【思い出詩】「助け舟」
お父さん お母さん
梅の花が咲きましたよ――
と いっても
切り花です
地面から伸びた梅の木ではなく
あなた方の 遺影の前にある
仏花の中にある 梅の花
それが 花開いただけ です
それでも それに
春を感じてくれるでしょうか
お母さん!
あなたは よく言っていましたネ
お父さんに
「あんたは意思の弱い人――」と
それは 毎日まいにち
お父さんが
お酒を飲んでいたからでしょうか
それで そう言っていたのでしょうか
ぼくが中学か高校か そんな頃
ひとり 静かに晩酌するお父さんに
お母さん あなたは
そう 言い放った――
「あんたは意思の弱い人――」
決して酒浸りだったわけではなく
日本酒の1合2合 時にほかにウイスキーみたいな
その程度の飲酒だった――
それに非難するような 言い方をしていた……
お母さん
あなたは 自分の夫に
そんなことをよく言っていた……ような
そんな人 そんな妻 そんな母……でした
今
ぼくは思います
そこまで あそこまで
言う必要があったのかな
と
50年 40年前に戻り
お父さんに 助け舟を出してやりたい
――なんて
今の ぼくは思うのです
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