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【ロック少年・青年小説集】「25歳からのバンドやろうぜ1~初めてのステージに立ってみよう⑯【人生初ステージ6】~」

Fたちのバンドのオリジナル曲が始まった。

イカ天に出ようぜ
下北沢に住んで
国分寺の古着屋で買った
サイケな服を着よう

イカ天に出ようぜ
テレビに映ろう
ギターを買おう
プロになって本に出よう

イカ天出るぞ
イカ天出るぞ
いまからおれたち
ロックンロールスター

Fの同窓生たちにはかなり受けていた。
嫉妬がわかないわけでもなかったユキオだが…
こういうやり方があったのかという驚きと同時に…

「おれがやりたいのは
誰かにきかせる音楽じゃなくて
自分が聴きたい音を入れ込んだ音楽なのだ」

という意識というのか…なんのためにバンドでステージを25歳にもなって
初めて出る意味を…自分なりに、明らかになった気がした。

Fたちのバンドは面白いとは思うが…受け狙いが強く、
はったりに満ちている。

悪いとは言わないが…見ていてふつふつと怒りがわいてくる。

ふざけるな…心の中でそういう声がユキオの中にひびく。
ユキオは楽屋に戻ることにした。

緊張やふわふわとしたあがった状態は少し落ち着いた。
おれは好きなようにやればいいんだ。

ギターを抱えて、ウォークマンでステージでやる曲とは関係のない曲を聴き始めた。

イヤホンからザ・フーの「ババオライリー」がきこえてきた。

ばかやろう…ばかやろう、
ユキオは何に対する怒りなのかわからない苛立ちを胸いっぱいに感じていた。