シュタイナー教育を受けて育ったZ世代のママ
平成生まれの21歳、Z世代である前田叶夢さんが街中スナックのママ になった理由はどんなきっかけがあったからなのでしょうか?飲食経験ゼロの彼女がスナックのママとして京都店で活躍している現状をインタビュー形式でお届けします!
シュタイナー教育を受けて育った幼少期
___ 前田さん、インタビューよろしくお願いいたします。
前田:はい!よろしくお願いいたします!少し緊張しているのでうまくまとめていただけると有り難いです(笑)
___ 早速ですが、幼少期にはシュタイナー教育を受けていたとのことですが、どんな教育だったんでしょうか?
前田:シュタイナー教育はその子ひとりひとりが能力を活用できるように、個性の尊重を重視した教育法って感じですね。当時から活発ではあったと思うんですが、やりたいことをやるっていうことを前向きに捉えているのはそんな幼少期があったからだと思います。今考えると当時はテレビやアニメ、歌謡曲にあまり触れることはなかったですね。他の子たちと話す時にはその話題を知っているように振る舞って話を合わせていました(笑)
___ 厳格な家庭で育ったんですね。
前田:小学校時代は反動とも言うべきか、目玉のピアスをしたり、マニキュアをしてみたりと派手な格好もしていましたね。昔から人と話すことが好きだったので、周りの大人の人たちからは「かのんは口から生まれてきた子だよ!」と笑われていたのを今も覚えています。
___ たしかに人とお話しをされる時はキラキラしていて楽しそうですよね。
前田:そうですね、誰かとお話ししたり、知らないことを聞いたりするのは自分にとってとても刺激があるなと感じています。やっぱり楽しいですね!
人生の転換期は国際ボランティアに参加したこと
___ 高校時代には国際ボランティアに参加されていたとのことですが、具体的にはどんな活動をされていたんでしょうか?
前田:人生の中ではじめて行動しよう!と思ったのが高校時代のフィリピンでの出来事です。特に今まで関わったことのない海外の貧困問題について、高校1年生当時の担任の先生がクラス通信にその問題を取り上げてくれていたんです。
___ 担任の先生が発行されたクラス通信が海外に行くきっかけだったと?
前田:そうですね。熱心な担任の先生で当時の私は海外の貧困のイメージもよくわからなかったのですが、そのクラス通信を見てどんな現状なんだろうと興味を持ちました。その担任の先生にNPO活動をされている友人がいたことがきっかけ、高校でHRの時間を使って「海外の貧困」について授業をしてくれたんです。授業が終わった後に応接室にいた先生の友人に「私もフィリピンに連れて行ってください!」とお願いしていました。
___ すごいですね、すぐに行動に移されたということですか?
前田:そうですね。学生ということもあり直訴してからすぐという訳にはいかなかったので、夏休みと春休みに私はフィリピンに国際ボランティアとして行くことができたんです。
___ NPO法人の活動に参加されたということですよね。どんなところに赴いたんでしょうか?
前田:フィリピンの中でもいわゆるスラム街という場所でした。周囲にはゴミの山がたくさんあって、鼻を覆いたくなるような匂いがする場所でした。でもそんな中でも生活をしている若い子が多い地域で、日本では考えられないような空間でした。
___ 若い子が多い、どのような現状だったんでしょうか?
前田:現地スタッフの方から説明していただいたのは、この地域に住んでいる子どもたちのグループは幼少から売春などで生計を立てているとのことでした。私が出会ってお話をさせていただいたのは当時16歳以下の笑顔も瞳も素敵な普通の女の子たちだったんですけど、様々な病気が進行しているということでした。驚きと辛い現実に一緒にフィリピンに行った友人と何かできることはないかと相談して日本で行動しようと決心したんです。
___ 帰国されてからどんな活動をされていたんでしょうか?
前田:高校の友だちと一緒に、たくさんのことを考えた上で性教育の一環として避妊具を届けることができないかと思案しました。7-8社ほどの避妊具を製作されている企業さんへ想いを伝えて、お返事を頂いた2社にご協力いただき、500個以上の避妊具の提供をしていただくことができました。
それらを持って現地へ行き、性教育と共に避妊具をお届けしました。課題として感じたことのほんの一端の部分かもしれませんが、少しでも環境が変化できるように、現地の子どもたちの意識を少しでも変えることができたらいいなと思っています。
誰かのために、人のために、行動する意識
___ 高校時代から人のために行動できるのは本当に尊敬します。その後も日本で災害ボランティアの活動をされていらっしゃったんですよね?
前田:はい。2020年7月に発生した熊本豪雨の際に現地でボランティア活動を行いました。ご縁があった方からボランティアの受け入れをいただいたのがきっかけで、短期的な日程でのボランティア活動と考えていただのですが、住み込みをし春を迎えて気づいた時には1年間熊本県で活動を行っていました。
___ 1年間も活動を継続することができた大きな理由としてはどんなことがあったんでしょうか?
前田:私が担当していたのは過疎化している地域で、亡くなった方はいらっしゃらなかったんですが本当にすごい光景でした。泥かきをして、水に浸った家具を運びだして、壁や床を剥がして、日が経って増えたカビを擦ったりしていたんです。そんな中でもボランティア仲間や住民の方が協力してくれたおかげで1年間お世話していただいたという気持ちです。生きていることの大切さを改めて感じましたし、協力して下さったりお声掛けしてくださる人がいることで自分もがんばれることができると実感しましたね。
___ 災害ボランティアという経験から人のために何かをすることの大切さを体感されたんですね。
前田:ボランティアで滞在している期間中に重機免許の資格を取得したりとたくさん経験をさせていただきました。熊本ではいろいろな方と知り合いになれたことも私の中で大きな財産の一つです。
ご縁がつないだ、自分らしく「挑戦」すること
___ 熊本のご経験から京都に移住されたのはどんないきさつだったんでしょうか?
前田:熊本でのボランティアの後は、自分はたくさん経験を得たいと考えるようになりました。世界一周大学というコミュニティに参加したり、京都に移住してシェアハウスで仲間と共同生活をしてみたり、ピザを焼いてみたい!という思いからピザ屋さんで働いて、そのお金で全国を周ってみたりといろいろやってみたいことに挑戦していたんです。
___ 夢や目標みたいな目指しているものは何かあったんですか?
前田:正直なところ、夢っていうほどの具体的なものは見つかっていなかったです。自分の人生を自分の感性で突き動かされていくっていう感じですかね…そんな時に「街中スナック」のお話しを偶然にもお知り合いの方からご提案いただいたんです。
___ 街中スナックでママになるきっかけは偶然だったんですか?
前田:そうなんです(笑)たまたま友だちと銭湯に行く予定があったんですけど、その銭湯がお休みで、近くの居酒屋さんでお知り合いの方と飲むことになって街中スナックのママを探していると聞いて…気付けば6時間くらいいましたね(笑)
___ 銭湯の予定が6時間の長丁場になった訳ですか。
前田:もちろん街中スナック以外のお話しもありましたけど、スナック??ママ??いったいどんなものなんだろうと。はじめて話を聞いた時に私の頭の中では「黒いパンプス」、「紅いリップ」、「昭和」の平野ノラさんみたいなイメージしか浮かばなくて(笑)
スナックのイメージと「街中スナック」への想い
___ その後に街中スナックの詳細説明を聞いてみていかがでしたか?
前田:想像していたスナックとは全く別物で、私自信も経験してみて思っていたことなんですけど、世の中にはしんどい人も居場所がない人もたくさんいたり、帰っておいでって言ってくれる場所だったり、憩いの場所だったりって本当に必要だよなって感じたんです。
ちょうど昨日も、「話せる人がいない」「仕事で辛いことがあった」って20代の女性が飲みに来てくれたんですけど、入店した時の表情はとてもつらそうだったんです。でも常連さんや他のお客さんとも楽しそうに話をしていて、すごいすっきりした顔で帰る時に「明日も仕事頑張ります!かのんママありがとう!」って。すごい嬉しかったし、幸せだなぁって。
___ それは素敵ですね。ママになろうと決心された瞬間はありましたか?
前田:それこそ熊本の経験で世代関係なく支えあえる関係って大切だし、その交流できるきっかけづくりや居場所づくりをするっていうことに「挑戦したい」っていうのが頭に出てきたんです。夢が具体的ではないからこそ、挑戦ができる今があるし、何よりも挑戦しなきゃわからないし、京都をもっと知って、京都にたくさんのつながりをつくりたいって思ったんです!
街中スナック 京都店 OPENからおよそ1ヶ月の様子は?
___ 接客や店内の雰囲気を見させていただいたんですが、想いが伝わってきます。飲食業の経験はあったんでしょうか?
前田:ピザ屋さんでの経験はありますけど(笑)接客業として本格的に会話したりっていうのはなかったです。お店の責任者という立場でママ(店長)として働くことに、不安は当然ありました。でも、実際にご近所さんに挨拶周りをしたり、ゴミ拾い中に道ゆく方にご挨拶をして、顔見知りのご近所さんができたりと嬉しいこともたくさんありました。
お客様も良い方ばかりで、街中スナックのコンセプトをしっかりとお伝えすると皆さん優しく聞いてくださるんです。Instagramをフォローしてくれたり、シェアボトルを入れてくれたり、閉店の時もお客様の方から逆に「閉店時間だよね!そろそろお会計で!」と言っていただいたりと、本当に皆さんに京都店を一緒に盛り上げてもらっています!なので、今はこんな感じで私自身たくさん学びながら日々営業しています。
___ オープンしてから京都ではどんなことが起こっていますか?
前田:オープン後まもなく、KOIN(Kyoto Open Innovation Networkさん とのイベントを企画させていただいたり、ご挨拶に伺ったご近所さんが知り合いの方を連れてきていただいたり、お店に来店していただいた女の子から「私も働いてみたい!」と仰っていただいたり、ラジオ出演の依頼がきたり、いろいろなことが毎日起きているんです。街中スナックは全国で展開していてお店が映像で繋がっているんですけど「来週京都いくね!」と東京や沖縄からもご来店していただいたりと、街中スナックが人をつなげるための居場所になっているなと充実感があります(笑)
___ イベントから人のつながり、遠方からの来店に店舗スタッフの採用まで繋がっているんですね。ママとしてのやりがいはいかがですか?
前田:私は本当に「挑戦」だと思ってお店に立っているんですが、もちろんしんどいこともあるし、辛いこともあります。OPENして1ヶ月弱でわかったのが私が笑顔の時に、心地いいお客さんに恵まれるってことなんです。今日は初めてのお客さまいらっしゃらないかなとか、素敵な人が来ないかなって思うと本当に来店いただいて、仲良くなってつながっていくのが何回もあるんですよね(笑)初めての来店されるお客さまには丁寧に街中スナックのコンセプトをお伝えしていることもあって、ご理解いただけて本当にやったーって思います!
___ 接客態度やコンセプトをお客様に理解いただくことで、お店の運営状況ややりがいにも影響するっていうことなんですね。前田さん、素敵なお話しをありがとうございました。
前田:ありがとうございました!記事を見ていただいた方はぜひ京都店もしくは全国の街中スナックに行っていただきたいです(笑)
___ 今のコメントも入れておきますね、素敵なインタビューありがとうございました。