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仕方ないに救われる

最後に記事を書いたのはいつだろう。
最後もなにも、たった二回しか書いていない。
「何か書かなくちゃ」とは2000回くらい思った。
誰に向けているのかはわからないけど
考えたことを文字にするのが好きだった。

しかし、ふとまわりを見渡すと
才能のある人ばかりだ。
自分が発信する意味なんてないのでは…?
ネガティブなことを書き散らかすのが楽しかったのに
自分で作り出したネガティブに
完全に支配されていた。
今も「書く準備」は出来ていない。
でも私は、私が書きたいことを
ただ書くことにした。

私はテレビを見るのをやめた。

それがいつ頃だったのか正確には忘れてしまった。
きっかけはある芸能人が
過激なほどに批判されているところを見てからだった。
その人のことは、好きでも嫌いでもなかった。
いや、どちらかと言うと嫌いだった。
なんかギラギラしていて、見ていてしんどかった。

20代の頃、ちょっとした知人から
その人の誕生日パーティーに誘われたことがあった。
触れるもの皆ナンチャラのギザギザ女だった私は
「なんでしらん人の誕生日祝わなあかんねん!!!」と憤慨した。
しかもあきらかに賑やかしとして呼ばれたことで
二重に腹を立て「興味ありません」と一言
冷たいメールを返した。
ちょっとした知人のことも嫌いになった。
なのでやはり、その芸能人の印象は良くなかった。

その人はどうやら
世間的に良くないことをしたらしかった。
つい先日まで多くのメディアに出演して
チヤホヤされていたのに
報道が出た途端、あらゆる人やメディアからバッシングされていた。
眉間にシワを寄せたコメンテーターが
声を張り上げて怒り
SNSではとくに関係のなさそうな人が「失望した」と言い放ち
私の見る世界はとても苛立っていて
やがて謝罪会見が開かれた。
その人は酸っぱそうな顔をして涙をうかべ
あやまった。

私はその流れに、ひとりで勝手にモヤモヤした。
印象のよくない人が、悪いことをして
怒られて、ごめんなさいをした。
それだけのことだった。どうでもいいことだった。

以前ならば、私も世間話程度に
誰かとそのことについて話し合い
「よくないよな〜」みたいに言っていたと思う。
同じように怒ったり、誰にも届かない意見を言ったり。
そうやってテレビを見てきたのだ(というか出てた)。

しかし私はその酸っぱい顔が
頭から離れなくなってしまった。
怒りでも、同情でもない感情が残った。
自分はいったい、何を見ているのだろう。
何を見てきたのだろう。何をしているのだろう。
このモヤモヤを抱える意味は、あるのだろうか。
誰かがつくった流行りを見たり
誰かが一喜一憂する姿を見る意味は……

そして、テレビを見ないことにした。
我が家はAmazonPrimeにNetflix、
Disney+まで加入しているので
テレビそのものは見ているのだけど
とにかく流すということをやめた。
インターネットやSNSのニュースも極力見ないようにした。

しばらくの間は、海外ドラマを見漁って
「おぎやはぎのメガネびいき」と
「バナナマンのバナナムーンゴールド」などの
深夜ラジオだけを聴いて過ごした。

すると私の頭の中が、とても平和になった。
「何も考えずにただ韓国ドラマを見る時間」を楽しみにしながら
ラジオでちょっとしたゴシップのネタを知り
それを自分の話のように、夫や友人に話した。
自分の見たい世界だけを見た。

もともと私は、まわりに影響を受けやすい人間だ。
そんなことないと思っていたし
そうでありたくないと意地になったりしていたけど
まわりから全く影響を受けない夫に出会って
自分がいかに流されて生きてきたのかを知った。

悲しい事件を見たり、納得できない政治を目の当たりにしたとき
自分の不甲斐なさにいつも落ち込んでしまう。
そして夫に「仕方ないよ〜」となだめられていた。

しかしテレビを見なくなって
自分を俯瞰で見られるようになってきた。
今までは「仕方ないよ」と言われても
「全然仕方なくないわ」と返していたところを
それなりに仕方ないのかもと思えるようになってきたし
そうやってなだめられることも少なくなってきた(と思う)。

最近起きた事件や、政治的なこと、戦争のこと。
知らなくてはいけないこともあるだろう。
ただ私には今、それを受け取るだけの器がない。
立場的にこんなことを言うのはよくないかもしれない。
でも言いたい。
自分の器の大きさや質を確認して
受け取るべき情報の検品が必要な世の中だと思う。

私の母は、テレビでどんな情報を見ても平気だそうだ。
そんな人は思う存分テレビを見たり、情報を知ったほうが
充実した生活を送れるのだろう。

しかし私のように(自分で言ってしまうけど)、繊細な人間は
生活の中に入り込んでくる情報を
こまめに整えたほうが良い。
知らないことは、罪ではないと思う。
知らないことで、自分を守れることもある。

最後に、私のような人間が出ている番組は
毒にも薬にもならない、平和な番組なので
どうぞ安心してご覧ください。
あとTBSラジオの「おぎやはぎのメガネびいき」と
ポッドキャスト番組の「ジェーン・スーと堀井美香のOVER THE SUN」も
大変心が癒され、ためになるのでおすすめです。

……とか付け加えちゃうあたり
自分もまだまだだなと思う。
仕方ないけど。

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