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#48 くじら軒@八重洲地下街


大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。

散歩に出かける予定だったのだけれど、急に雨が降ってきたので、予定を変更して、久しぶりに八重洲地下街にやってきた。雨でもお散歩ができるのが地下街だ。それが2016年9月8日。けっこう久しぶりの八重洲地下街。

1980年代、20代で駆け出しのライターだった僕は最低でも月に1度はここ八重洲地下街へやってきた。理由は、ここにNTTがあって、全国の電話帳が置かれていたのだ。
月刊誌の取材記者をやっていたので、取材したい人の電話番号を電話帳から探していたのだ。急いでいる場合は、NTTにあった公衆電話で取材の申し込みの電話をかけた。今はNTTはない。
そうそう、郵便局などもあったので、取材のための見本誌をこの地下街の郵便局から送った。郵便局はまだある。また、さらに床屋もあった。この床屋もまだある。

愛称は“ヤエチカ”なんだそうだ。八重洲という地名の元になったのは、オランダ人のヤン・ヨーステンだ。1600年、まさに関ヶ原の戦いの直前、オランダ船のリーフデ号が今の大分県で難破した。その船に乗っていたヤン・ヨーステンは後に徳川家康の外交顧問になり、八重洲に屋敷を賜った。八重洲地下街の『游亀亭』という旭川ラーメンの店の隣にヤン・ヨーステンの記念像がある。

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首から上だけの像で、最初に見たときは、さらし首になっているのかと思った。自分の中では、この像はかなり有名だと思い込んでいて、しばしば、待ち合わせにこの像の前でとお願いするのだが、相手がちゃんと来られたためしがない。上野の西郷さんの像のように有名ではないようだ。

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同じ壁面には、リーフデ号がどういう経路で日本に来たかなどが世界地図で示されている。
他にも当時の日本の様子を描いた浮世絵などもあり、さながらちょっとした博物館のようである。

そんなものを眺めていると、お腹がすいてきた。
八重洲地下街に町中華があるかと探してみたのが町中華か本格中華かわからないけれど、中華料理屋は1軒、あと『游亀亭』などラーメン屋も何軒かあった。どこも混んでいたので、いちばん空いていた「くじら軒」というお店に入った。

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食券を買うスタイル。

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お昼過ぎで、並ばなくてもよかった。

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あっさり系のスープで、なかなかおいしかった。
くじら軒の近くから、地上に出てみたけれど、雨はさらに激しくなっていた。
八重洲通の日本橋3丁目のところにヤン・ヨーステンの像とリーフデ号のモニュメントがあるのだけれど、雨で断念。自由通路で、丸の内側へ歩いて行く。こうして、丸の内まで地下を歩くとかなりの距離になる。
丸ビルへ地下から上がってみた。丸の内ビルの南側にリーフデ号のモニュメントがあるのだけれど、まだまだ雨が降っている。
あきらめて、山手線で帰宅した。最寄り駅の鶯谷駅に到着すると、雨はすっかりあがっていた。

先日、ふと、ヤン・ヨーステンの像はどうなっているのかと、八重洲近辺に来たついでに八重洲の地下街にやってきた。

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以前と同じように、ヤン・ヨーステンはそこにいた。そうだ、くじら軒はどうなっているのだろう。

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えびそばのラーメン店になっていた。かなりおいしそうだ。この日はおなかいっぱいなので、食べなかったが、今度ぜひ行ってみたい。


【プロフィール】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。

ツイッター https://twitter.com/maguro_shimo

【著書】
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