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初めて野球中継の解説にクレームを入れた話【群青日和 #29】

【試合結果】
5/4(土) 広島東洋カープ
●1-4
[勝]森下
[敗]ケイ
[S]栗林

◇ ◇ ◇

はじめに

今回は試合noteではなく、初めて野球中継の解説にクレームを入れたのでその事について書こうと思う。なんせ過去何百試合と見てきて、こんなことは初めてなもので。

また、この件に関して私はどなたかと意見を交わすつもりはない。
「私はこのように感じて、こういう行動に出た」
という個人的備忘録のために書いている。

耳を疑った言葉

今日の横浜DeNAベイスターズの試合は広島東洋カープ主催、マツダスタジアムで開催された。
この試合を首都圏で見るためには、下記いずれかの配信サービスに加入する必要がある。

  • スカパーオンデマンド

  • J-SPORTSオンデマンド

  • Amazonプライム J-SPORTSチャンネル

私自身は一番下の配信サービスに加入しているので、J-SPORTSが配信する中継映像を視聴する形だ。ちなみに今日の中継映像の制作元はTSS(テレビ新広島)となり、その映像がそのまま配信されている。
本日の解説陣は達川光男氏、山内泰幸氏の二名。

1回表にベイスターズの攻撃が始まってしばらくすると、私は達川氏の言葉に耳を疑った。7番・山本祐大の打席でのことだ。
実況アナウンサーの「正捕手としての地位を固めつつあり、前日には締まった試合を作った」という言葉に続いたのはこんなコメントだった。

一番成長したのはね、キャッチングですよ
キャッチングが上手になるとともに、バッティング、リードが良くなりましたよね
去年のキャッチング、ボロボロでしたよ

また、5回表の打席ではこんな言葉も聞かれた。

昨年の今頃ってもうキャッチングめちゃくちゃ下手だったんですよ。
そりゃもう努力でめちゃくちゃ上手になってる。
エスコバーが出てきてですね、ノーアウト一塁。
パスボール、スライダー。
ノーアウト二塁、パスボール。スライダー。
ランナー三塁。パスボール、一点。
そっからですから。

野球解説に必要なのは、批評、つまりプレーの美点や欠点を挙げてその価値を検討、評価する観点だと思っている。そこに解説員自身の選手時代・コーチや監督時代の経験を重ね合わせ、視聴者に野球観戦の面白さをより分かりやすく伝えるのが解説員の役割、と理解していた。

そこに飛び込んできたのが
「去年のキャッチング、ボロボロでしたよ」
という言葉。

まず大前提として、昨シーズン、山本祐大は東克樹とともに最優秀バッテリー賞を受賞している。

そしてキャッチングがボロボロ、とのことだが、2023年シーズンにおける山本祐大の守備成績を確認してみる。
67試合に捕手として出場し、失策4、捕逸に関してはたったの1回、守備率は.991となっている。

また、5回表でのコメント、エスコバーが出てきて3連続パスボールがあったというものに関して。そもそも山本祐大の捕逸数は1回のみなので既に記憶違いではあるのだけど、似たシチュエーションを探したところおそらくこの試合かと思われる記録があった。

山本祐大が記録した唯一の捕逸、その後に暴投が記録されていて組んでいるのがエスコバー。加えてマツダスタジアムでの広島戦なら達川氏の記憶にも残りやすかったのだろう。
この試合はエスコバーがピッチング、メンタル共に荒れてしまい試合終了後に山﨑康晃が寄り添って励ましていたので、私自身としてもよく覚えている。

何が言いたいかというと、達川氏が5回表に発したコメントの内容は完全に勘違いであり、山本祐大が一試合に3回ものパスボールを記録しそれが失点に繋がった事実はないということ。
一体どこをどう見てボロボロ、と感じられたのだろう。
そもそもキャッチングが上手くなった、と山本を褒めるためにわざわざその前に貶める必要があるのだろうか。それも、記録に残っていない個人の印象だけで。

その言葉は誰に向けているんですか

7回裏、カープの攻撃回。
先発ケイがこの試合で初めてフォアボールを出し、一死満塁の状況でマウンドを降りた。
かなりの大ピンチ。
この場面で火消し役として送り込まれたのが、3年目の徳山壮磨だった。
併殺崩れで一つアウトを取った後、打席に迎えたのは代打松山。
そこで達川氏はこんなコメントを発した。

松ちゃんもう真っ直ぐでええぞ、真っ直ぐ。
フォークはもう真っ直ぐと一緒。コイツのフォークは。
コイツのフォーク言うたらいけんよね、徳山のフォークはね、ええ。
(徳山が投球する姿を見て)あの程度の真っ直ぐよ。
さっきは満塁だったけどね、クイックで投げる徳山のボールは大したことないよ。

……コイツ?
すみません、横浜DeNAベイスターズの徳山壮磨投手に対して仰ったんでしょうか。コイツ言うたらいけん、と訂正したから良いとかそういう次元の話ではない。
TSS(テレビ新広島)での放送だけでなく有料の動画配信サービス内で、カープファンだけでなく全国のベイスターズファンも見ているであろう中、での発言。
それが達ちゃんのスタイルだから、とおっしゃる人も見かけた。
現役選手に対して敬意を払わないのが達川氏のスタイルなんですか。
そして、投げているボールの質に関してのコメント。
「先日と比べて状態が悪い」
「キャッチャーの要求通りにいっていない」
よく聞く表現だが、こんな感じで客観的事実を元に有識者としてコメントを述べるのはまさに解説員の仕事だ。
それが、解説席からのコメントとして
「フォークは真っ直ぐと一緒」
「あの程度の真っ直ぐ」
これはもう、貶められているようにしか聞こえない。
もしも表現の問題ならば、一番手に取ってはいけない言い回しがそのまま出ている。
そのコメントは、一体誰に向けているんでしょうか。

受け取らない自由、伝える権利

達川氏は昨シーズン、マツダスタジアムで行われた広島東洋カープ対阪神タイガース戦にて先発した阪神・門別啓人に対して不適切な内容の発言を述べ、謝罪コメントを出すに至った騒動を起こしていた。

「タイガースだから、これだけ大きく各社取り上げて貰ってますけどね、これぐらいの実力じゃ取り上げて貰えないですよね、普通ならね」
「北海道のお父さんお母さんみているでしょうけど、来年の戦力としてはまだまだですよ」

上記は当時の中継映像からメモを取った達川氏の発言だ。
「コイツ」呼ばわりした今日の徳山に対する姿勢と同じような雰囲気を感じる。
なぜまた同じような事が繰り返されているのだろう。

いや達川さんの言っていることは事実だから、という意見を目にした。
事実だから全て言ってもいい、この主張がまかり通ってしまうとどうなるか。
この世界から良心が消え失せることになる。
良心を簡単に説明するならば物事の是非・善悪を正直に判断し、状況や利害に左右されずに善いと信じるところに従って行動しようとする気持ちだ。
これが欠けた野球解説は批評・批判ではなく、ただの個人の感想、悪口や誹謗中傷の類に近いものになってしまう。

昔はおおらかだった、こんなの当たり前だった。
そうかもしれない。
でも、その時代に暮らす人々はやがて年を取り、新たな世代が次の時代の担い手になる。そしてその世代が育った環境は、上の世代と比べてかなり様変わりしている。環境が変化しているならば、価値観だって変わっていって当然だ。

申し訳ありませんが、私は達川氏のコメントを横浜DeNAベイスターズのファンとして、そして一人の野球ファンとして受け取ることはできかねます。
今回の試合中継内容に関して、制作元のTSS(テレビ新広島)に下記内容にて意見を送りました。
※お送りしたこの内容は、試合の勝敗に関わらず送るつもりでいました。

達川氏の親しみやすく軽妙なトークや現役時代・コーチ経験に基づいて執筆されたコラムなど、いままで数多く楽しく拝見させていただいてきましたが、今日の解説コメントは非常に悲しく、残念でした。

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