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【後編】DXプロジェクトはなぜ失敗するのか?

マネジメントベースでのDXプロジェクト失敗要因

組織を巻き込んだ変革に必要なのは何かということで、リーダーシップ理論で有名なジョンPコッターを引き合いに出そう。

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変革には8つのプロセスが必要と定義されている。この変革プロセスは皆さんもすんなり受け入れられる内容だろう。
まずは
1.危機意識を高める
2.変革のためのチームを組成する
3.ビジョンと戦略を明確に打ち出し
4.周知徹底を図る
5.変革チームへの大胆な権限以上によって現場を巻き込み
6.7.成功体験を積み上げさせて
8.それをモデルケースに企業文化としていく。
という内容だ。至極当たり前のことを言っているようで、これがなかなかできないのが現実だ。

これはまさしく組織変革のための必要プロセスだが、経営層、変革チーム、現場チームそれぞれが重要な役割をきちんとこなすことが求められていて、どこが欠けても変革は実現しない。
危機感の醸成やビジョンの明示のプロセスでは、当然だが、何よりも経営層のコミットメントが欠かせない。なぜなら、そうしないと現場が本気にならないからだ。

ところが、「なんかDX流行っているらしいぞ、じゃあDX推進室作って施策を考えさせるか」というような企業が結構多い。もちろん調査段階だろうが、これでは十分な危機感の醸成も変革チームであるDX推進室への権限以上も全く足りてない。
経営層のコミットメントが希薄であれば、現場は本気にならないし、協力もおざなりになる。そして、結果が出なくてプロジェクト中止となると更なる悪循環を生む。現場はまたか…とげんなりムードになる。
この状態に陥るとDXに限らずどんなプロジェクトもうまくいかなくなり、経営変革のスピードどころか変革しない組織が出来上がる。
DXプロジェクト、特にビジネスモデル変革型のプロジェクトでは、どうしたって現場に軋轢が生まれる。基本的にこれまでのやり方を変えなければいけないということに現場は徹底的に反発する。
それを変えるプロジェクトを進めるにはきちんとしたチェンジマネジメントという組織変革手法に則った必要がある。

ストラテジーベースでのDXプロジェクトの失敗要因

さて続いて、ストラテジーベースでのDXプロジェクトの失敗要因について触れていこう。DXプロジェクトの目的にも方向性がある。

アンゾフの成長マトリックスで説明すると

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〇自社の自社の自社の既存商品を使って既存市場のシェアを拡大するのか
〇既存商品を新たな市場に展開するのか
〇既存の市場に新規商品で売り上げ規模拡大を狙うのか
〇そして、全く新しい商品を使って新規市場を狙うのか
大きく分けると、この4つの成長のベクトルがある。
当然方向性が違えば、それぞれのDXプロジェクトにおいて成功するためのアプローチは異なってくる。

弊社が関わってきたDXプロジェクトの事例で言うと、このマトリックスから導き出されるプロジェクトの方向性は3つのタイプに分類される。

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既存の商品を使って市場のシェアを拡大するか、新規市場を拡大する方向性をタイプ1としよう。既存の市場に新規商品を提供していく方向性をタイプ2、新規市場に新規商品を当てていく方向性をタイプ3とする。

タイプ1をわかりやすい例で言えば、マンションデベロッパーがAI分析やスマートハウス技術などを武器に差別化をはかり、顧客を拡大していくようなプロジェクトを指す。
タイプ2は、これまでマンションばかりやってきたけど、戸建て事業も開始していくだとか、専有卸し特化の事業を立ち上げるといった方向性だ。
タイプ3は全くの新規事業といった感じではなく、タイプ2からタイプ3のような事例である。
例えば、マンションデベロッパーがクラウドファンディング事業を始めるのはタイプ2だ。そのクラウドファンディングシステム自体をBtoBで提供していくようになるとタイプ3になる。

顧客のwants/needs分析

長くなってしまうので、今回はタイプ1についてのみ説明していくと、
タイプ1の場合、既存の商品がドメインなので、メイン商材であるマンションというものの本質的な価値自体に大きな変革はおこっていない。
例えばマンションがスマートハウス化したところで、それは単に利便性が高まっただけであり、洗浄機が標準装備されていますということと本質的な違いはない。

では、この場合のプロジェクトにはどのようなデジタルトランスフォーメーションが考えられるだろうか?それは徹底的な顧客体験の向上に他ならない。
AI査定によって顧客が何を得られるか、スマートロックによって顧客が何を得られるか、それを追求して訴求していくことがデジタル技術によるトランスフォーメーションとなる。
であれば、このタイプ1のDXプロジェクトにおいては何よりもマーケティングやブランディング施策に力点をおいたプロジェクトにならなければならないのだ。
マーケティングやブランディング施策なしで顧客体験の向上は企業の経営施策としてあり得ないということはお分かりいただけるだろう。
ところが、“AI査定をアプリに組み込んだ”、“スマートハウス化して見守りサービスを開始した”といったプレスリリースのみで終わってしまっているケースも少なくない。そうすると思うような成果に繋がらなかったという結果になってしまう。

このような新しい顧客体験を提供する方向性のDXプロジェクトでは、顧客のwantsを明らかにする必要がある。

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needsとwantsの違いは、needsはモヤモヤと不満な状態であり、wantsは具体的にそれが欲しいという状態のことだ。
基本的に顧客のneedsは顧客自身にもわかっていない。何が自分に足りないのかを考えるように人間の思考回路はできていないからだ。もちろん企業側にも顧客のneedsはわからない。だからこそ目に見えるwantsをあれやこれやと模索する必要がある。

わかりやすく言えば、スマホが登場した2007年ごろは、皆ガラケーを使っていて、それに満足していた。フォードがT型フォードを出して自動車産業を席巻した頃は、みんな馬車に乗っていて、自動車は金持ちが乗るものだと諦めて、それに特段不便を感じていなかった。
これが顧客のneedsがwantsとして顕在化していない状態である。
携帯電話ではなく、持ち運べる携帯型のPCが電話もできるという体験、農民でも金持ちみたいに車に乗ることができるという体験…
こうした潜在意識への働きかけをマスマーケティングを通じて実践したところに、スマホやT型フォードの成功の要素があった。

話を戻すと、だからこそタイプ1のDXプロジェクトの場合は、企画の段階からマーケティング企画が必要なのだ。そうしないとプロジェクトの成功はおぼつかないことになる。
顧客のwants/needs分析をした上で、バリュープロポジションを切って、カスタマージャーニーマップに乗っ取ってPDCAを回していくプロセスが必須だ。これ抜きにDXプロジェクトは成功しない。

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今回説明したのはあくまでタイプ1のDXプロジェクトのケースで、タイプ2やタイプ3においてもそれぞれ力点を置くポイントは異なる。そうしたことをきちんと押さえてプロジェクトを進めないと当然うまくいかない。

さて、前編・後編とだいぶボリュームのある内容となったが、
DXプロジェクトは、DXというバズワードに踊らされることなく、プロジェクトの方向性を見定めた上でストラテジー面、マネジメント面をきちんと押さえ進めていくことが要となる。

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