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美人ランナーを追いかけて

(美人とか美女とか、今やマズイ表現らしいですね)
それはともかく、このところずっと、個性と快不快の関係について考えています。
個性とは、快不快への感度の違いだという記事を以前に書きました
では快不快の感度の違いについて考えると、それは何種類かある脳内物質の分泌の違いではないだろうかという結論に辿り着きつつあります。
つまり脳内物質の分泌の違いが個性なのだと。

さて十数年前に神戸マラソンを走ったときのこと。
三宮の市役所近くがスタートです。まず西へ向かい、国道2号線を走ります。
右手に六甲山系、左手に瀬戸内海を眺めながら、明石海峡大橋を越えたあたりで折り返します。
最後は人工島のポートアイランドがフィニッシュというコースです。

調子よく15キロあたりを走っていると、前を行くランナーの中に、後ろ姿が非常に美しい女性を見つけました。
品性を落としそうになるので容姿の表現は控えますが、とても目の保養になるシェイプをされていました。そして横顔も実に美しいのです。
走るペースもちょうどいい。
当時ボクは、サブ4という中級者レベルの4時間切りを目指していて、その人は順調に1キロを5分半ほどのペースを維持していました。
この人をペースメーカーに付いて行けば、いい感じで4時間を切れそうなのです。
しかも後ろ姿を眺めているだけで、うっとりして苦しさを忘れられそうなのです。

天気も気温もマラソン日和でした。
所々で大会ゲストの有森裕子さん、阪神タイガースのOBや芸人さんたちのハイタッチなどもあり、楽しく軽快に走ることができていました。
そして何と言っても美女の後姿のフォルム。

舞子公園で折り返しをして、雄大な明石海峡大橋に別れを告げると、復路は右手に青い海、左手に緑の山です。

昔何度か遊んだ海水浴場の須磨浦海岸も越えた30キロを過ぎたあたりのこと。
前の方で沿道から身を乗り出し、ある白人男性が叫んでいるのが見えました。
すると、そのペースメーカー美女は急に沿道へ向かって行き、その男性に抱きついたのです。
「 love you!」などが聞こえました。

おそらく恋人、パートナーが応援に来ていてたのでしょう。
それを見てしまってからボクは、、、
彼女に付いて行くことができなくなりました。

ボクのペースはがくんと落ち、彼女からはみるみる離されていきました。
それまでの軽快な足の運びは元に戻りません。

ボクは何だか恋に破れたような気持ちになってしまったのです。
それまでその後ろ姿をずっと慕い続けていたのに。
ボクのことを引っ張ってくれてたんじゃなかったんだ。
ボクイガイニ、オトコガイタンダ。シカモガイコクジンダ。
そんな精神状態になりペースが落ちてしまったのです。
そして最も辛い最後の5キロを迎えたのです。

神戸マラソンは、40キロ手前でポートアイランドへ渡る大きな橋を登らないといけません。周りを船舶が通るので橋は巨大です。なのでかなり長い登りを強いられます。鉄骨とコンクリートの壁だけの長い坂です。
そしてポートアイランドの港湾地区は実に殺風景です。
泥だらけのダンプカー、錆びたフェンス、整備されていない街路樹、伸び放題の雑草などなど。
ゴール近くが殺風景だと、余計につらいフィニッシュになるのです。
昔の大阪マラソンもそうでした。

ボクには最後まで走りきる体力と気力は残されていませんでした。
足は動かず、とぼとぼ歩くしかできませんでした。
結果は4時間30分。
4時間を切るトレーニングはしてきたつもりだったのに無念でした。
仮想の恋人を勝手に仕立て、勝手に恋慕し、勝手に失恋して、滑稽だと思われるでしょう。
心が折れるとは、よく言ったものです。

さて冒頭の脳内物質の話になります。
ボクの脳内物質たちは、どう分泌されていたのでしょう。

まず苦しさを紛らわすためのエンドルフィンが出ていたでしょう。
ランナーズハイと言われる現象は、この脳内麻薬とされています。
苦しさや痛みを軽減するための快楽物質です。

美しい海や山、雄大な明石海峡大橋を見てセロトニンも出ていたでしょう。
苦しさを紛らわしてくれていました。

そして意欲を高める脳内物質である、ドーパミンも出していたはすです。
「4時間を切るんだ!」というモチベーションを維持してくれます。

しかしそのドーパミンの分泌トリガーは、美女を追いかける、異性を射止めるという原始的な意欲にすり替わっていたのです。
それが突然叶わないことを知り、ドーパミン分泌が急に途絶えてしまった。
心が折れるとは、ドーパミン分泌がなくなるということなのでしょう。

さて、つい先日以下の記事を読みました。

動物には、期待外れとなってガッカリしても、それを乗り越えるためのドーパミン放出機能があるということがわかったという記事です。
つまりは「簡単には諦めないぞー」「負けへんでー」システムですね。

たぶんボクのその機能は弱いのかもしれません。
そういや中学のバスケ部の顧問から「お前はガッツがない」とよく言われたっけ。

諦めがいいのも、エネルギーを節約するひとつの戦略だと思っています。
すぐに諦め、エネルギーを残して、別のターゲットを探す。
ボクはそちらの戦略を取る個性なのかも。

あの時はエネルギーが枯渇していたのです。
そもそも4時間切りだけを見据えていたら、変に落ち込むことはなかったんだ。
原始的な意欲にすり替えた戦略が間違っていたんだ。

いや違う。

原始的な意欲に替えられるなら替えたほうがパワーは大きいはずだ。
あれはたまたま不運だったのだ。
いろいろある意欲はどんどん原始的なものに変換してやるのが正解のはずだ。
原始的なものが具体的に何かは言いませんが、まあそういうことです。
懲りない56歳であった。
あ。来週57だ。どうでもいいか。それではまた。

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