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B'zの35周年記念ライブが豪雨と落雷で彩られた話

2023年9月21日。僕はこれまでに経験したことのないほど壮絶で、感動的なライブを体験しました。

この日、ヤンマースタジアム長居で行われるB'zの35周年ツアーに参加するため、僕は大阪に向かいました。B'zは1988年9月21日にデビューしたので、ちょうとデビュー記念日のライブです。

しかし9月17日に行われた福岡・PayPayドーム公演でのセット解体中に事故が起こり、2日前まで大阪公演の開催が危ぶまれていました。

開催の有無は9月19日発表ということで、その日は1日中そわそわしていました。開催が発表されたのは午後7時。ちょうどその時間からスタッフとの食事会があったのですが、店に入る直前に開催が発表されたので、その喜びをかみしめていたら数分遅刻しました。待たせた皆さん、ごめんなさい。

このツアーのアクシデントはこれだけはありませんでした。福井公演は稲葉さんが体調不良、沖縄公演は台風のためそれぞれ中止に。大阪公演に参加するしない関係なく、多くのファンが様々な思いをもったツアーだったのです。

そして迎えた9月21日。この日はデビュー記念日とは別に、僕にとって大きな出来事がありました。僕が制作していた『推しといつまでも』のB'z特集を観た68歳の両親と弟夫婦が、B'zのライブに初参加してくれたのです。

せっかくなので、僕とおそろいのTシャツをそれぞれの家に事前に送り付け、ツアートラックの前で集合写真を撮りました。

なんだかんだで久々の家族写真です。この時はまだ穏やかな空でした。この時は…。

写真撮影を終えると、母親が「はい」と袋を渡してきました。中にはパンが3つ。「お腹すくかと思って」と言われたのですが、「いやいや、もう開演やから!」と苦笑いしながら受け取り(受け取るんかい)、入場ゲートへと向かいました。

スタジアムの中に入って目にしたのは、これまでとは違うセットの姿でした。今回のセットは正面・右・左に大きなビジョンがあり、それらを大きなフレームが囲っていたのですが、それが丸ごとありません。トラスがむき出しになっています。セット解体中の事故によって「ステージプランの変更」はアナウンスされていましたが、これだったのか…。

様々な変更点はあったと思うのですが、ライブを開催してくれることに感謝しながら着席。僕はアリーナのDブロックでした。

すると開演前のビジョンに、大阪・長居の天気予報が流れました。

「降水確率 90%」

会場がどよめきます。でもこの時はまだ雨が降る気配はなく「雨予報なんて本当かいな」くらいの気持ちでした。

定刻の17時30分を5分ほど過ぎて、ついに開演。1曲目の『LOVE PHANTOM』のイントロに「おおぉ」と歓声が上がります。会場の作りなのか、客席の歓声が非常に響きます。稲葉さんの声も絶好調。松本さんのギターも唸りを上げます。

2曲目の『FIREBALL』で、突然の雨。それも「雨粒でかっ」と思わず雨につっこんでしまうほど大粒の雨が降り出しました。しかし雨は一瞬で上がり、「『FIREBALL』で雨が上がるなんてオシャレじゃない」と考えるくらい余裕がありました。この時は。

そして最初のMCです。

これまでは稲葉さんと松本さんの茶番(失礼)から「B'zのLIVE-GYMにようこそー!」の流れだったのですが、今回は稲葉さんが強いトーンで話し始めました。

「先日の件、ニュースとかになってるので皆さんご存知かと思いますが、ご心配おかけしてすいません!」

ここで稲葉さん、松本さんが深く頭を下げます。この時点で僕の涙腺はダメでした。さらに稲葉さんは続けます。

「いつも思ってることですが、1本1本のライブをやるには、多くの人の力が必要です。今日からの大阪公演は、普段よりそれを噛み締めながら、皆さんが笑顔になって帰ってもらえるように演奏します!」

再び頭を下げる2人。事故が起きてから開催決定までわずか1日半。それから1日半でこのライブを迎えるまでに、どれだけの見えない苦労があったのでしょうか。開催してくれてありがとうの気持ちが止まりません。

そしてこの日は茶番なし(失礼)でいきなり…

「B'zの…B'zの…」

「やっぱこれだな、B'zのLIVE-GYMにようこそー!」

「うぉーー!!(大歓声)」

3曲目は『RUN』です。ギターソロ終わりの「生きるならー!」がいつもより昂ってるように聴こえたのは気のせいでしょうか。

激レア曲『夜にふられても』や『恋心』や『イチブトゼンブ』といった鉄板曲が次々と披露されていきます。空が徐々に暗くなっていき、照明がより映えるようになってきたなぁ…もう雨なんて降らないんじゃないの…と思ってたら、11曲目の『LADY NAVIGATION』で状況が一変します。

突然の豪雨。

あれ、これちょっと普通じゃない。そう思ってるうちにどんどん強くなる雨。さらに空が光り出します。一瞬照明かと思いましたが違いました。雷です。

「『推しといつまでも』でスタジアムに落雷した映像を紹介したけど、まさか自分が体験することになるとは…」なんて思ってるうちに、どんどん「ゴロゴロ」という音も聞こえてきました。

VTRコーナーでさらに雨は強くなり、もうシャワーを浴びているくらいの状態。カッパは着ているものの全身びしょ濡れ。足元には水がたまり始めていました。

VTRが終わると、バーのセットが組まれたトークコーナーが始まるのですが、この日はまずセットの位置が違いました。これまではステージ向かって右手にバーのセットが組まれていたのですが、今回は雨よけがあるステージ中央に組まれています。

ここのブロックは稲葉さんと松本さんのゆるいトークを楽しむ時間のはずが、どしゃぶりの雨でそれどころではありません。稲葉さんもそれを察していて、ファーストアルバムのアナログ盤を手に「これ持ってる人いますか?」と会場に問いかけるものの「そんなことはどうでもいいですよね!歌います!」とトークコーナーを早々に切り上げ『BIG』の演奏がスタート。

歌い出すと同時にバーセットのバラシが始まり「なんかドリフみたいやなぁ…」と、びしょ濡れになりながら思っていましたが「この雨と雷、ヤバいんじゃないの…」と、少しずつライブに集中できなくなってたのも事実でした。

メンバー紹介のジャムセッションを終えたところで大きな雷鳴が轟き、ついにライブが中断します。

この時、雷が光ってから音が聞こえるまで4,5秒でした。音速を考えると、雷が落ちている地点から会場まで約1.5kmほどでしょうか(癖でいつも計算してしまう)。

この時、僕がB'z仲間に打ったLINEが残っています。

19:03「雷でライブ中断!」

19:04「雨やばすぎる」

19:06「しゃれにならん」

LINEする余裕あるがな、と思う人もいるかもですが、1人で参加してたので誰かに伝えないと怖かったのです。

中断のアナウンスが入ってしばらくすると、ステージ上からスタッフの方の避難誘導が始まりました。

「屋根のないスタンド席の方は屋根のある場所への移動をお願いします」

「アリーナ席の方は避難場所をブロックごとにご案内します。まずは…」

入場時には空いていなかったゲートが開き、スタジアムの外に出れるようになっています。この案内のスムーズさにめちゃくちゃ驚きました。とにかく迅速かつ丁寧なんです。さらに…

「会場の外に出ても、絶対に木の下では待機しないでください」

長居スタジアムは、過去にあるライブで木の下に避難した方が落雷で命を落としたという悲しい事故が起きています。開催にこぎつけたライブを絶対に安全に終えるんだという、スタッフさんたちの強い意志を感じました。

19:20ごろにはスタジアムを出ることができました。雨は弱まっていましたが、雨宿りできる場所を探してさらに移動します。雷の音を聞く限り、雷雲も少し遠ざかったようでした。

災害レベルの豪雨に雷、もう中止かもしれない…本気でそう思いました。でも僕らにできるのは安全な場所で、再開か中止かの決定を待つことだけです。

とにかく今は待つんだ…と思ったら少しお腹が空いてきました(え?)。困ったな…いや、そういえば母親からもらったパンがあった!と、カバンからパンを取り出してこそこそと食べました。ありがとうお母さん。めちゃくちゃ助かりました。

恐らくスタジアムの規定で演奏できるのは21時まででは?となるとあまり協議が長引くと、時間切れになるのでは?と、嫌な予感が頭をもたげます。

ただ静かに決定を待ち(パンは食べましたが)、19:50過ぎでしょうか。スタジアムの中から「ワッ」と歓声が聞こえました。すると誰かがスタジアムの中から、会場の外にいる僕らに向かって叫んだのです。

「再開だ!戻ってこーい!」

普通なら「あんた誰やねん」とつっこみたくなるところですが、外のファン(僕も含む)は拍手でそれに応えます。さぁスタジアムに戻って再開です。

とはいえ、数万人が会場の外に出ていたであろう状況です。スタッフの方が「それでは再開です!」と叫んで歓声が上がったのは20:30ごろでした。30分ほどかけて、ゆっくり丁寧に誘導し続けたスタッフさん、本当に素晴らしかったです。

会場の客電が点いた状態でメンバーがステージに戻ってきます。場内大歓声です。稲葉さんが口を開きます。

「皆さん、出たり入ったりごめんなさいね!」

長年B'zのライブに参加してきましたが、初めて聞いたMCでした笑。会場はもちろん歓声で応えます。

「じゃあ第2部行ってみましょうー!」

と稲葉さんが叫んで始まったのは『ultra soul』。これしかないという1曲で会場はとんでもない盛り上がりです。中断前に松本さんを紹介できていなかったので、イレギュラーなタイミングで何度も「On Guitar,Tak Matsumoto!」を放り込む稲葉さん。そのたびに大歓声です。

そして曲は『BAD COMMUNICATION』へと繋がります。すると巨大な火柱が!熱い!というかあれだけ雨降ったのに特効使えるんや!というか熱い!と色んな意味で大興奮。

そして『IT'S SHOWTIME!!』ではイントロで大爆発!歓声と同様に爆音がスタジアムに響いてめちゃくちゃびっくりしました。あと、こんな特効使えるんや!というびっくりも再び。

しかし驚きはそれだけではありません。ボーカルや楽器の演奏が完璧に聴こえるのはもちろん、照明やビジョンもフルで稼働しているのです。用意周到な雨対策があってこそだと思います。本当にすごいです。

『IT'S SHOWTIME!!』の曲中に、客電が消えました。これは予想ですが、最後のお客さんが席に戻るまで会場を明るくしておいた…ということではないでしょうか。これにも感動しました(全然違ってたらすいません)。

稲葉さんから感謝のMCを挟んで『STARS』『Pleasure2023』と立て続けに演奏。大爆発とともに、怒涛の第2部が終了しました。

ライブ再開後、稲葉さんからは何度も「大丈夫ですか?」「ごめんなさい」とありましたが、誰も怒ってなんてないと思います。

激しい雷雨により、唯一途中で中止となった2000年のライブから23年。メンバー・スタッフの皆さんのプロフェッショナルな仕事のおかげで、中止になることなくデビュー記念日のライブを悔いなく味わうことができました。

そして稲葉さんの言葉通り「ずっと忘れらないライブ」になりました。何度も涙がこぼれました。

いつもライブの最後に稲葉さんは「また絶対に会いましょう!」と言いますが、今回は「また絶対に、絶対に、絶対に会いましょう!」と何度も強調されていました。この言葉を胸に、また生き抜きます。

たくさんの困難を経てたどり着いたデビュー記念日、そしてツアー最終地・大阪。残すはあと2公演です。素晴らしいライブとなりますように!

ちなみに、ライブに初参加した弟の奥さんが聴きたかったのは『May』『ハピネス』『ピエロ』だったそうです。マニアックすぎる!笑

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