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株式運用について 良い面と悪い面

わたしはキャリアのなかでいろいろ経験を積んできました。ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティー、M&A、会社の整理、清算、事業計画、資本政策、投資採算、内部統制、社外監査役、社外取締役、資格でいえばニューヨーク州の弁護士です。

どれもその道の専門家には勝てません。あくまでも組み合わせ(ファイナンス+法律、日本+インドネシア、日本語+英語+インドネシア語)と国内外のプロジェクトを通じた経験値の高さで付加価値を出す作戦で何とか生き延びてきました。

その中で一番得意なこと、好きなことは何ですか?と言われると、ファイナンスになります。やはりベンチャーキャピタル歴が20年近くで一番長いので、資金調達や投資が一番得意です。

なので、今日は株式投資について語ってみたいと思います。わたしは株式投資の気を付けなければいけない点を守ることができるなら、みんな株式投資をすべきと思っています。

良い面

1.自由に株式投資できるのは実はあり得ないほどすごいことなんです

わたしは大学を出てすぐ日本アジア投資というベンチャーキャピタルに就職し、毎日電話をかけたり飛び込み営業をしながら、よい会社、経営者を見つけて上場するよう説得し、投資させてほしいとお願いする仕事をしていました。

お金をもらうのではなくお金を出す営業なんてなんて楽なんだと思われた方、意外に大変なんです。よい会社はお金なんて勝手に集まってくるので、いらないんです。
他のベンチャーキャピタルと競争になったり、あとからメインバンクですとやってくる銀行系のVCとか、よりシナジーが明確な事業会社に押し出されて、出資できないなんてことはしょっちゅうです。

お金に色はないので、あなたの会社から出資を受けるとどんないいことがあるの?という世界です。会社の魅力も大事ですが、何より大事なのは個人の人間的な魅力と能力です。誠実さとかこの人好きだなと思ってもらわないといけないです。

VC時代に出資することの大変さを身をもって実感した人間にとって、上場企業には何の営業もせずに投資していいんだ、というのは衝撃的でした。
だって、上場しているんだから決算書を見せていただけないでしょうかとか言う必要はないし、事業計画だって開示されているし、株価や資本政策の交渉は不要、あなたのところではないVCにリードを取ってもらうことになったとか、今回はご遠慮しますとか言われないんです。好きなタイミングで好きなだけ株を買えばいいんです。

しかも上場しているだけあって経営者は魅力的で、未上場であれば間違いなく投資させてほしいとお願いするような会社がごろごろあるんです。
お願いしてもたぶん断られるだろうというようなところばかりです。

わたしはそういう訳で、自社株がドットコムバブルで急騰した時に一部売却して
得た種銭をつかい、投資を始めました。確か300万円に貯金を使い400万円を投じたと思います。
2001年にドットコムバブルがはじけてから投資を開始したものの、2002年にも下がり続け、含み損は200万円を超えましたが気にせず持っていました。

2.株式投資はとても楽しい

株式投資をしている人でうまくいっている人はたいてい楽しいと思ってやっています。結果として儲かっているだけで、短期間に儲けてやろうとか欲を持っていません。

なにが楽しいのか?といえば、人それぞれです。わたしの場合は株主になること自体が楽しいです。
会社から送られてくる半期と通期の業績報告を読み込み、気になるところがあればアニュアルレポートを読みます。
月次の業績を出している会社は月次も見ます。外食産業やサービス業に多いです。客数、売上を対前年度比も入れて出してくれます。これを見ると、コロナの影響やどの程度戻してきているかが実感を持ってわかるし、業態によって差が出ることもわかります。

さらに店に視察に行くのも楽しいです。普通の人は食事に行くのでしょうが、わたしの場合は株主として現場を確認に行くイメージです。家族からは何様のつもりなんだと言われます。
アルバイトの質が落ちているとか、この店の客層はイマイチだ、とかですね。店のアンケートは積極的に書くほうです。株主として会社の改善に貢献したいからです。

ある時は、そのお店の店員のサービスが素晴らしく、料理もよかったので、褒めたつもりでアンケートに「絶対に株を買います」と書いたら、家族からは「全く通じていない思うよ」と言われました。サンマルクです。

あとは株主優待も楽しいです。株主平等の観点からは批判の多い制度ですが、株主と長期にわたる関係を築き、安定的な株主になってもらいかつファンになってもらうのに素晴らしい制度と思っています。
小口の長期保有株主を確保したいので、彼らを優遇しているだけですと言えばいいんじゃないでしょうか。海外の機関投資家からは嫌われるので、難しいですね。オリックスもそれで止めてしまいました。

わたしが最近株式投資に目覚めつつあるクラスメイトに、日本の株主優待制度を説明して、具体的にどんなものをもらえるのか写真見せたら、羨ましがります。インドネシアでもぜひやって欲しい制度だというのです。
ただでものをもらうのが大好きなインドネシア人の嗜好に合っていると思います。

3.資産形成に役立つ

マーケットは勝者と敗者がいるゼロサムゲームになるのが普通で、株式市場も日々の売買だけ見ればゼロサムです。
ところが、長期で見ると様相が変わり、全員勝つゲームに変わります。会社が成長して株価があがるからです。

しかも素人がプロに勝てる可能性のある数少ないゲームでもあります。
短期売買だと無理です。でも何年間も持ち続けることができれば、勝てる可能性が高まります。
例えば、プロのファンドマネージャが長期に渡りインデックス(株式指数)に勝つ例は稀と言われています。彼らの給料や手数料、売買を繰り返せば課税もあるし、配当を出せば複利効果も消えます。彼らは個人株主より多くの制約を受けるのです。

日本がバブル崩壊で低迷するようなことはありますし、定期的にバブル崩壊も起きます。なので大きくマイナスになる年はあり、含み損を抱えることもありますが、10年以上のスパンで見れば問題ありません。

若い時から株式で運用すれば、銀行に入れておくよりも増える可能性が高いです。

悪い面

1.勉強が必要

何事もそうですが、勉強する人の方が勉強しない人よりも勝ちます。ある意味フェアです。
学習するのが面倒な人は手を出すのをやめたほうがよいでしょう。

うちの家族の場合、わたしが財務分析をしたり事業見通しの分析をできるので勉強せずにできていますが、どれくらい儲かっているか、儲かる構造はどうなっているのかは決算書や開示資料から読み解けないといけないです。

それができない人は、インデックスに連動するETF(上場投資信託)を買ってください。面白みに欠けますが、資産形成にはなります。

2.規律が必要

これはプロの世界ほどそうなのですが、個人の世界でも当てはまります。
人間は心が揺れ動き、不安になったり強気になったり判断がブレます。株式投資には昔から多くの格言があり、この難しさを表したものが多いです。

わたしが思う一番規律を必要とするのは売却です。株は投資する時より売却する時の方が数倍難しい。仕事でM&Aをやる時はバイサイドよりセルサイドの方が好きなんですが、個人の売買になると逆です。
人は誰しも底値で買い、天井で売りたいと思います。ところが実に多くの人が逆のことをしてしまうのです。株式投資で損をして二度とやりたくないという人は大体このパターンです。

「まだはもうなり、もうはまだなり」、「売り買いは腹八分」はこの考えを戒めたものです。「頭と尻尾はくれてやれ」もあります。
失敗する人はまだ上がると思い買い、まだ下がると思って売ります。株価が上がると上がり続ける、下がると下がり続けると思ってしまうのです。この気持ちはとてもよくわかります。

この対策としてよくあるのが、3パーセント下がったら売るとか、20%下がったら売るというルールを決めて厳格に守る、「見切り千両」タイプか、わたしのように「一度買ったら売らない」と決めるかどちらかです。
わたしは株は売るまで損ではないとよく言っています。含み損だけど売るまでは顕在化しないし、持っていればいつかは上がることが多いからです。もちろん倒産したり上場廃止になることもありますので、その時は損が顕在化します。

あとは、一度投資したら株価は見ないことです。売った後も見ない。投資したらまだ下がっていてもっと安く買えたとか、売ったあとまだ上がってもっと儲けられたとか考え嫌な気分になるだけです。

ウォーレンバフェットは投資した直後に市場が停止され5年閉まったままでも良いと思った先に投資していると言っていました。買う前に徹底的に調べて、買ったら放置、これが一番勝つ確率を高めます。

3.時間がかかる

株のことをよく知らない人ほどギャンブルのように短期間で上がる下がるで儲けるものと思っていますが、株は短期で儲けようと思ってやるものではないというのがわたしの意見です。
デイトレーダーはいますし、儲けている人もたくさんいます。その人たちは、株式運用の最も良い面である長期になればなるほど勝ちやすく、安定して資産形成できる良さを使えていません。

手っ取り早く儲けようとして儲けられるほど甘い世界ではありません。ゼロサムゲームなので勝者と敗者がいます。

どれくらいの時間軸で見るべきかというと、10年から20年です。20年で4倍になればいいなくらいの気持ちで投資をするのが1番です。

それとこれもイメージですが、20代、30代で安定した仕事を持っている人は資産の8割以上を株式にしてしまって問題ないです。とにかく金を貯めて株を買い続ける。
40代、50代は株を買い続けるだけでなく値動きが少ない配当の多い株やREITにしたり株の比率は下げていきます。
60代になれば、資産総額にもよりますが、半分くらいはキャッシュか値動きが少ない金融商品に変えておくのがいいと思っています。大恐慌が起きてその後10年間回復しない可能性だってあるわけですから。年を取ればとるほど、時間を味方につけることができず、株式運用が不利になっていきます。

退職金を株に突っ込むなんてありえない行為とわたしは思います。退職するまでに十分な株式運用資産が積み上がっていなければ、ジタバタせずに諦めて現金で持っておくほうが良いでしょう。

守ってほしいこと

1.借金をしない

金を借りてまでやらない。無くなっても生活に支障はないレベルで運用してください。ゼロになることはありませんが、目減りすることは頻繁にあります。ある程度運用期間が長くなると、含み益がたまり、多少の値下げは余裕で吸収できるようになります。
空売りやオプション取引にも手を出さない方がいいです。
株式投資で成功したウォーレンバフェット、ピーターリンチのようにやってください。

2.証券会社や他人のススメル株を売買しない

今は違うかもしれませんが、昔はひどいイメージでした。
人の言うことを鵜呑みにせず、自分で調べて納得して投資をすること。これができない人は投資をしないでください。多分失敗します。
ばばを掴まされます。

3.規律を守る

自分で決めたルールは絶対に守ること。
家族にオープンにして、家族にコミットするのも良いと思います。








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