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2021年不動産市場はどうなっていくか。日米マーケットを解説!

新型コロナに翻弄された2020年の不動産市場、米国と日本で何がおこっていたのか?2021年日米の不動産市場、不動産テック市場はどうなっていくのかを解説する。

2020年のアメリカ不動産市場の振り返り

2020年3月19日にカリフォルニア州で最初に外出禁止令が発令され、4月の不動産取引は大幅ダウンしたが、その後マーケットは急回復して、2020年は570万戸の既存住宅が取引された。この数字は2019年の取引数と比べて5.9%の増加となっている。
不動産価格は高止まりしているままで、Zillow Forcastの予測によると2021年も価格の上昇は続くとなっている。

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(出典: https://www.zillow.com/research/data/ )

このZ H V I <Zillow Home Value Index>とは、不動産価格の前年比伸び率のことである。
2021年の後半にかけて、若干伸び率は落ちるものの、いずれも前年比で10%以上不動産の価格が上昇するという予測だ。
パンデミックという状況の中、これだけ不動産マーケットが強い理由としては、歴史的低金利の住宅ローンと慢性的な住宅供給不足が原因である。

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(出典: https://www.freddiemac.com/pmms/pmms15.html )

これはアメリカの15年固定の住宅ローン金利だが、1990年代は大体7%台、2000年代は大体5-6%台、2010年代は3%台と徐々に徐々に下がっていき、直近2020年の金利は2.61%まで下がってしまっている。
2012年以降8年間、全米の不動産は年7%平均で価格が上昇している為、住宅購入がしやすいといった話にもなる。

もう一つの理由として、慢性的な住宅供給不足というのも不動産取引をホットにさせている要因だ。
アメリカは不動産の価格だけでなく賃料も上がり続けている結果、ホームレスが激増してしまっている状況だが、それでも新しい住宅が供給されないのには、どの土地をどのように利用していいかというゾーニングが厳しいからである。
例えば、日本だと「戸建てが立ち並ぶ地域の空き地に便利だからコンビニ作ろう」という案は比較的容易にできるが、アメリカの場合そうした事は難しい。住宅地域はあくまで住宅地域の為、そこに後から商業物件をはめ込むことができないのだ。
アメリカでは予めこの地域にこれくらいの住宅を供給させるという事が決まっている為、なかなか急激に住宅数を増やすことができない。

アメリカ不動産市場の新築物件のリスク

ただ実際は全く新築物件が供給されていないわけではない。
トランプ大統領よりお金持ちの不動産王ドナルドブレン氏が率いるアーバーインカンパニーはカリフォルニア州最大の地主で、多くの新築物件を供給している。しかし、そうしたプレイヤーは少ない。

なぜかと言うと、アメリカの場合あえて新築を買うメリットがないからだ。
日本と違って基本的に<不動産の価格は上がっていくもの>というコンセンサスがある為、新築中古問わず不動産を買いさえすれば価格は上がっていく。その為あえてリスクのある新築物件を選ぶメリットがないのだ。

新築物件のリスクとは、まず1つはアメリカの職人のレベルに差がある為、新築物件は施工不良などがあるケースが多い。反対に、中古であったら現在までに問題なく利用できているというエビデンスを示すことになる。

もう一つのリスクは、新築物件には周りにどのような人たちが住んでくるかわからない。犯罪大国のアメリカではこれはリスクでしかないのだ。
こうした理由もあり、日本のようにあえて新築を選ぶ購入層が少ないことが、アメリカで中古物件がきちんと流通する要因になっている。
しかし、だからこそ市場に物件が大量に供給されることがない為、アメリカは慢性的な住宅供給不足となっている。

2020年のアメリカの不動産取引マーケットは、市場に売り物件が出るとすぐ売れる状況になり、その結果、エージェントの懐が暖かかったという記事がインマンに出ていた。

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(出典: https://www.inman.com/2021/01/19/agents-see-income-satisfaction-rise-despite-pandemic-inman-survey/ )

2020年の調査では年間で10万ドル以上稼いだエージェントが全体の64%となったと報告されている。2019年の同調査では44%だった為、大幅に躍進していることが分かる。この最大の理由は不動産価格の上昇にあると言うのは言うまでもない。

2021年アメリカ不動産市場の動向

コロナ禍において絶好調だったアメリカの不動産市場は、2021年はどうなるかと言うと、さらに増加すると予測されている。
Zillow Researchによると、2021年には昨年の21.9%増の690万戸が取引されると報じている。

理由の一つが住宅ローンの申し込み需要の強さである。2020年5月以降一貫して住宅ローンの申し込みが増加していて、年間平均成長率は22%となっている。

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(出典: https://www.zillow.com/research/november-2021-sales-forecast-28499/ )

また、不動産の価格が高くなっている為、売り物件が出てくる予測である。
2021年は2020年よりもかなり多くの売り物件が出るとの予想だ。その結果、2021年の時点で不動産価格は10%ほど上昇すると報じられている。

その他にも強気の予測を裏付けるファクトがあり、アメリカではそろそろ1990年以降の層がこれから住宅の購入層に参入してくる期待がある。ミレニアム世代よりもより大きい購買層であるジェネレーションZ世代が不動産取引に入ってくれば、さらなる取引増が見込めるだろう。

2021年日本の不動産市場はどうなるのか

活況な取引が予測されているアメリカのマーケットだが、日本のマーケットはどうなるのだろうか。
日本もアメリカ同様に4月5月は大幅に不動産取引が落ち込み、インバウンドが全くなくなってしまったことからホテルや飲食店は大打撃を受けた。

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(出典: https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/pdf/tosan.pdf )

帝国データバンクの新型コロナウィルス関連倒産の動向調査によると、2020年での居酒屋レストランの倒産が143件、ホテルや旅館の倒産が73件となっている。ホテル業界は大阪が特に酷い状況だった様で、北海道から大阪に進出して10件以上ホテルをオープンさせていたW B Fリゾート株式会社なども4月に民事再生法を申請して、星野リゾートがスポンサー契約に手をあげたことが話題となった。
堅調なのは巣ごもり需要による受注拡大の影響を受けた物流不動産で、リートなども堅調に推移したが、反対に小口配送が増えすぎて、今は倉庫が足りなくて悲鳴を上げている様な状況である。

一方で住居用不動産は6月以降から順調に回復を続けて、レインズ登録数も成約数も6ヶ月連続増の様にプラスの動向となった。
一時期、リモートワークの影響で、都心から郊外へ人の移動が始まるという記事も見受けられたが、実態はコロナによって移動時間に対して過敏になった結果、都心に人が戻ってきている状況である。

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(出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000504.000013485.html )

転職サイトRe就活のアンケートの結果によると、テレワークを実施している人の中の7割が郊外移住より通勤時間の短縮を希望する傾向になっているとまとめている。
現実的にフルリモートができない以上、月のうち何日かは出社しなければいけない為、その時に郊外から時間かけて通勤したくない人の方が圧倒的に多いのだ。

そうしたニーズなどもあり首都圏の不動産の取引が活況となっているが、もう一つの大きな理由が金融緩和である。
日銀が新型コロナ対策として総額110兆円の金融緩和を実施した。コマーシャルペーパーや社債の買い入れ限度額を20兆円に引き揚げ、F R Bからドル資金を調達して一定期間取る資金を低コストで供給し、国債買い入れ年間80兆円という上限を撤廃して、国債を無制限に買い入れることを決定したなど、市場に多大な資金を投下し続けてきた。
不動産市場にお金が流れ続ける限り不動産の暴落というのはあり得ない為、2021年の不動産マーケットも比較的堅調に高値張り付きで推移するだろうと予測できる。

不動産テック関連の動向

最後は気になる不動産テック関連の動向だが、こちらはより浸透してくると思われる。

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不動産テック協会の活動をまる2年続けてきたことから、2018年に比べてかなり不動産テックというキーワードが一般化した実感を持っている。
もともとテックに否定的な人も一定数いた不動産業界だが、今回のコロナによって否が応でもオンラインツールを使わなくてはいけなくなったということで、テックの便利さを感じた風潮になったのは大きかった。

こうしたテックへの心理的なハードルが取り払われ、不動産業界にもテックが浸透する土台ができたというのが昨年の状況で、今年2021年はそれを受けて静かにテックのサービス導入が進んでいく流れになる。
静かにと言っているのはどういうことかというと、OYOとかAirbnbとかWeWorkの様なディスラプターがマーケットをガラッと変えてしまうような事は起こらないという意味である。

日本には残念ながらアメリカのユニコーン企業、OpendoorやCompass、Zillowのようなプレイヤーが存在していない為、業界を大きく変えるテック勢力がない状況だ。どこかが不動産テックのユニコーン企業になる動きも、今のスタートアップ界隈のベンチャーキャピタルの動向だとなさそうだ。
既存の不動産事業者が本業のビジネスが堅調な中で、使えるテックサービスを徐々に使いはじめていくという意味で静かに広がっていくという表現を使った。

最後に

まとめると、2021年の日米の不動産マーケットはホテル産業以外は堅調に推移する一年になり、不動産テックのサービスはより一般的なものになっていく。アメリカではコンパスのIPOが予定されているが、日本ではそうした大型IPOは起こらない為、不動産事業者がガラケーからスマホに変えて行った様なスピード感でテックのサービスが浸透していくという一年になる。
今年も不動産市場がどうなっていくのか、そして不動産テックマーケットがどうなっていくのかを引き続き解説していく。

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