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社外取締役の仕事

2012年に某欧州企業の社外取締役に就任しましたが、就任するプロセス、仕事内容、外部からの評価方法、などなど、今後の日本での社外取締役の制度に参考になるものでした。

日本では2015年にコーポレートガバナンスコードが策定され、2020年12月5日の日経新聞でも記事になっているように、さらに欧米型のコーポレートガバナンスにしようという流れがあります。
その欧米型のコーポレートガバナンスのプラクティスはどのようなものでしょうか。

私が就任した某企業は、日本の会社法でいう指名委員会等設置会社でした。取締役会の他に、監査委員会、指名委員会、リスク委員会、などがあり、それぞれの長は社外取締役が担っていました。

まず、社外取締役に就任するためには、必要書類を提出します。経歴書だけでなく、無犯罪証明書という公的な書類も必要になります。海外赴任する際に就労ビザを取得する時に必要になる国がありますが、日本では各県警本部に依頼します。ただ、任意の理由では発行はしてくれません。それを必要とする機関からの依頼が必要です。ビザの場合には、その国の在日大使館から依頼書を出してもらい、県警本部に出向く必要があります。この無犯罪証明書は開封したら無効扱いになります。

企業の所在国によっては、過去5年間住んだ国の無犯罪証明書の提出を求めるところもあります。例えば、2年前に米国にいたらなら、日本の無犯罪証明書と米国の無犯罪証明書が必要になります。

私が就任した企業の国では、そこまで過去を遡りませんでしたが、当時住んでいた欧州の国での無犯罪を証明する書類を求められました。その国では警察機関ではなく、無犯罪であることを公証人の前で宣言する、という方式でした。国によって随分と違うものです。

必要書類をそろえて企業に提出し、そこから監督当局に申請します。これも国、業態によりますが、私の就任した企業では、監督当局の認可が必要でした。監督当局によっては、最低でも3年間とか4年間とか、在任する期間のコミットを求めるところがあります。

監督当局との折衝は、取締役会の事務局が行いますが、場合によっては取締役会議長自身が監督当局と交渉することもあります。

こうして、監督当局の了解が得られると、指名委員会での推挙のプロセスを経て、取締役会で了承し、株主総会で就任の承認を得ます。これは日本でも同じです。

就任すると、1日かけてその会社のことについてレクチャーを受けます。これは義務でしたから、朝から夜まで入れ替わり立ち替わり担当者がレクチャーしてくれます。Board Trainingです。

取締役に就任すると同時に、どの委員会のメンバーになるか取締役会の議長が決めます。企業の経営陣は関わりません。私はAudit committee、監査役会のメンバーになりました。さらに、この企業が本社を置く国では、監査役会のメンバーの名前は監督当局に届け出る必要があり、私の名前・経歴は登録されることになりました。

さて、こうして取締役に就任して始めての取締役会に出席しました。Board Meetingです。これについては、次回に書きます。

写真は取締役会が開催されたフランスにあるホテルからのレマン湖。

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