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#56ラブホテル街にたたずむお地蔵様


鶯谷駅というと駅前からすぐにラブホテルが立ち並んでいるとイメージだが、くまなく歩いてみるとラブホテル以外にいろいろなものがあることに気がつく。たとえば正岡子規が住んでいた家がそのまま博物館のように公開されている「子規庵」があったり、その向かい側には書道博物館がある。また、林家三平の自宅をそのまま博物館にした「ねぎし三平堂」もある。

そんな鶯谷のラブホテル街の中にも民家のような家があって、その前のちょっとした庭にお地蔵さまがいらっしゃる。

場所は、北口を出て、信濃路という24時間やっている居酒屋のところを線路沿いに歩き、ラブホテルが軒を連ねている先にある。

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一般のお宅の花壇にお地蔵さまはいらっしゃる。ここに民家があるのは以前から知ってはいたのだけれど、お地蔵さまがいらっしゃると知ったのはこのコラムを書き始めてからだ。やはり、注意して見ないと、こういう場所にある小さなお地蔵さまは見逃してしまうの。

さて、お地蔵さまはとても小さく。道側を向いている。道の向こうは線路がある。山手線、京浜東北線をはじめ、多くの線路が走っている。

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毛糸で編まれた涎掛けがなんともかわいらしい。

江戸時代、鶯谷駅周辺は田園地帯で、子規庵で見たそのころの地図は田園の中、ポツンと一軒家の正岡子規の家があった。子規が住んだのは明治27年から8年後にこの場所で没するまで住んでいた。鶯谷駅ができたのは、そのあとの明治45年のことだ。このお地蔵さまは、線路の中ころからここにたたずんでいたという感じではない。けっこう新しそうだ。

昔はこの界隈をゆっくり歩くということはなかったが、近くに住んでからは朝早い時間帯に散策することが多くなった。

なぜ朝早くかというと、妻の出勤について鶯谷駅まで歩くからだ。朝早い時間帯のラブホテル街は表を掃除する人などがいるぐらいで、閑散としている。

鶯谷公園というのが昔からある小さな公園。遊具はあるけれど、子供が遊んでいるのを見たことははない。先ごろ台東区が喫煙ルームを設置したけれど、そこでタバコを吸っている人は少なく、公園ないのあちらこちらで喫煙している人が朝もけっこういる。

鶯谷駅は北口が地上だが、南口は線路の上にある。鶯谷駅周辺はこの線路を挟んで東側はラブホテル街、西側には霊園や国立博物館、上野公園が広がっている。

散歩するにはちょうどいいロケーションで、ぶらぶら歩いていると9時になる。9時になると業務スーパー河内屋上野公園店が開くので、買い物をして帰ることもある。

ぶらぶら回って、再びお地蔵様の前に出てきたりする。買い物の荷物を持っているので、手を合わせるのではなく、ちょっとだけ会釈をして通り過ぎる。そんな、僕の朝の散歩でよく出会うお地蔵様だ。名前はあるのかもしれないけれど、どこにも記述がないので、よくわからない。個人的には鶯谷のラビホテル街にいらっしゃるお地蔵様とひそかに呼んでいる。



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