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ソフトバンクビジョンファンド復活?不動産テック大手続々IPOへ

コロナ禍でも過熱感のあるアメリカ株式市場。出資先のDoordashやOpendoorなどが続々上々し、1兆円を超える含み益を得たソフトバンクビジョンファンドの最新の動向を解説する。


Airbnbの大型IPOに湧き立つアメリカ株式市場

米国IPOの注目銘柄として、話題になったのがAirbnbだ。
Airbnbは12/10にナスダックに上場し、買いが殺到して、一時時価総額10兆円となった。
元々12月初旬に350億ドルの評価額を目指すと発表されていたものが、Airbnbの評価額は1000億ドルを超え、驚くほど高い評価額となった。

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(出典: https://www.inman.com/2020/05/05/airbnb-to-layoff-almost-1900-people-amid-coronavirus-struggles/ )

Airbnbは今回のパンデミックによって大打撃を受けた会社の一つだ。
2020年3月にIPOする予定だったが、パンデミックによって、上場計画の延期を余儀なくされ、5月には1900人の従業員をレイオフしたと報じられた。
ゲストの70%がAirbnb物件に宿泊するのを恐れている調査レポートなども出されて、まさに崖っぷちに立たされたのが昨年6月だった。
Airbnbは3月4月の大混乱時の予約に全額払い戻しを約束したが、結局全額払い戻しできず、25%以下の支払いしか受けられなかったとホストから集団訴訟もされている。そんな中で再度上場計画を進めると発表したのが8月だった。
最悪の状況で今回のIPOに繋がったが、蓋を開けてみると想像以上に高い時価総額になりニュースなどで取り上げられている。

元々、分析会社のValueChampionの12/1のレポートで、Airbnbの評価額が350億ドルは過小評価されているとの指摘もあった。
Airbnbには既にブランドが確立されている事が最も大きな理由で、Googleという単語が「検索」の代名詞になったと同様に、バケーションレンタルとホームステイの同義語となったのがAirbnbだと評している。
宿泊業界は歴史的にGoogleに頼っていて、Googleの検索順位をいかに上げるかが宿泊サービス業界のミッションだが、Airbnbはその競争に参加すること必要がないのだ。
こうしたブランド力だけではなく、今回のパンデミックによって他社を引き剥がすことに成功したとも指摘されていて、尚且つ、セールスとマーケティングのコストを大幅に削減したことで収益性を上げることができている。

ソフトバンクビジョンファンド銘柄も続々IPO

盛り上がるアメリカ株式市場の中で、Airbnbと並んで注目が集まっているのがソフトバンクビジョン銘柄のIPOだ。
ソフトバンクビジョンファンド銘柄であるOpendoorはSPAC形式での上場となっている。

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(出典:
https://corporatefinanceinstitute.com/resources/knowledge/strategy/special-purpse-acquisition-company-spac/)

SPACはspecial purpose acquisition company、つまり特別目的買収会社のことである。
まずは入れ物であるSPACを先に上場させ、そこで集めたお金も使って、ユニコーン企業などをM&Aして実態のある会社にする。
そこで、OpendoorはSPAC銘柄である、Social Capital Heedosophia Holdings Corp IIにM&Aされて上場することになっている。

そうなると気になるのがソフトバンクビジョンファンドだ。
昨年のWeworkのIPO失敗によって株価急落や巨額の赤字計上を余儀なくされたソフトバンクだったが、ここにきてソフトバンクビジョンファンドの投資先の大型IPOが続出すると注目されている。

ソフトバンクビジョンファンドはOpendoorの株を約7300万株所有していて、今回のIPOによって、13.8%から15%の株式を保有する計算になる。
ソフトバンクビジョンファンドの4億ドルの投資が、今回で19.7億ドルの価値になる為、投資としては大成功だ。

Uber Eatsのライバル企業 Doordash

ソフトバンク銘柄としては、他にも料理宅配大手のDoordashのIPOがある。Doordashはカリフォルニアのサンフランシスコ本社のオンデマンドフードデリバリーサービスの会社だ。

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(出典: https://www.doordash.com/en-US )

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(出典: https://secondmeasure.com/datapoints/food-delivery-services-grubhub-uber-eats-doordash-postmates/ )

2020年1月時点で、売り上げベースで見ると、Doordashが38%のシェア、Grubhubが31%、UberEatsが20%のシェアとなっている。Uber Eatsよりもシェアが大きいことになる。
コロナ禍の巣篭もり需要で好業績の背景もあり、上場前の市場シェアは50%となっていて、株価が急騰したが、公開価格の102ドルが、一時189.51ドルまで上がり、時価総額が約600億ドルに達した。
その結果Doordashの24.9%の株を保有して、筆頭株主であるソフトバンクビジョンファンドは推定110億ドルの含み益を生むことになったのだ。

ソフトバンクビジョンファンドでは、2021年もIPOが続くと報じられている。変更後不動産テック関連銘柄のCompassも上場準備に入ったと報道されている。
ブルームバーグによれば、Compassはゴールドマンサックスとモルガン・スタンレーと協議を進めていて、今年IPOするスケジュールだと言われている。

M B Oを進めていくソフトバンクグループ

新規上場銘柄がいずれも急上昇しているのにはアメリカの株式マーケット自体の加熱感がある。
ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は史上最高値の3万ドルの大台を突破している。コロナ対策で市場にお金が放出されているが、航空業界や外食産業への投資が難しい為、その行き場を失った投資マネーが、こうしたコロナ禍で成長できる新規IPO銘柄に集中することによって、少しIPOバブルのようになっているのが今のアメリカ市場だ。

さて、こうした背景も受けて、今ソフトバンクグループの株価は堅調に推移していて、アナリストの見方も強気なものが多い。
ここしばらくの急騰の理由はソフトバンクグループが自社株買いによるM B Oの話題である。(M B Oは、Management Buyout、経営陣買収のこと。)
これまでソフトバンクは資産売却を立て続けに行ってきていて手元流動性を高めてきた。

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(出典: https://www.businessinsider.jp/post-220183)

傘下の英半導体開発大手アーム・ホールディングスを米画像処理半導体(GPU)大手のエヌビディアに400億ドル(4兆2400億円)で売却。また、国内携帯会社の持ち株22%の売り出し価格を設定して、売却総額は100億ドル程度を確保するとも報じられてきた。

豊富な資金で自社株買いを進めていくのではないかとここ半年噂されてきた。そして、事情に詳しい関係者からのリークでブルームバーグが、これから一年かけてゆっくりとM B Oを進めていくという内容を報道した。

記事によれば、ソフトバンクグループは株式非公開化について、創業者の孫正義氏の持ち分が他の株主を締め出すことができる程度に大きくなるまで少しずつ発行済み株式を買い戻すという新たな戦略を協議しているとのことだ。このアプローチには1年余りかかる公算が大きく、その間ソフトバンクグループが自社株買い戻しの原資を確保するために資産売却を続けることを意味する。
孫氏自身はソフトバンクグループ株を買い増さないが、他の株主が買い戻しに応じることによって現在27%前後の孫氏の保有比率は上昇していく。日本の規則では持ち分が66%に達すると、他の株主から未保有株を買い取る権利が発生し、恐らくプレミアムを支払わずに済むと報じている。

通常のM B Oでは25%くらいの上乗せが必要だが、今回のスローモーションバイアウトの場合は、株価下落時に少しずつ自社株買いをすることができるというのが狙いと説明している。
ただ、側から見たらこれは単なる株価対策のブラフではないかと思われてしまうだろう。
ここ5年程MBOやるだろうと言われ続けた中、今年2月にバイアウトについて、「真剣に考慮した結果、それを進めるのを止めることに決めた」とコメントしていて、「公開企業である方が良い」と言っていた。
その舌の根も乾かないうちに、スローモーションM B Oと言い出している為、単なる株価対策のブラフだと思われるのも仕方がないのかもしれない。

現実的に今ソフトバンクグループの株価は上がっていて、現在26.8%を孫氏が保有している。
現段階で発表されている来年7月までの自社株買いの1兆5000億円相当を買い戻すという計画を発表しているが、それでも持ち分が35%にしかならない。
圧倒的過半数の株を保有してM B Oするためにはあと6兆円近く必要となる。

確かにアームなどを売却して手元流動性を高めていて、12月時点での手元流動性資金は8兆円ほどはあるが、投資会社が投資先にお金を投資せず、自社株買いすることに違和感がある。
集めたお金でレバレッジをかけて投資をするから意味があるわけで、自ら資産規模を縮小させるというのは本末転倒ではないかとも思う。

最後に

今回はコロナワクチンと大統領選で好調なアメリカマーケットにおける新規IPO銘柄、それに伴ってソフトバンクビジョンファンドも懐があったかくなり、余裕が出てきた為、また動きが出てきたという内容をお伝えした。
今後も引き続き、最新の海外情報を掲載していく。

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