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「新聞太郎」

少年が 少女が
自転車で バイクで
ひとり 新聞を配る
孤独な仕事
配達ルートを完璧に頭に入れねばならない
朝刊を 日が昇らぬうちに
夕刊を まだ日があるうちに
各家庭 商店 オフィスその他に
配る
単純な仕事だが
それを待つ読者がいる
彼ら 彼女らは その思いで
きょうも インクのにおいが残る
紙束を手にする
何十年 100年以上前からある仕事だ
その労働で
学費や生活費をつなぐ 若者ら
中には高齢者 主婦もいるだろう
もはや 新聞なんて
どこに読む人がいるんだろ…
そんなはずだのに
きょうも あすも
新聞は印刷され 配られ続ける

「学生時代は遊んでる間もなかったな」
五十路半ばを過ぎた男が
昔を振り返った
販売店に住み込み タコ部屋のような
新聞奨学生の生活を4年やった
配達と学校の行き来で終わる生活
そんな4年間
朝刊夕刊配達のため
大学の1限と4限は取れなかったという
酒も飲まず
4年で六本木のディスコに1度行ったきり
地方出身の男
そんな生き方を 引きずる

確かに
朝に 夕に
新聞を配る若者らがおり
彼ら 彼女らの
そんな生活が 今も続いている

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