合宿'22 発散と集中(8日目の夕方)

毎朝4時半に起きて食事をとると、瞑想する。
そんなに長くない。
15分くらいだ。
だが、この効果は大きい。ドーパミンを出すという意味だけではない。
身体の動きをとめ、呼吸することだけを考える時間は、その後、集中する「土台」をつくる。
そして、瞑想が終わるとすぐに、小さな声で今日の方向性を私から話す。
このとき静寂に慣れているから、動きっぱなしの子も少しくらいは耳を傾けてくれる。だから、この時間に一番言いたいことを言えるようにしている。


10日組I君。英語が全く理解できてなかったそうだが、
この合宿期間に中1・2復習を完了し、英文法を大方把握した後、英語長文をSFC生と読解。
都立過去問にも物おじしないで取り掛かり始めている。
彼は毎月のように古民家に来ているが、この合宿期間中、食事の配膳から、掃除、荷物の整理、布団の出し入れなど
率先して号令を出し、他の小中学生を裏で統率している。頼もしく成長しているのを感じているが、おそらく
これを言えば、親御さんは驚くに違いない。
それほど合宿での変化は歴然としている。

小6の「村長」は、漢字練習をしつこく繰り返す。ふつうニガテな教科なら嫌になって放り出したくなることもある。
現実逃避で山をながめて時間が過ぎていくこともあるが、彼はそうはならない。
粛々と忍耐強く、漢字に立ち向かい続けている。
もちろん、まだ小学生だから、周囲が騒々しくなれば、そちらに意識がいって学習していることを忘れがちだ。
もう一度そこでノらせるのが私の仕事。
一文字一文字意味を調べイメージするがために、数はそれほどたくさんこなせないかもしれないが、
じっくり疲れずに考える癖がついているのはいいことだと思って、観察している。
あとはその精度を上げることが今後の課題だ。何度も繰り返し練習した漢字は、速く正確に書けるようにしたい。
反復をきらうわけではないので、繰り返せば確実に成長している。

中3N君は、小4がいなくなってから同い年のH君をからかいはじめ、休み時間中、古民家にあった福島の地図をとりあって痴話げんかしている。
中学生らしくどうでもいい下ネタを言い、罵倒し、ついには畳の上でプロレスがはじまった。
恥ずかしがりやのためにみんなの前ではからかっているが、二人きりのときは意外と真剣な話をしているのを知っている。
福島の地図は、H君は常磐線の駅名を覚えたいから読みたい。
N君は、これまた古民家にあった開沼博の福島の書籍を読んで、第一原発とその周囲の街を地図で確認しながら、原発について学びたいらしかった。

N君は英語数学の課題をひととおり終えたら、中3分野の予習をはじめた。
2次関数と直線の融合問題、相似な三角形と進んでいる。問題レベルが上がり、苦戦しているせいで、H君をからかって遊んでいるようにも見える。

一方、H君も学校から出題された余剰課題に苦戦している。「提出しないと進級できない!」ということで本人も立ち向かっているが、
詰まらない課題に取り組むことはおもろ人間にとって苦痛でしかない。
たまには福島県の地図を見て、大好きな線路を追いかけたいという気持ちもわかる気がする。(彼には原武史を勧めたい)
端末を使うと、余計なことをするのはわかっているので、古民家の電子辞書を貸してあげると、気乗りしない英語をやりはじめた。
こちらからすると二人は意味のなく罵倒しあっているが、散々汚い言葉を言い合うと、すっきりするのか、学習には立ち向かっている。
発散と集中。
テストステロン多めの二人は大人になったらどれほどエネルギッシュになるのだろうか。

10日から参加した高校生Tは、古民家の会報を率先して執筆している作家兼編集者。
いつもと同じように、奥の6畳間で執筆しつづける。
だが、今回少しちがうのは、遊びで書いていた小説から、作品を一本完成させようとしている。
手を進めては、机の周りを歩き、また書き足すを繰り返す。4,5時間これを繰り返している。
彼の仕事がこういうものになるだろうということを疑うものはいないだろう。
自然と何時間も続けられることは仕事にした方がいい。
これを継続して、どのような作品ができるのかを楽しみに見守っている。

3年連続参加のT君は海外留学が決定し、おそらく最後の合宿になるだろう。
そこで彼は向こうへ行っても力を入れるつもりの数学を予習するために、この合宿の時間を利用している。
中2ではあるが、ILTS6.0とって、grade9から入学できるらしいから、語学レベルは現地の子供たちと遜色ないのだろう。
留学先の課題を確認すると、数学レベルは日本の義務教育とほぼ同じに設定してあるようなので、
因数分解・平方根から二次方程式→二次関数へと、非常に巧妙につながっていることを力説し、3日で、二次関数まで突き進むことを約束させた。
全体をつかませた後は、一気に集中するだけ。これは彼の得意分野なので、完全理解とはいえないまでも、中3数学を一気に串刺しして掌握してくれるにちがいない。

今回はじめて参加している中2のT君は、おとなしい見た目とは裏腹に意外と考えていることが独特で、音楽の教養もあり、まだ見つけきれてない「才能」を隠し持っている感じがする。この期間に彼の素質を活かす方法を見つけたい。
彼は、数学に苦しんでいるようだが、根本的な原因は、学校教育をうのみにするがあまりに、ゆっくり学習することに慣れているように見える。
計算問題を計算式を書かずにイメージして難を逃れようとするが、イメージ力の育成が追い付いていないのと、教科書を読み切れないことが主な原因で、一問ずつに時間をかけすぎているようにみえる。
これはまさにサイコロ暗算と音読で解決へ導く案件であるから、早朝から、音読サイコロを余念なくおこなっている。
本人に私が観察してわかったことを伝え、一緒に直すことに協力してもらうことに合意してもらった。だが、残り2日。どこまで改善に導けるかは、私と彼の協働次第である。

後半戦の後半がはじまる。ここまで続けてきたことをどうやって定着させて帰るか、そろそろ帰宅後の過ごし方も考慮して行動してもらわなければならない。

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