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宮本浩次「ロマンスの夜」ライブレポート(その1) 〜独自の世界を表現する異例の歌声〜

はじめに

本記事は、2023年1月16日に開催された宮本浩次「ロマンスの夜」の有明公演のライブレポートです。

やや投稿時期が遅れましたが、昨日、2月26日に WOWOW で放送された同公演に背中を押されて、書いてみることにしました。

ロマンスの夜について

宮本先生による「ROMANCE」「秋の日に」でカバーした "おんなうた" を中心にしたコンサートです。もういい年のおじさんになったし、そろそろ大人っぽいコンサートをやってみようと思って(※ とは本人は言ってないけど、そういうことだと勝手に捉えた。笑)開催されたそうです。

ちなみに、このコンサート、チケット代が 12,000円 だったので、申し込みするときに「高っっ!!!」と思った。
とっても完成度と幸福度の高いコンサートだったのでその価値はあったと思います。でも最初はびっくりしたよ(こういうもんなの?)。

記事タイトルの意味

全体的な感想ですが、この「ロマンスの夜」は、私にとっては相当に衝撃的なコンサートでした。
完全にいい意味で。歌手って何だ?って根本的なところを問い直したくなってしまうくらいの衝撃を受けた。

とにかく全体としての完成度が高い、それもそう。
相変わらず歌がうますぎる、それもそう。

でも、そういう次元じゃなくて、そもそも私はこういう種類のコンサートを初めて見た。

この記事には「〜独自の世界を表現する異例の歌声〜」とタイトルをつけましたが、何を意味しているのか、最初に答えを言ってしまうことにします。

要約せずに書くと、このタイトルはこういうことです。

原曲の歌詞をそのまま歌っているのに、
歌の表現では完全に歌詞を無視していて、
その結果として、原曲と異なる独自の世界が表現されるという
異例のアート空間だった。

…… 自分で書いておいてアレだけど、完全に意味不明ですね。笑

説明しよう!

全く意味がわからないと思うので、例をあげて説明を試みたいと思います。

例えば、4曲目の「First Love」
終わってしまった切ない初恋の歌ですね。いつか誰かとまた恋に落ちても、心の中にずっとあなただけの場所があるから…… と、そういう歌です。

しかし、このコンサートで宮本先生は、全くそんなことは歌っていなかった。確かにその歌詞を歌っていたけど、歌声で表現されているものは全く別でした。

「誰かとまた恋に落ちても」という歌詞をなぞりながら、その歌の表現は完全に、「今までもこの先も、他の人に恋するなんてあり得ない。一生あなただけを愛しています」という響きしかもっていませんでした。

会場で聞いたとき、呆気にとられましたよ。
え? この人、完全に歌詞を無視してるじゃん、って。

でも、それでいて違和感がないどころか、異様な説得力があった。
一言でいうと、泣けた。感動して。全然歌詞と違うことを歌ってるのに。

本当に呆然としました。カバーって何だっけ?と思った。こういう手法でカバーを歌う歌い手を初めて見た。「ROMANCE」や「秋の日に」の CD に入っている歌だってこんな風ではなかった。何が起きているのか分からなかった。

無視されつづける原曲の歌詞

そしてこれは「First Love」だけじゃなかったのでした。

例えば「September」

ほかの女の人と会っているのを知って「私一人が傷つくことが残されたやさしさね」と身を引こうとする女性が主人公の歌です。
でも、歌の表現は「いや!他の人と付き合うなんて許さない!私のところに帰ってきて!」でした。

例えば「二人でお酒を」

別れる相手に「それでもたまに淋しくなったら二人でお酒を飲みましょうね」と。
でも、歌の表現は「毎晩あなたに会いたい」でした。

例えば「あばよ」

居留守なんて見えすいた手口でかわされるのを「やさしい男はいくらでもいるもんさ」「嫌われたならしょうがない」と強がる歌。
でも、歌の表現は「あなたしかいない」「どうしても会いたい、どうしても諦められない」でした。

挙げるときりがないくらい、一時が万事、こうだったんです。
歌詞と歌の表現が完全に一致していたのは「ロマンス」「冬の花」「カサブランカ・ダンディ」だけだったと思います。

セットリストの多くが「色々なかたちで恋人との別れを受け入れていく女性の歌」でしたが、どうしたわけか、その全てが「ぜったいに諦めない一途な純愛の歌」に変貌していました。

少なくとも私に耳にはそうとしか聞こえなかった。何かの魔術にかかったのかと思いました。今でも半分くらいはそう思っています。

おわりに

いまのところ同じ感想を抱いた人は見かけていないので、これは私の見た幻だったのか?と思ってしまいそうにもなるのですが、ひとりの音楽ファンが感じたこととして、そのままをレポートに残しておくことにします。

原曲の世界を無視しているのに、わけのわからない圧倒的な力で、全ての違和感をねじ伏せてこちらを感動させたものが何だったのか、今でもよく分かりません。

単に宮本浩次の歌がとてつもなく上手いからかもしれないし、その歌で表現されている愛の一途さが美しかったからかもしれない。

何だか分からないけど、でも、泣けた。すごく。

宮本浩次「ロマンスの夜」は、私を大変に混乱させたコンサートになりましたが、でも確実に、とても感動的な素晴らしいコンサートでした。

おまけ:宣伝

宮本先生の素敵なアルバム、「ROMANCE」と「秋の日に」はここから買えます!


続編

ライブレポートのその2はこちらにあります。


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