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らでぃっしゅぼーや

という定期サービスを始めてから、
10年間忌避していた料理をスムーズに再開することができた。

このサービスは毎週ランダムな野菜、果物、卵、
さらにこちら指定の数品のセットが届くというもの。
オプションは様々だが、概要はこんな感じだ。

もともと買い物が壊滅的に苦手な私。

棚に並ぶ商品が多ければ多いほど
無数の選択肢が頭を占拠し、発火し、
スーパー入口でよく焦げ死んでいた。

かつては献立アプリやミールキットにも手を出したものの、
「未来の献立を勝手に決められたくない」
などという謎の難癖をつけて続けられず、
頑固ジジイのごとく孤立を極めていた。

ところが本サービスはどうだ。
食材が届く、届く。料理をサボろうが容赦なく届く。

幸い私は冷蔵庫の食材が朽ちるのを何より恐れているため、
顔面蒼白で料理を始める。体が勝手に動く。

何だこの見たことねえ野菜、どうすればいいんだ...
いや、それより2週間持ち越されているゴボウの方が問題で...

いくつもの時限爆弾を冷蔵庫にかかえ、
憂鬱な面持ちで難易度辛めの食材運営ゲームを始める。
精神がガリガリ削られていく。全く心中穏やかでない。ゲームなのに楽しくない。

週ごとに休み設定もできるがそれは負けな気がする。
もうゲームは始まっている。これは闘いなのだ。

期限は毎週水曜。
インターホンが鳴る。
「らでぃっしゅぼーやです。」

来た...!!!
動悸と冷や汗が止まらない。

無慈悲にも食材の入ったダンボールが投げ入れられ、
開けるのも怖い私はうずくまって夫の帰宅を待ち、
代わりに開封してもらう。

また倉庫が埋まっちまった...0からやり直しかよ...
一体いつこのゲームをクリアできるんだ...

お察しのとおり、料理を克服したといって
楽しんでいるかと言われれば
全く楽しんでいない。

10年ほど前は料理大好きだった。
お菓子まで作っちゃってた。
どうしたらあの頃に戻れるの?

料理が好きってめっちゃ人生のコスパいいじゃん。
毎日がメンタル回復イベントじゃん。
私も好きになりたい。切実に。

でもらでぃっしゅぼーやには感謝しています。
10年の空白を突き破ってくれたんだから。

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