~リプロダクト・シンセについての考察~

 音楽好き、機材好きの諸兄、諸姉なら昨今のBehringer(以下B社)のシンセサイザー業界への進出をご存じのことだろう。70年代~80年代のMoog、Arp、Sequential、Roland、Korgの定番どころからOctave Cat、WASPなどのマニアックなものまでを「リプロダクト」し、中国で大量生産をして、安価に販売している。

 世論的に見て、好意的な意見と、否定的な意見が半々といったところか。
Moog社が2016年に復刻した伝説の名器、minimoog。実売価格で40万円前後のこのモデルを、販売開始から程なくして生産終了とさせたことも記憶に新しい。このminimoog、B社も「Model D」という製品名で、コンパクトで鍵盤を省いた「リプロダクト」モデルを発表、国内価格3万円台後半で、今でも販売されている。この一件は筆者に、薄利多売のB社に、高級路線のMoog社が敗れたという印象を与えた。

 そもそもオリジナル製品を開発した、または権利を持つメーカーの同意なしに、見た目から機構まで真似したモデルの販売が、「許されるのか?」と思う向きも多いことだろう。なんでも、見た目、機構は「意匠権」という法律で守られているそうであり、この意匠権、25年で消滅するそうである。
 
 好意的にみれば、中古のビンテージ品と呼ばれるものや、現行品でも高額な楽器を、安価にクオリティもまずまずで、「リプロダクト」し、シンセ業界の製品競争を活性化、風穴を開けたB社は称賛されても良いかもしれない。経済的に自由の利かない学生諸氏が、初めて楽器を購入する時の選択肢となるのは間違いない。効率的に集客し、販路を拡げていくのはもちろん悪ではない。

 悪ではないが、やり方にモヤモヤする。「リプロダクト」はガレージメーカーならごく普通に行っていることではある。大きなメーカーでも、オリジナルの販売権利を持っていれば何も問題はないだろう。だが、ガレージメーカーでもない、B社の規模の世界的メーカーが行うのでは訳が違う。倫理的な話だ。このまま大量生産で安価にB社の製品の流通が続けば、オリジナルを開発した既存のメーカーが価格競争に敗れ、淘汰されてしまうのでは?という不安もある。筆者にはBehringerのシンセに、夢を見ることができないでいるのだ。

だ・が・し・か・し、

TB-303とTR-909(開発中)のリプロダクト品でアシッドごっこしたり、EMSのVCS3(開発中)のリプロダクト品でピンク・フロイドごっこしたいな~。な~んて思うこともあるのであったとさ。テヘヘ(๑´ڡ`๑)


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