前へ。」


何とも神々しい光を放つ
神らしき その人物の前へと誘導される二人。

そして、次に神が言い放った一言に
道雄は一瞬、思考が停止した。




主催者(神)「では

“二人のうち一人“

蘇生させたい者を選ぶのじゃ。」




………

…………………へ????



道雄「二人のうち一人…?

どういうことっすか???」


主催者(神)「今さら何を言ってるんだ君は

大会のチラシ、ちゃんと見なかったのかね??」

そして道雄は その神に
さっき女神から見せられた物と同じチラシを見せられる。

すると そこには

(※女神が持っていたチラシは脇汗で一部が濡れていた為、その肝心な文字が見えていなかったのだが)

『優勝特典→“死者の蘇生”』
と書かれた文字の下に小さく米印で



『※ただし蘇生が可能なのは
コンビのうち“一名“のみとする。』



という衝撃的な説明書きが添えられていたのだった…


ーーーーーーーーーーーーーーー

(第四章へ つづく…)