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昆布茶が飲めない時にはボディブローを

ボクの英会話の先生だったカナダ人の話です。
彼がある日本人の家で出されたお茶を飲んだところ、それはお茶ではなくてマズいフィッシュスープ( terrible fish soup! )だったので、吹き出してしまったとのことでした。
「なぜお茶と言って、スープを出すのだ」と彼は憤慨していました。
その時はわからなかったのですが、後日気付きました。
それは「昆布茶」だったのでは?
それだったら辻褄が合います。日本人にとって昆布茶はお茶の一種です。しかし冷静に考えたらスープ以外の何物でもありません。

これは20年以上前の話なのですが、つい最近になって、彼は味に驚いて吹いたのではなかったのでは? と思い始めています。
それはカナダ人が言った「マズい(terrible)」という表現が味噌なのです。
スープの話をしている時に慣用句の「味噌」を持ち出してきて申し訳ないですが、いや、「ダシてきて」もややこしいな、とにかく、彼は日本人にとって美味しい昆布茶を、マズいと評したことがポイントなのです。

ここで、ある事実を思い出しました。
海藻を消化できるのは日本人と、一部のアジア人だけだということに。
実は多くの外国人は、海藻を消化できないのです。ワカメや昆布や海苔を栄養として消化する酵素を持っていないのです。

昆布茶とは乾燥させた昆布を粉末にしたものが原料です。
もしかしたらそのカナダ人にとって、昆布は消化できない食材であるから、昆布を美味しいと感じられない。だから昆布茶も美味しいとは感じられず、むしろマズいと感じたのではないか。
そう言えば、おにぎりや寿司に巻いてある海苔を、「紙を食べているようだ」と感じる外国人は少なくないそうです。

消化と言えば腸です。
最近「脳腸相関」という言葉をよく聞くようになりました。
腸は栄養の吸収だけでなく、脳の諸活動へ多くの影響を及ぼしているそうです。
もしかしたら腸は、「無駄なものを寄越すんじゃねえよ」と脳へ司令を出しているのかもしれません。その指令を受け取った脳は、マズく感じさせるように味覚センサーを調整しているとも考えられます。

前回、嫌いな食べ物でも7回食べれば、嫌いではなくなるという記事を書きました。
7回食べて命に別状はなかったから、脳はその食べ物への警戒態勢を解いたのだと説明しました。
あるいはもしかしたら、その味に脳が慣れたという見方の他に、腸が消化できる態勢ができたということかもしれません。
子どもの頃に食べられなかった食べ物も、いつの間にか食べられるようになったのは、腸が変化して消化できるようになったから、受け付けられるようになったとも言えます。
そして食べ物の好き嫌いとは、脳が感じているのではなく、腸が消化できるかできないか、なのかもしれません。

このところずっと腸のことを考えていました。
腸には腸管神経というものが数百万もあって、そのネットワークは第二の脳と呼べるほどだとか、いや第一の脳かもしれないとか、脳内神経伝達物質のほとんどが腸で作られているとか、腸が脳を支配しているという記事が調べるといろいろ出てきます。
しかし何だか納得できません。
腑に落ちないのです。
腸の話をしている時に慣用句の「腑」を持ち出してきて申し訳ないですが、とにかくしっくりこないのです。

先ほどから、腸を主語にした話をしていますが、どうやら「腸が」というより「腸内細菌が」のほうが学術的にも正解らしいのです。
海藻を消化できる酵素を腸が持つ持たないの話をしましたが、正確に言うと、そんな酵素を持つ腸内細菌を腸に宿しているかどうかの違いなのです。

なるほど。
自分の腸に操られているのではなくて、腸内細菌が黒幕だったのだ。
だから、まさしく腑に落ちなかったのだ。
何十兆個もの別の生命体の所業や考えていることなんて、理解できるわけがない。

さて興味深いマウス実験があります。
プールで溺れる危険を顧みずに泳いでエサを取りに行こうとするマウスの腸内細菌を、同じ実験で尻込みしていたマウスの腸に移植してやると、俄然エサを取りに泳ぐようになるのだそうです。
やる気、積極性ですら腸内細菌はコントロールしているようです。

それで思い出しました。
ボクシングで戦意を失わせるダメージはボディブロー、腹部へのパンチです。
頭部へのパンチは意識を朦朧とさせるものですが、戦意を削ぐようには思えません。頭部へのダメージは、戦いたくても身体が思うように制御できなくなるだけで気持ちを折らせることにならないのです。言わば身体へのダメージです。
しかしボディブローは精神へのダメージと言えるでしょう。試合中のラウンド再開時に、コーナーから出て来られなくなってTKO負けになるボクサーは、たいがい前のラウンドできついボディブローを喰らっています。

そう言えば、「ガッツを出せ!」のガッツは、腸=GUTなのですね。
日本風に言えば、胆力です。
腸からやる気が出ているのは間違いないようです。

ずっと脳のことばかり考えていましたが、実は腸も重要であり、さらには黒幕の腸内細菌という別の生物のことも今後は考えなければいけないようです。
なので最近は、腸に良い発酵食品や食物繊維の多い食品をせっせと食べて、腸内細菌に胡麻をすり機嫌をとっている毎日です。
食物繊維の話をしている時に慣用句の「胡麻」を持ち出してきて申し訳ないですが、実際に納豆に胡麻と味噌を混ぜて毎朝食べてます。

「昆布茶が飲めない時にはボディブローを」はタイトルとして異様ですね。ボディブローという名の飲み物があるみたいです。実は腸内細菌に考えさせたのです。GUT-GPTにふさわしいタイトルを聞いたら、こんなのを出力してきました。
ね。細菌どもの考えていることなんて、わかりようがないんだ。それではまた。

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