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会いたいのになかなか会えない / 日本橋「うさぎや」のどら焼き


今日、前職の先輩から連絡があった。
「どうやら○○店(前職で一番長く在籍した店舗)、閉店したみたい」

そうか…。
このご時世、どこもアパレル業界は苦境に立たされている。
クローズも止む無し、かな。うーむ。


降りた事も無い駅


アパレル販売員という職あるあるの一つとして、あちこちの店舗を異動して周る、という現象がある。
例に漏れず私もその一人で、都内の主要駅は一通り制覇したかな?といった具合だ。駅直結、もしくは駅に程近い商業施設やビル、百貨店で働く事になるのでその街自体には意外と詳しくない、という現象が起きがち。
だって、職場から基本的に出ないから…拘束時間長いし…。
退勤したら大体とっくに日が沈んでるので、全然太陽に当たらない。吸血鬼のようだ。

そんな生活の中、ちょくちょく少ない休憩時間を削ってまで出歩いたり、休日にもわざわざ来ちゃうくらいに好きな街があった。

それが、「日本橋」という街。
異動の話を聞いた時、あまりにピンと来なくてリアクションすらふんわりしてしまった。
有楽町、銀座や東京駅に程近い、大人が行き交う街。
新宿や渋谷なんかの雑多でガヤガヤした感じとは全然違う!

新しい建物と、歴史を感じる建物がうまく溶け合って馴染んでいる。
特に、「日本橋高島屋」や


日本橋を渡った先の「日本橋三越」の建築美は、立ち並ぶビル群の中でも一際映えて目に映る。好きなんだよな〜、こういう西洋文化のはしりと実直な日本人の「たてもの」観が合わさった感じというか…。



その「重み」に恋した


そんな街「日本橋」で働いていたある日、当時勤めていた店舗の店長がウッキウキで昼休憩から戻ってきた。

「マイコさん!これ!すっっっごい美味しいから!休憩中良かったら食べて!」

と手渡されたのは小ぶりの紙袋。
店長はちょっと変わった人だったので、よく主語をふっとばして話す癖があった。
うん、今回もである。
「これ」ってどれだ?まあいいや、ありがとうございまあーす!と受け取る。

ちょっと「おっ?」と思う重みがあった。
大きさに対して意外な重み、というやつだ。
手のひらから少しはみ出すくらいの紙袋。何だろうこれは。

入れ替わりで休憩に入り、昼ごはんを頂いた後に紙袋を開けてみる。

「どら焼き」だった。

どら焼きにこの擬音はどうだろう、という感じなのだが、
誇張抜きで「ずしっ」としているのだ。
餡子の重みに加えて、コンビニで売っているそれとは全然違う、フワッフワでしっとりとした皮、の厚み!

見た目はごくシンプルな佇まい。

紙袋の裏面を見てみる。

原材料:小豆、砂糖、小麦粉、卵、蜂蜜、重曹

原材料もシンプルそのもの!



ひとつ200円(税別)の幸せ


そのどら焼きは、「うさぎや」というお店の物でした。


営業しているのは、なんと平日のみ。
土日祝日は営業していないのだ。
しかも、その日売る分が完売すると閉店してしまう。
閉店時間より早仕舞いしてしまう可能性があるのだ。
「本日スープ終了につき閉店」と札を出すラーメン屋のようだ。

おまけに驚異の賞味期限、なんと「一日」
お取り寄せ、不可。
おお神よ…!

アパレル販売員は基本的にシフト制勤務が常なので、平日休みが結構あった。
わざわざ休みの日に日本橋へ出向き、うさぎやへどら焼きを買いに行った事もたびたびある。

売り切れる事もままあるので、基本的に午前中から昼過ぎには伺うのがベスト。
早い時間に運良く行ければ、ほのかに温もりを感じるどら焼きに出会えたりする。

出来立ての!どら焼き!
なんて幸せなんだろうか…。


確実に手に入れたい場合は電話注文も可能。
別ブランドに異動が決まって、勤務最終日にここのどら焼きを15個程配り歩いたが、老若男女に受けが良かった。

包みを開けるとふんわりと広がる蜂蜜の香り

しっかりとしているのに、フワフワしっとりきめ細やかな皮

ツヤツヤ、真っ黒でよく練られているが程良く粒の残った餡

オール満点、どら焼き界の優等生。
ドラえもんが食べたら感激して泣き出しそうだ。


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うわーん!また食べたい!


暦通りのお休みを頂ける、いわゆるOLに転職して3年弱、うさぎやのどら焼きの無い生活。私はまたこのどら焼きに再会する為だけに、有給休暇申請をしようとしている。どら焼き休暇だ。

だって食べたいんだもの。




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