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【エッセイ】弟がいるって幸せって気付けた

私には2歳下の弟がいる。

兄弟姉妹がいる人は分かると思うが、とにかくケンカしまくった。


小学生、中学生、高校生と、決して仲が良いとは言えない関係だった私たちは、大人になった今、とても良好な関係を築いている気がする。


漁師として農家として生活している弟は、現在独身。
実家で母親と暮らしている。

親子ケンカしながら仲良くやっているようで、姉としては安心だ。


幼い頃、父を亡くした私たち姉弟は、父と遊んだ記憶はほとんどない。
だけれど、寂しいとか悲しいとかは思わなかった。

母の存在はもちろん大きかったし、祖父母も優しかったから家庭環境は良かったとは思ってる。


だけれど弟はグレた。
いわゆるヤンキーになったのだ。

毎日バイクの音を鳴り響かせ、夜中までどんちゃん騒ぎ。
何度も「うるさい」と訴えたが「うるせぇんだよクソババァ」と返された。


当時お互いに思春期だったのもあり、口をきくのさえ嫌だったし、存在していることすら嫌だった。

弟じゃなくて妹ならよかった。むしろ、姉や兄だったらよかったのにと何度思ったかしれない。

ケンカの時にナイフや包丁が出てきた時もあったし、当時、母親は弟を殴って号泣したりしていて、カオスな状況にあった。


でも、今思えば、私には同性の母がいた。

弟には祖父しかいなかった。

身近な同性である父親を失ったのは、私より弟の方がこたえていたのかもしれない、と大人になって気付いたのだ。


思春期の時の悩みや、男性だからこそ感じること。
そういったことは母や姉には相談できなかっただろうし、祖父母にだって言えなかったに決まっている。


母方の叔父は、父親代わり、兄代わりになろうと、いろいろ尽くしてくれた。ゲーム機を買ってくれたのはほぼ叔父だったし、ディズニーランドなどのテーマパークにもたくさん連れて行ってくれた。


けれど、『母方の叔父』それは、『母の弟』であり、やっぱり母の味方なのだ。

どうしたって、弟の悩みよりも姉である母の方を優先してしまう。

そういう意味で、弟はすさんでいったのかもしれない。


私は今になって後悔しているんだ。

もっと弟のためにいろいろできたのに、と。


私には母がいたから、2人でカラオケに行ったりランチに行ったり旅行に行ったりして、同性同士で悩みの共有ができた。

でも、弟にはそれができる相手がいなかったんだって。

私の同級生の男性陣は、みんな優しくていい人たちだった。
私が彼らと遊ぶ時に、弟を一緒に連れて行ったりすればよかった。

もっと優しく接して、自慢の弟だって言っていればよかった。


いじわるな姉だったなと、反省している。


そんな弟と私。
今ではたまに電話すれば1時間は超えるくらい仲良しになっている。


お互いに35歳を過ぎ、仕事や結婚を経て、たくさんの出会いがあり、大人になった。

ケンカすることはほぼないし、お互いのことを大切に思っている。


私が結婚後に家出した時には、私の夫にケンカを売ろうとしていた。

なんだかんだで、叔父そっくりになったのも笑える。


こうして見ると、叔父のことは好きじゃないと言いながら、どこかに父親っぽさを感じているのかもしれない。


姉のこと大好きとは言わないが、私の幸せを願ってくれていることは伝わってくる優しい弟だ。


これから、どんな未来が待っているか分からないけど、弟も幸せでいてほしいと心から願う姉なのである。

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