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2021年公開予定!不動産共通IDの全貌

不動産テック協会とジオロニア社でプレスリリースを出した不動産共通ID、その仕様と効果、狙いと特徴を公開する。不動産共通IDにより不動産業界の非効率的な業務をいかに解消できるか。他の不動産IDへの取り組みや公的コード体系との違いは何か?不動産テック協会代表理事が全て詳しく解説する。


不動産I Dの前知識①

日本の不動産データは一元管理されていない。マスターデータがないということだ。
マスターデータとは物件ごとに一意のI Dが振ってあって、そのI Dを知っていればその物件の情報をどこからでも入手できるというものである。レイ ンズという業界標準データベースができたのが1985年で、法律によって仲介物件のデータは登録が義務付けられているが、これは不動産のマスターデータではない。レインズはあくまでも募集リストにすぎず、つまりSuumoやHome’sと同様である。

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SuumoやHome’s見ると、同じ物件が複数の不動産仲介会社から登録されていて、会社ごとに物件名の書き方であったり、詳細情報が少々違うことがよくある。
不動産は住所があり、建築申請して、登記をして取引して、管理をするが、マスターデータが無い為、全てのステップで一から物件名、住所、構造、 階高、総戸数、 建築会社、管理会社などの情報をそれぞれが調べて、それぞれが個別に入力して独自に会社ごとに管理している。
これは不動産業界全体の効率性という意味においては無駄以外の何者でもない。なぜなら、建物名 、住所、構造、階高、総個数、土地面積、占有面積 、施主 、公図、建築時の建築制限情報などは一回建築されたら、ほぼ99%変わらない情報であるからだ。それをそれぞれの会社がそれぞれ膨大な時間をかけて調べて自社のデータに登録している。
そうであれば、横断的にデータ連携すればいいのではないかという話になるが、仮に協力関係にある会社同士でも、簡単にはできない。なぜなら、それ ぞれが独自のI Dで管理している為、そもそもI Dでの紐付けができないし、行政によって住所の表記が違うことがある為、物件名と住所で名寄せをするのが大変だからだ。

よって、不動産会社が新しいシステム、賃貸管理システムやホームページを作ろうとした場合に、一旦他の不動産データベースと連携をしようと思うと、それなりの開発費をかけて、まず名寄せをしなければならない。本来であれば、国がやるべき仕事だが、国は全くそうした動きを取らない。
そもそも建物は建築申請されている為、そこで一元管理すれば済む話だが、建築確認手続きは、違法建築かどうかを検査するところであると割り切っている関係で、それ以外のデータは入手しない。

不動産I Dの前知識②

では、法務局で登記するのであれば、そこで一元管理するという話もあるが、そもそも全部の不動産が登記されているわけではない。未登記不動産というのもあり、その最たる原因が相続だが、所有者が何十年も前に亡くなっていて、今の所有者が誰かを特定できていないことがある。
2016年の有識者研究会での推計では、所有者不明の土地は全国で約410万ヘ クタールにも上り、2040年には北海道本島に匹敵する約720万ヘクタールに広がるとも言われている。
せめて登記されている物件だけでも管理しようと不動産番号が振られるようになったのが2005年の不動産登記法の改正だったが、これはI Dではなく単なる整理番号である。土地と建物がばらばらになって番号が振られている為、不動産の変化の歴が追えない仕様である。戸建てがあったところに新しくアパートが建つと別のI Dになり、そもそも住所でなく、地番で管理されている為、住所による名寄せができない。
法務省は「不動産番号はオンライ ン手続きに対応するためのもので、不動産I Dをそもそも想定していないし、国土交通省からもそういう話は出てない。」と開き直っている。

では、住所コードはどうなのだろう。実は住所コードは、総務省であったり国土地理協会であったり国勢調査用のものであったり、複数存在している。そもそも、みんな自社のデータベースに住所コードを登録しているわけではないし、「この住所コードを統一コードに決めたので、みんな必ず自社システムに住所コード入れてください。」と発信したとしても同じ住所に複数の建物が立っていたり、複数の住所に一つの建物が建っていたりする為、物件を特定できない事からこれは不動産I Dとしては使えない。

先程も言った通り、不動産I Dとはそれぞれの会社、販売会社や仲介会社や管理会社が自社のシステムに独自なルールで割り振って管理している為、建物名と住所以外に名寄せの方法がないという点が問題になる。
実は、全国の不動産情報を一元的に持っている会社は存在する。地図システムのZenrinさんは住所や表札のデータ持っており、N T Tも電話線や基地局の 整備で詳細な地図住所システムを保有している。それらがデータを解放してくれればいいのだが、そのデータを売ってビジネスにしている為、オープンデータとして活用、再配布などはできない状況なのだ。
だからこそ、オープンデータの不動産共通I Dが必要とされている。みんながみんな無駄な仕事をしているし、データの連携ができない為、不動産会社や不動産テック会社、管理会社、それぞれが大金を使ってシステム化をしているのが今なのだ。

不動産共通I Dの中身

ここからが本題である。不動産共通I Dの中身は、大体の住所と建物名がわかることにより、同じI Dが返ってくる設計をしている。少なくとも、「あ、これ同じ物件のことだな。」とわかるレベルでの入力がなされていれば、同じI Dが返ってくる為、データ連携が容易になる。

今はマンションとアパートのみだが、99.9%の精度でI Dが出せるようになるところまでは来ている為、2021年中にはオープンデータとして公開できるよう開発を進めている。
戸建てや土地の情報については緯度経度で特定できるように開発中の為、次フェーズとなるが、対応予定だ。

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不動産テック協会の不動産共通I Dができると何ができるかというのは、お分かりいただけたと思う。それぞれの会社がそれぞれの入力ルールで独自に入力している物件名と住所を使って、同じI Dに紐付けることができるようになる為、不動産会社や管理会社や不動産テック会社は名寄せシステムを作らなくても良くなることを意味している。
不動産会社が不動産テックの会社のサービスを自社のシステムに組み込みたいという話になったときに、これまでは開発が必要だった為、開発費が必要となっていた。
それが不動産共通I Dがあり、社内のデータベースにI Dが振られていたら、開発は必要なくなる。建物名と住所を叩けば不動産テック協会のA P Iで住所が出る為、査定A P Iを提供しているテック会社は同じI Dを使っていれば自動的にデータを吐き出すことができるようになるということだ。

不動産テック協会の目指している世界観

不動産テック協会の目指している世界観は、それぞれの会社が持っている不動産データを集約したい為、全員このI Dを使って協会にデータくださいといった話ではない。
建物名と住所でI Dが採番される為、それを使って自由にデータ連携してもらうのが作っているI Dだ。ただ不動産共通I Dを使ったら余計な数千万の開発費が掛からなくなるという話である。
不動産投資家のブログで「不動産テック協会なるものの不動産I Dは絶対に浸透しないと断言できる」というコメントがあった。その理由が情報の非対称性で金儲けしているのが不動産業界で、それを解消しようとしても上手くいかないという内容だった。
しかし、不動産業界の「非対称性」 ではなくて「非効率性」を解消しようとしている取り組みの為、認識の前提がそもそも間違っている。それに、「不動産会社の悪習を打ち破ろう」とは謳っていない為、より効率的に業務改善がデータ管理ができるようにという、むしろボランティアの取り組みである。
国がやらないから我々が手弁当で不動産共通I Dをやっている為、これは不動産業界にとって意味のあることだと理解している。

A D R Eの不動産I Dとの違い

今ベータ版が作られて社団法人を作られようとしているLifullさんとZenrinさん主導のA D R Eの不動産I Dとの違いについて解説する。
Zenrinさんは全国の不動産の住所と表札データをデータベース化している。それがマンションなのかアパートなのか戸建てなのかもわかる。ただその先の情報がない為、その不動産の詳細情報を持っているのがLifullさんで、Home’sに掲載されたことのある不動産であれば、ある程度基本的な情報を持っている。建物種別、構造、間取り、広さなどを使って不動産IDを作って不動産情報を一元管理していこうというのが一般社団法人不動産情報共有推進協議会発足の経緯になっている。
Lifullさんの不動産情報のカバー率は全国の不動産の4割くらいと聞いている。やろうとしている方向性は不動産テック協会と同じに見えるが、前提としてZenrinさんのデータが元なので、そのデータを現在販売しているZenrinさんとしては当然無償では提供できない。その為、ベータ版は無料だが、正式なA P Iは有料の従量課金性になる。ベータ版のうちにデータ登録を、という話だが、仮にデータが集まらなかったとしてもlifullさんだけで4割はカバーしている為、有料でも不動産の基本情報が自動的に欲しいという企業にとっては、それはそれで使えるものになるだろう。
よって、不動産情報共有推進協議会の方は不動産情報の一元管理が目的であり、不動産テック協会の不動産共通I Dの方は不動産情報は各企業それぞれが持ってもらい、共通I Dで互いにデータ連携がしやすくするというのが目的である。やろうとしていることは違う為、同じことを別々の組織がやろうとするものではない。

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ただ、不動産会社側からしたら、二つもI Dがあったらややこしくてわかりにくい為、連携をしていこうという話になっている。不動産テック協会と不動産情報共有推進協議会のI D連携ができれば、より情報は取得しやすくなる為、連携の話は引き続き進めていく。

最後に

今回は不動産テック協会が作っている不動産共通I Dの狙いと仕組みについて解説した。互いが連携できる環境を構築することで、不動産の分析が容易になったり、不動産業務の効率化がより加速したりということを狙っての取り組みとご理解いただけたと思う。

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