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陽は沈み また昇る 【群青日和 #8】

【試合結果】
4/6(土) 読売ジャイアンツ
◯6-4
[勝]上茶谷
[敗]井上
[S]森原

◇ ◇ ◇

今まで重ねてきた安打の数が、他の人よりもかなり多いから。
何打席無安打、なんて勝手に心配されちゃって。

この16打席の間、アウトになっていった打球は決して悪いものばかりではなかった。
打球速度は出ている、いいバッティングをしているが正面をついているだけ、打率ばかり目立ってしまうが状態は悪くない。
試合後監督談話で触れられた内容とほぼ同じ思いを私も抱いていた。

笑顔は無くとも、グラウンドの中で決して下を向いていなかったのは知っている。
12球団の中で指名された87人中、84番目に名前を呼ばれたあなただから。
「9位指名だったからプレッシャーなくやれている」と語っていたルーキーイヤーから、今年で8年目。「結果を残せば試合に出られる、一軍で使ってもらえる」と、その言葉通りに結果を積み重ねてきた。

そしてプロの世界はなんとも大変なことに、結果を出して起用が増えてくると今度は「結果を出して当たり前」と思われて、さらに求められる内容のハードルが増えて、高さもどんどん上がっていってしまう仕組みになっている。

才能があるとかないとか、それは他人が判断する事かもしれない。
ただ、しつこくて諦めきれない気持ちは「それに向いてる」と言えるんじゃないか。諦めきれないから、次の打席に向かえる。
ただ『H』のランプを灯す、それだけのために。

そして昨日まで諦めなかった思いが、今日に繋がったんだ。

全く以て非科学的な話になるけれど。
人間が持っている諦めきれない強い気持ちは、時にボールの位置を1mmでも1cmでもずらして、誰も居ないフェアグラウンドに落としたり、空に大きくアーチを描く打球をフェンスの向こう側へ持っていったりする事もある。

出典は、自分の胸の中にある。

本来の調子を取り戻した時も、派手な活躍とは言われないかもしれない。
あんまりにも淡々と打ちすぎて「佐野が打つのはいつものこと」と思われがちかもしれない。

でも、いつものことなんて何処にも無いんだよ。
打席で出るヒットの裏に、どれだけ積み重ねてきたものがあったのか。
マリオカートだってコソ練(コッソリ裏で練習すること)する人なんだもの。
きっと、おおっぴらに努力するタイプじゃない。

◇ ◇ ◇

変わらざるを得ないもの、変わってしまうものばかりの世界の中で、佐野恵太のスイングの根っこの部分は変わらないでいようとする意志を感じる。
写真や動画、スタジアムでも、あの右手の『引き』が効いたスイングはたとえ100回目にしたとしても「フォロースルーが綺麗だなあ」と100回思える自信がある。

またハマスタに戻って来た時、なんかあの辺うるせえなあって苦笑いされるくらい声出して応援するから。
真剣勝負の世界にしかないあのヒリヒリした雰囲気を、どうか楽しんで。
今のベイスターズで佐野恵太が本気で野球を楽しんでくれたら、チームはきっとさらに強くなる。

◇ ◇ ◇

ボールを打つ瞬間。
レンズのピントが合うみたいに、わずかに大きく目を見開く。

ファーストストライクを迷いなく
振り切って、振り抜いて。
そんなあなたの姿が大好きだから。

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