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書評

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記事一覧

ドライでサイコパス(おいしいごはんが食べられますように/高瀬隼子)

芥川賞受賞作。 タイトルからかもめ食堂的なほっこり系を想像していたら、いい意味で裏切られ…

Magricco
3日前
2

固有名詞の鬱(この部屋から東京タワーは永遠に見えない/麻布競馬場)

Twitterの人気者、麻布競馬場(@63cities)の小説をまとめた本。 いつしか彼の短編小説がバズ…

Magricco
1か月前
2

実在(存在のすべてを/塩田武士)

神奈川県で起きた二児同時誘拐事件。 警察の助けがあったにも関わらず身代金の受け渡しに失敗…

Magricco
1か月前
1

生産性の罠(限りある時間の使い方/オリバー・バークマン)

人生は4000週間しかない。効率化ツールや時短家電で生産性を上げれば幸福度は上がるかというと…

Magricco
1か月前
3

記憶の配当(DIE WITH ZERO/ビル・パーキンス)

人生でいちばん大切なのは、思い出をつくることだ。 だから自分が何をすれば幸せになるかを知…

Magricco
2か月前
4

自己愛の描写(ぼくにはこれしかなかった。/早坂大輔)

高卒で就職、営業マンとして朝から夜中まで死に物狂いで働き続け、会社でそれなりの地位を得た…

Magricco
2か月前
4

信じる(星の子/今村夏子)

※ネタバレあり※ 宗教2世の子どもを描いた小説。芦田愛菜主演の同タイトル映画を先に観て、後から今村夏子原作だったと知り読んでみた。 赤ちゃんの頃から体が弱く、乳児湿疹が治らなかった主人公・ちひろ。 ちひろの父が同僚に相談すると、ある宗教団体が販売する水を薦められ、その水を使うようになってから湿疹が治ったことで、両親ともに宗教にのめりこんでいく。 おかしな両親に嫌気がさした高校生の姉は家出をするが、中学生のちひろは学校で冷やかしを受けても両親を信じ、愛する…という話。 あ

普通じゃないけど(普通の主婦だった私が50歳で東大に合格した夢をかなえる勉強法/安…

タイトルのまま、50歳で東大に合格し、本当に入学した主婦の勉強ノウハウが書かれた本。受験に…

Magricco
2か月前
7

戦争の行方(半導体戦争/クリス・ミラー)

私は投資歴10年を迎えるが、ここ数年最もホットな半導体という分野についてあまりにも知らな…

Magricco
3か月前
2

私の不幸は私が決める(慣れろ、おちょくれ、踏み外せ/森山至貴×能町みね子)

クィア・スタディーズの専門家・教授であり自身もゲイである森山氏と、以前ここに書いた『結婚…

Magricco
3か月前
4

許しがたいオチ(5A73/詠坂雄二 )

※ネタバレ含みます※ 5人の連続した自殺には、ある共通点があった。 それは遺体のどこかに…

Magricco
3か月前

抽象化と転用(メモの魔力/前田裕二)

2019年最も売れたビジネス書らしい。 SHOWROOMの前田社長、そうえいば最近見ないな。SHOWR…

Magricco
4か月前
15

言語の人格(語学の天才まで1億光年/高野秀行)

早稲田大学探検部出身の作家が、25の言語を学ぶに至る過程を記したノンフィクション。著者は…

Magricco
4か月前
22

ストーリーテラーを信じるな(ストーリーが世界を滅ぼす/ジョナサン・ゴットシャル)

ストーリーテリング(物語化)のおかげで、文明は発達した。物語には人の思考と行動を大い変える力があるが、ほとんどの人はその影響力に無自覚で「自分は物語の語り手になびかない」と考えている。ここに、物語の危険性がある。 具体的には、以下の通り。 ・語らず、示せの科学 アーネスト・ヘミングウェイにこんな逸話がある。(ただし現在は、ヘミングウェイではないという説が濃厚) 友人たちとレストランにいた彼は、酔った勢いで「自分の筆力をもってすれば小説1冊分の力をたった6語に込められる」と