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「心底面白がっているから」〜トラベルジャーナル2023年5月2日号掲載コラム

まいまい京都/東京は、旅行業界専門誌「トラベルジャーナル」でも毎月連載中。今回はトラベルジャーナル2023年5月2日号に掲載されたコラム「ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.2」をnoteにて公開いたします。
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ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.2 (2023/5/2)

心底面白がっているから


まいまい京都は昨年約1000コースのまち歩きツアーを開催した。どんなコースがあるのか。「仏師・我休さんのお仕事拝見!日本中から依頼が絶えない工房へ」など仕事への愛をガイドするツアーは多い。庭師、菓子職人、考古学者、お坊さんなど自身がガイドするからこその面白さ。愛をもって仕事に打ち込む人はクールで格好いい。いつもの景色がさまざまな仕事によってつくられていることを知れば、まちが一層いとおしくなる。

京都の会社探検ツアーや行政との共同企画ツアーもその1つ。堀場製作所と開催した「琵琶湖を望む客船!?ホリバリアンと最先端工場を探検しよう」は、世界シェアNo.1を支えるグローバル拠点を訪ね、絶景社員食堂で社食も食べるツアーだ。「地下30m、雨水をためる巨大トンネル塩小路幹線を探検しよ
」は京都市水道局と企画したもので、工事担当者とともに雨水貯留トンネルに入り、赤茶けた鉄骨が続く工事現場を約1.5km歩いた。

観光といえば社寺や旧跡ばかり注目されがちだが、まちの魅力は会社やお店、行政が担っている面が大きい。そこでどんな人がどんな思いで働いているのかを知れば、通り過ぎるだけだったまちが、もっと好きになる。

廃河川探検家・玉ちゃんと、幻の運河・四条川を捜せ」などディープな趣味への愛をガイドするツアーも人気だ。「廃河川?」と侮るなかれ。丹念に歩けばまちの深い魅力が浮かび上がる。ツアーが終わる頃にはガイドの愛情がすっかり参加者に伝染。ちょっとした高低差や不思議なカーブが気になって仕方なくなる。鉄道から仏像、植物、あんこにマンホールまで、熱愛ガイドの手にかかれば、まちは宝の山。楽しさにあふれている。

東洋ショー、女子のためのストリップ入門!開場前、まさかの劇場特別潜入」「今まさに変わりゆく街並み...戦争の爪痕・在日コリアン集落を訪ねて
のようなツアーもある。風俗街や在日コリアン集落などはタブー視されがちだが、連綿とコミュニティーが根付いている。隠すわけでもなく、必要以上に持ち上げるわけでもなく、あるがままを知ってほしいという地元の人たちと連携して開催している。多様性や重層性こそがまちの魅力だ。歴史も文
化も宗教も物語も魑魅魍魎までもが重なりあって、まちはできている。それを体感するのがまち歩きの醍醐味。だからこそ、ガイドの愛情が伝播するツアーは他ではできない唯一無二の体験となる。

観光資源として地域のリソースを生かしたコト消費の重要性が問われて久しい。だが、そのためにリサーチしてコンテンツを発掘し体験をプログラム化
するようなやり方で本当に面白い企画が生まれるのだろうか。それよりも「心底それが面白いと強く思う人がいる」ことの強みを、10年やってきて痛感している。

以倉敬之(いくら たかゆき)

合同会社まいまい代表。高校中退後、バンドマン、吉本興業の子会社勤務、イベント企画会社経営をへて、2011年「まいまい京都」創業。NHK「ブラタモリ」清水編・御所編・鴨川編に出演。共著に「あたらしい『路上』のつくり方」。京都モダン建築祭実行委員、神戸モダン建築祭実行委員、東京建築祭実行委員。

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