京都店オーナーインタビュー 『人付き合いは浅く広くでトントン拍子』
全国で4店舗目となる街中スナックが開業したのは京都府下京区。
京都店オーナーの苗村さんが加盟に至った経緯とはどんなものだったのでしょうか。インタビュー形式でお届けいたします!
ハタチの時のアルバイトは『大阪万博』
__苗村さん、インタビューよろしくお願いいたします。苗村さんは現在おいくつでいらっしゃいますか。
苗村:おう、よろしくね。今72歳の1950年生まれやな。ちょうどハタチの時には大阪万博があって、当時はアルバイトでガードマンをしとったな。岡本太郎の『太陽の塔』って知っとるか?あそこの下で当時は働いとったんや。
__有名な建物ですよね、よくニュースなんかで見たことあります。
苗村:そうやな。当時は高度成長期の終わり頃、外国人の方を見るのも初めてっていう人も多かったと思う。会場で人の誘導の仕事をしとったんやけど、エスカレーターを初めて見る人、乗る人が多かったんやないかな。万博は印象的やったなあ。
___私が生まれる前のことなのでとても新鮮です、72歳には感じられないほどパワフルですね。
苗村:俺らの時代の70代っていうと亡くなっている人の方が多かったんちゃうかな。今は100年時代っていって長生きできる時代になったもんね(笑)
サラリーマンではなく、自分の好きなことを目指す。
___そうですよね。すごい元気な方も増えて時代が変わっていますが、苗村さんはどんな半生を過ごされてきたんでしょうか。
苗村:当時は大手企業に就職するのが当たり前な時代やったな。元々、サラリーマンはしたくなかったっていうのもあってフリーターみたいなことをやっていたな。特に飲食業をたくさんやってたな。
___当時から飲食業界を目指されていた、ということでしょうか。
苗村:色々なアルバイトをしていたのは楽しかったけどな。親父が商売をやりたかった人なんやけど、なかなか家族を持っていると商売はしにくいということやったこともあって、当時の俺にアドバイスをしてくれた。「お前が好きなのは飲食とか接客業なんじゃないか」って言ってくれた。
人と会話するのが好きやし、人をつなげるのが楽しかったから。親父からの言葉をヒントにそこから飲食に。レストランのマネージャやらせてもらったのが初めての会社勤めやったな。
___レストランのマネージャですか、どんなことをされていたのでしょうか。
苗村:シェフを怒らせたら経営ができない時代でな。シェフとつながっておくのがホンマに大事。ものすごい癖を持っている人ばかりで(笑)ホールでどうまとめるかってのをやってたり、人のつながりをどうするかどうやっていけばいいのかっていうのをたくさん学んだよ。
___その経験をもとに独立されたんでしょうか。
苗村:1976年26歳の時に自分で飲食店を立ち上げた。周りの人間はほとんどサラリーマン、その当時は本当に珍しかったと思うよ。起業する理屈や情報もない。就職活動するのが当たり前やったからね。
___26歳で独立ですか、すごいですね。
苗村:京都で始めたのは関西風のお好み焼き屋さん。鉄板焼きのアルバイトで会話が弾んだのよ。それが楽しかったからね。トークしながら、お酒飲んでっていう。飲食店って3拍子揃わんでいいねん。『味』と『接客』と『お店の雰囲気』。当初は山小屋みたいな感じでやっていたんやけどね。一つだけよかったらその中で改善していく。味が足りてなくても接客で盛り返したりな。
___現在の飲食店だと3拍子揃ってからの出店というイメージですが、そこに接客が深く関わってくるんですね。
苗村:3拍子揃うまでが大変やし、なかなか進まない。始めようっていう意思がわかへん。最初から金かけてやっても失敗する、うまくいかへん。スナックはその極地みたいなもんやな。
___たしかに人との関係でまた行きたくなるお店もありますよね。事業としてスナックにはもともと興味があったのでしょうか。
苗村:そうねん。グループ関係なく個人的にやりたかってん(笑)シャッター商店街でやりたいなあって。会話も好きやしな。楽しいやん。ただカラオケとかの問題があって、防音をどうしようとかでなかなか進まへんかった。
浅く広く付き合うことで、物事がうまくいく
___苗村さん、お話してるのとても楽しそうですもんね(笑)
苗村:そうな(笑)人付き合いして色々な人と会うと、新しいことを知れたりするやん。だから「浅く広く付き合う」ってのが本当に大事やと思うわ。イノベーションも起こせるし、浅く広くでやってたらトントン拍子でも進むわね。
___浅く広くですか。『深く狭く』なんていう言葉も聞きますが人間関係やビジネスでも大切にされていらっしゃるんでしょうか。
苗村:サラリーマンで定年退職した人たちって、仕事で繋がっていた人たちだから関係が切れるやん。そしたら人とのつながりも無くなってまう。親友って同じような仲間、同じような考え、舐め合いとかイノベーションはあんまり起こせない。
ビジネスでも浅く広く色々な人と付き合ったり話聞けるし、関係も続いていけるやん。これは今の歳でも思うわ。
___たしかに。色々な人と話せるのは刺激にもなりますしね。
苗村:だから『人との会話をする』っていう街中スナックのコンセプトが気に入った。スタートアップやベンチャーも含めて、そういう人と会っていけるような、こういう理屈でやるっていうのは面白いなって思った。
___街中スナックとはどのようなきっかけで出会われたのでしょうか。
苗村:さっきも言ったけど、シャッター商店街でスナックをやりたい。そう思っていて色々な人にその話をしてた。そしたら東京から『スナックの事業』をやってはる方が来るって会食に誘われたんがきっかけやな。これも浅く広くやってたから声をかけてくれたんやな。
___きっかけも浅く広くだったんですね(笑)
苗村:シャッター商店街でやろうと思ってネックだったのはカラオケ、どう防音するかっていうことを考えていたんだけど、街中スナックにはカラオケがないって。会話を楽しむところやから聞いている人は雑音ってな。カラオケないの!?って驚いたけど納得したわ(笑)
___納得された理由は『会話』というところでしょうか。
苗村:飲食店の中でお店で会話ができるっていうのは魅力やねん。会話ができる、キャッチボールができる、お客さんもそうやし、従業員でもそれをしたいって言う人も多い。店の中で働いていて絡みがないのはつまらないと言う人も多いねん。俺はしゃべりすぎや言われるけど(笑)
___会話とかコミュニケーションってとても大切だし一つの「売り」にしているお店も多いですからね。
苗村:やっぱり自分の生き方とか考えてみても人より得意やなっていうところを伸ばした方が早いねん。俺の経験からやと元気な人は、親友、濃い仲間とおうてるより広く浅く色々な人付き合うとる。長所のばせたら人もビジネスも成長できると思うわ。
様々な視点からの相乗効果が生まれる
___飲食店といえど業態が違うのですが、ビジネスの成長という意味では本業と
の相乗効果は見込めるのでしょうか。
苗村:京都でやってるといえどうちのお店を知らない人もたくさんいる。そこからつながることで違うアイディアが出てくる。外食やりながら不動産にどうつなげていくかとかね。息子もITエンジニアだが、そこから外食につなげていくとか。奥さんも友だちがいっぱいいんねん、それも専門領域の人がたくさんいる(笑)この人に話聞きに行こうかみたいな。それが街中スナックでできるねん。
___たしかに会話であればどの可能性にも拡げられますね。
苗村:雰囲気見たら楽しいし、明るいし、普通のスナックイメージしてる人も安心できる。バーの延長線上みたいにかっこつけてへん。いい意味で中途半端やから明朗会計でなんぼ取られるなんて心配もない。安心して2杯3杯 と会話が楽しいからお酒を飲むことに繋がっていくやん。
___飲食事業経験からいってスナックの運営で難しいことはあるのでしょうか。
苗村:難しい事はないやろ。うちの事業に比べたら、べらぼうにやすいやん。
飲食として一番安くつくのはスナック。利益もでやすいからね。立ち上げも手伝ってくれたから楽やったわ(笑)若い人に飲ませる仕組みも人とつなぐためのツールをちゃんと考えてるなって感じたわ。一番の問題は人やろうな、いい人がおったら時間かけたら間違いなくお客さんついてくるやん。
___大きな魅力として働いている方も本当に大切ですよね、今後はどんな店舗にしていきたいでしょうか。
苗村:色々な人に入り乱れて欲しいわ。男性ばっかりでも困るし、女性ばっかりでも困る。入り乱れて浅く広く集まる場所になったらいい。同じ層ばっかり来ても面白くないし、だからこそオープンな場所かもしれない。
知ってしもたらまたこれる居場所になっている。やっている人が楽しかったら集まってくるしな。人とつながるのは街づくりやと思うね。人と合わないで悶々とやらないで。やっぱり人と喋りたいのが人やと思うわ。
___苗村さん、素敵なインタビューありがとうございました。