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【デッド•オワ•ライブ】(第五章) 『食パンの放物線』

漫画原作案である「デッド・オワ・ライブ」という物語のシナリオ(第五章)を ざっくり作りましたので、随時アップしていきます

もし お時間ございましたら、少しだけでも読んで頂けると嬉しいです…!

※これは小説ではなく「シナリオ」です)

※第一章以降は どんな内容のストーリーなのかだけ分かるような、さらに噛み砕いたシナリオになっております。

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【第五章】「食パンの放物線」


目が覚めると、自室のベッドで仰向けになっていた道雄。

まぶたを擦りながら軽く寝返りをうち、横に目をやると

【2019年5月20日(月)】
と表記された横向きのデジタル時計。

そして鮮明に覚えている天国での記憶。

道雄は約4年前、まだ高校2年生だった頃の自分に戻っていた。

道雄「もしかして、今の 夢…?」


自分が天国に行く夢を見ていたのかと
寝ぼけながら呟く道雄に

どこからか返事をする声が聞こえる。


???「んなわけあるか、どあほ
さっき天国で説明した通りや。」


道雄「お、お前は さっきの女神!?
一体どこに…!?」


???「お前のケツの下や、はよ どいてくれぇ…」


女神の声は道雄の下敷きになっていたスマートフォンから発していた。


女神の声(スマホ)「ええか?さっきも言うたが
お前は今、走馬灯の中におる。

つまりタイムトラベルに成功したんや。

ワイは女神であり生きた人間ではないから
人間界へ行くことは出来ひん

そやから天界からアンタのスマホに
何とか無線を繋いで喋っとるんや。」


さっきまでの出来事が
やはり現実に起きていた事だと理解する道雄。

そして女神は話を淡々と進める。



女神の声(スマホ)「んじゃ、まずは情報の整理からや。

アンタが今、覚えている事を全て話してみ?」


道雄「覚えてる事…?えぇっと…

俺は確か、ダサすぎる最期で命を落とした
19歳の津古 道雄という男で…

天国の変な お笑いのコンテストで優勝した後
過去に転送されてきて…


って、あれ…?

それ以外、全然 覚えてない…」



女神の声(スマホ)「そやろ、天国でも説明したが

走馬灯中は“天国より前に起きた出来事の記憶”が全て無くなってしまう。

つまり、アンタは生い立ちや
周りの交友関係などなど…
何もかも覚えていないはずや

でも、その記憶は厳密にいえば
”無くなった”わけではない

ただ”忘れとるだけ”なんや

そやから、普通に生活してれば
段々と思い出していくはずや。」


道雄「なるほど…

てか、今 思ったんだけどさ

俺はスマホが原因で死ぬんだよな?

それなら…」


そう言って道雄は
女神の声の発信源となっているスマホをゴミ箱へとダンクした。



女神の声(スマホ)「な、なんや!? アンタ今、何した!?」

道雄「え?スマホ 捨てただけだよ?

だって、スマホさえ無ければ
俺の死は回避できるはずだろ…?」


女神の声(スマホ)「どアホ…!
そんな簡単な話ちゃうわ…!

いいか?未来を変えるっちゅうのは
めちゃくちゃ難しい事なんや。

今から簡単に説明したる。

まず”未来”っちゅうのは
だいたい イメージとして
一つに収束している物なんや。

例えば”ある女が建物Aの火事A(タバコの不始末が原因)により焼死する”

という未来があるとする。

その火事を回避するために
女が”タバコの始末を ちゃんとした”としても

未来が”焼死する”という結果に収束しとる訳やから。

”ある女が建物Aの火事B(タバコの不始末 以外が原因)により焼死する”

という未来に変わり
”焼死”という結果からは逃れられへん。

次に 建物Aにいる事自体をも回避する為に
女が火事の起こる当日
”建物B”にいるようにする。

すると同じ要領で今度は

”ある女が建物Bの火事B(タバコの不始末 以外が原因)により焼死する”

という結果に変化する。

つまり、ちょっとや そっと
死ぬ直前に行動を少し変えただけでは
未来は そう簡単には変えられへん。

未来を変える為のアクションは
”的確かつポイントをつき
何回かに分けて長期的に行う”必要があるんや。」


道雄「な、なるほど…
だから俺は死んだ直前じゃなくて
わざわざ4年も前にタイムスリップさせられたってわけか…

で、でも、どのように行動を変えていけば
俺のスマホによる死は完全に回避できるんだ…?

俺、記憶も無いし何も分からねぇよ…」


女神の声(スマホ)「アホ、その為にワイがおるんや。

アンタの未来を少しずつ変えていく為に
今後、行動の変化を起こすべき
”ターニングポイント”を
ワイがスマホを通じて指示する。

アンタはそれに従っていけば ええだけや。

死因がスマホとはいえ
これが天国におるワイと
アンタを繋ぐ唯一のツール…
絶対に捨てたらアカンで。」

道雄「わ、分かったよ…」


そう言って道雄は
一度ダンクしたスマホをゴミ箱から取り出し
埃を払った。


女神の声(スマホ)「あ、あと今から
ある”ブツ”を天国から送る、受け取ってくれ。」


女神のその言葉の直後
道雄の目の前に小さな段ボールが現れる。

中を開けると、そこには
ポケベルの様な形の
小さな液晶画面(数字で「0」と表記されている)がついた機械が入っていた。



道雄「何これ、たま○っち?」


女神の声(スマホ)「ちゃうわ、これは
“歪み感知モニター“といって

身の回りで起きた
”時の歪み”の度合いを感知し、数値化して蓄積するモニターで

行動を変化…つまり
”アンタの人生に
本来起こるはずでは無かった事象”
が起こる度、その変化の度合いに応じて
数値が上がっていく

という優れモンや。」


道雄「へぇ…でも これ、何かの役に立つのか…?」


女神の声(スマホ)「これも天国で説明したが

走馬灯は実際 ただのサービスの一環であって
過去を変える為の物ではない。

あまり過去を変えすぎてしまうと
その行為自体が天界にバレてしまい
過去への転送(走馬灯)は強制終了…
つまりゲームオーバーになってしまう。

その”天界にバレる値のギリギリ“が
この機械の数値でいうところの”1000”以上
に該当する。

ようはアンタは
この数値で1000を超えない範囲で
行動の変化を起こし、未来を少しずつ変えていけばいいんや。」


道雄「なんか話が難しくなってきたけど、なんとかついて来てるぞ…

まぁ要するに、俺は余計な場面で変なことせずに

お前の言う
人生の”ターニングポイント”
とやらでアクションを起こし、未来を少しずつ変えていけばいいんだな?」

女神の声(スマホ)「まぁ、そういうことや。」

これから起こるであろう悲しい未来を変える為の
過去での過ごし方を何となく理解した道雄。

その時、道雄の下腹部から
「グゥギュル゛ルル゛ル…」という
おぞましい爆音が鳴り響く。

女神の声(スマホ)「腹減ったんか?

てか なんや、その
”I was born to love you“の前奏みたいな腹の音は。


…そや、なら せっかくやし

そのモニターの機能を
身をもって体感してもらう いい機会や。

アンタ、今
朝ご飯に何食べたいかを細かく
声に出さず、直感で
頭の中に思い浮かべてみぃ?」

道雄は目をつぶって
言われた通り、直感で自分の食欲に語りかける。

そして、道雄の頭に浮かんできたのは

“黄身が黄金に輝く 半熟状態の目玉焼き”
”割と焦げた状態に近い しっかりと焼いたトースト“
“冷蔵庫から出したばかりの冷たい牛乳“

の3品目だった。

女神の声(スマホ)「決まったか?…よし

じゃ、それ今からワイが当てるわ、いくで?えぇと…

”半熟の目玉焼き、よく焼いたトースト、冷たい牛乳“

の3つで合ってるか?」


道雄「えぇ!? 何で分かったの!?

メンタリズムみたいな何かですか!?」


女神の声(スマホ)「んなわけ ないやろ。

ワイはアンタの未来を全部知っとるだけや。

2019年5月20日(月)、つまり今日
お前は朝食に

”目玉焼き、トースト、牛乳の3点を食べる“という
未来は決まっていたんや。

今、お前は直感で食べたいものを決めたな?

つまり、走馬灯の最中は

“直感で自分が思ったように動けば
何も変化は起きない“

そうすれば本能的に
自然と同じ過去を繰り返す事になっとる。


…ここで実験や。

今、ワイは
お前が今日の朝、食べるはずだったメニューを
”朝食を食べる前に“予め教えたな?

ここで、行動に変化を起こしてみぃ?」


道雄「へ、変化? どゆこと…?」


女神の声(スマホ)「簡単や、朝食に違うもん食べればいいんや。

なんか冷蔵庫に無いか見に行ってみぃ?」

道雄は言われた通りにリビングへ降り
冷蔵庫の中を漁る

すると賞味期限が今日までの
ヨーグルトの発掘に成功した。


道雄「俺、あんまりヨーグルト好きじゃないんだけど…」


女神の声(スマホ)「なんや、めんどくさい奴やな

実験なんやから黙って食え!」



そうして道雄は本来 食べるはずだったメニューから変更し、渋々ヨーグルトを口に運ぶ。


女神の声(スマホ)「食い終わったか?よし、ほんなら

さっき送ったモニターの画面、もう一回確認してみぃ?」


モニターに目を移す道雄、すると
ついさっきまで「0」と表記されていた所が
「1」という数値に置き換わっていた。


道雄「あれ?数値が1上がってる…」


女神の声(スマホ)「そやろ、今

お前は本来 食べるはずだった
朝食のメニューを変えた…

つまり過去を変え
”時の歪み“を発生させたんや。

まぁ、こんくらい小さな変化じゃ
数値は1くらいしか上がらんけどな。

…まぁ こんな感じで

この先、過去を変えるべき“ターニングポイント”が訪れる度

ワイがお前に指令を出したり、この先 起こる出来事を教えたる。

その都度、臨機応変に行動を変えてくれ。えぇな?」

道雄「わ、分かった。とりあえず そのターニングポイントとやらが来るまでは

お前から余計な情報は聞かず、直感のままに動いて

あまりモニターの数値を上げないように生きるよ…」



そうして道雄は無意識に制服へと着替え始め
学校へ行く準備を始めた。

家を出ようとした時、女神からの最後の忠告が
スマホから聞こえて来る。


女神の声(スマホ)「あ、そうや

天国からの電波が入るのは
どういうわけか お前の”家の中“だけや

そやから、これからは毎日
1日を過ごした後、帰宅したら
ワイに“近況報告“と
”モニターの数値“をルーティンで知らせること。

ええな…?」



そして道雄は女神の声がしなくなったスマホと
歪み感知モニター(通称:ゆがもに)を通学カバンに入れ、少し緊張しながら家を出た。




道雄の心の声(過去を変えないように直感で生きる…

なんか簡単そうで難しくね…?

…まぁ、今のところ女神からの指令も無いし
深い事 考えず、今は走馬灯を楽しむとしますか…)


ブツブツ考え方をしながら歩みを進める道雄。
学校への行き方なんて記憶に無いはずなのに

自然と足先が動いていき、段々と慣れ親しんだ通学路の景色を思い出していく。


道雄の心の声(うわぁ、この通学路 懐かしいなぁ…

たしか、このパッとしない商店街を突っ切って
つきあたりの郵便局を左に曲がった先にある…

そうだ…!俺は柴紫ヶ丘高等学校の
2年3組 出席番号23番…!

確か担任の先生は…あれ?誰だっけ
そこまでは思い出せないけど…)



どうやら失われた記憶は
走馬灯を生きていくうちに

見るもの、触れたものから
少しずつ、ゆっくりと
カタツムリの歩幅くらいのペースで 思い出せたり
思い出せなかったりするようだった。


学校へ近づくにつれ、自分と同じような制服の
男子や女子が増えていく。

その中には道雄と目が合ったり、声をかけようとする生徒もいた。

しかし、道雄は“自分が誰と友達なのか“
”誰が同級生で誰が先輩、後輩なのか”さえ
思い出せていない状態だった。



道雄の心の声(やべ〜!なんか ちょくちょく目があったり近づいてくる人いるけど

誰が俺の友達なのか知らね〜!

このままだと俺、ただの感じ悪い奴みたいじゃん…!

と、とりあえず
挨拶されたら返すスタンスで…

存在感 消して 床見て歩こ…)



すると、その時
ショートボブの似合う
可愛らしい1人のメガネ女子生徒が
道雄の顔を覗き込み、話しかけてきた。




女子生徒???「道雄くん!おはよ…!」



道雄の心の声(ぎゃあ゛あ゛あ…!! き、きた…!

てか誰だコイツ…!

でも、俺の名前を知ってるって事は…
たぶん友達…なんだよな?

と、とりあえず無難に返事しとくか…)


道雄「お、おはよ〜!きょ、今日は良い天気ですね…!ははははは(笑)」

女子生徒???「え、曇りって良い天気に入るの?
道雄くんって、そんなポジティブ人間だったっけ?
まぁ、いいけど…(笑)

てか、なんで敬語?」

道雄「え!?あ、そっか…!そうだよな
ははははは(笑)」

道雄の心の声(あぁ、思い出した…!
コイツの名前は確か…

そう! “白玉 きな子“(しらたま きなこ)!

なんか美味しそうな名前だったから
顔見ただけで すぐ思い出せたぞ…!

確かクラスメイトの女子…だった気がする…!

俺との関係性は忘れたけど、たぶん普通に友達なのかな…?)


きな子「んじゃ、私 今日 日直で
ちょっと急いでるから
とりあえず また後で、学校でね!

あと、今日は月曜日だから
放課後の”同好会“には忘れずに出席すること…!」


道雄「お、おう…!分かってるって…!」

そうして きな子は元気よく
学校へ走って行った。


道雄の心の声(ふぅ〜、なんか疲れるな この感じ…

てか、なんだ?同好会って
俺、高校時代 何か同好会とか入ってたっけ…?

…まぁ、学校に行けば思い出すか。


でも、やはり色んな物を見たり
人と関わっていくと
だんだん記憶が蘇っていくな…

よし、この調子で
どんどん自分の事を思い出していくぞ…!)



そうして道雄はブツブツと考え事をしながら
再び学校へと歩みを進めていく。

すると右前方に見える曲がり角の奥から
何やら物凄い勢いで近づいてくる走る足音。

そして いかにも少女漫画のヒロインが
食パンを咥えながら言いそうな一言

「いっけな〜い!遅刻 遅刻…!」が聞こえてくる。

しかし、その声に気づく事なく
曲がり角に差し掛かる道雄。

そして ふと右を向いた瞬間、もう衝突寸前の0距離まで近づいてきていた謎の少女。




少女???「あ、あぶな〜い!!!」




そして2人は勢いよく ぶつかり、倒れ込んでしまう

ぶつかった衝撃で彼女の方から放たれた歯形付きの食パンは、何とも綺麗な放物線を描きながら
遥か遠くへと飛んでいった。



道雄「いてててて…」

少女???「いった〜い!もう、何なの!?

ちょっとアンタ!いきなり出てきて危ないじゃない…!

ちゃんと前 見て歩きなさいよ!どこに目つけて歩いてんの!?」


道雄「いや、いきなり出てきたのは お前だろ…!

お前こそ、どこに目つけて歩いてn…」


道雄は突然、曲がり角から飛び出してきた
謎の少女からの理不尽な説教に勢いで反論しながら改めて しっかりと彼女の姿を確認する。

するとそこには
なんと、もう一生会うことの出来ないと思っていた
“彼女“の姿が…




道雄「き、キミは…!さっき天国で会った…!!」




そう、道雄の目の前に突如 現れたのは

なんと、ついさっき天国で
一緒に“デッドオワライブ”に出場した道雄の相方

道雄が”生き返る権利“を譲ってあげた女性


”柊 蒼空“(ひいらぎ そら)の姿だった。



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(第六章へ つづく…)