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市民活動フォーラム2023想いを受け入れ組織を育む~続く活動と組織の秘訣~

2023年12月2日(土)「市民活動フォーラム2023想いを受け入れ組織を育む~続く活動と組織の秘訣~」を公益財団法人 淡海文化振興財団(淡海ネットワークセンター)と共催して開催しました。また、まちづくりスポット大津は11月29日に4周年を迎え、4周年事業としても位置付けて実施しました。フォーラムでは、第1部に団体活動展示・発表を行ったあと、第2部として2団体からの活動事例発表とクロストークを行いました。本紙面ではクロストークの記録をご紹介します。


🔼地域活動の担い手はどこに?

深川:クロストークでは「事例発表の内容について、質問を通じてさらに深める」「続く活動と組織の秘訣についてポイントを考える」「自団体の実践に取り入れられるものを見つける」の3つを到達点としています。
まず、「地域課題解決の担い手について」考えてみます。NPO元年以降、NPOと地縁組織の相互連携への期待が大きかった。ですが、相互連携はその期待に沿うほど進んでいません。一方で個人に目を向けますと、内閣府の調査によると「社会の役に立ちたいと思っている人」は2016年には65.4%あり(※内閣府「社会意識に関する世論調査 平成28年度版)、増加傾向にあります。その内訳をみると福祉活動や地域活動への貢献意欲は高まっています。
とすれば、なぜ個人が担い手として地域に関われないでしょうか? 多くの場合、私ひとりの参加はハードルが高く、また何かのきっかけがない限り具体的な行動となって表れにくいです。

🔼「私発協働」の考え方

個人の動きを組織だった活動につなげていくには?「私発協働」(※延藤安弘)という言葉があります。<私>から始まり、まわりをゆるやかに引きつけ、共に⼒を発揮しあうことを通じて『公共の幸福』に導く⼀連のプロセスをさします。
今日は、この言葉を念頭に、中心となって動くメンバーである<私>と一人ずつの関わり合いが、どのようにグループとしての<わたしたち>を形成したか。どういう工夫があり、課題をどうクリアしているかを聞きたいと思います。

🔼発表者2名の“きっかけ”

お二人に聞きます、なぜ今の活動をやろうと思ったのでしょうか。
細見:私は、小学生から京都子どもセンターの活動に参加していました。その後、大学生になってスタッフとして関わるようになりました。そこで企画を創る楽しさを感じたのが最初です。
仕事でも子どもと関わっていますが、「学校は面白くない」という子も多いです。そんな中、活動に来る子どもたちは活動も学校も楽しんでいる。活動からパワーを得ているんです。その手助けができたらいいなぁと思い、活動に運営側から参加するようになりました。

久保寺:私は、10年前に1年間だけ江北図書館に関わりました。その時から、本に加えて“歴史ある空間”としての面白さがあるこの場所に魅了され、何とか関わり続けたいと、木之本で古本屋を開きました。その後8年間本に関わる活動を木之本で続けてきました。お誘いを受けて理事になったとき、周囲でも何人かに声をかけ、そのとき集ったメンバーが一緒に理事になりました。
図書館が好きから始まったのが、まちの人が好きになり、まち全体が好きになってきました。ここをなんとかしたら、まち全体がよくなるのではないかと思い、やってみたいと取り組んでいます。

若手が加わった理事のみなさん (写真:公益財団法人江北図書館)

🔼スタッフのいろいろな関わり方

深川:では、中心になっているメンバーはどういう関わりの仕方ですか?特に、京都子どもセンターは、仕事を持つスタッフが大半とか。どうやって関わっているのでしょうか。
細見:京都子どもセンターの活動主体は社会人と学生です。無人島キャンプは学生が「隊長」として引っ張り、経験者がサポートしています。全員そろった会議をするため、夜や週末を中心に予定を決めてしまい、確保してもらっています。隊長とは、事業に参加すると決めたらしっかり関わってもらえるように事前に話をします。学生スタッフも応募があったらリモートで面接をし、最後まで関われるかを確認しています。社会人の中には、いろんな部分を分担して少しずつ関わっているスタッフもいます。
久保寺:私たちの運営メンバーは仕事もいろいろ、スキルも多様に持っていて、得意分野も違います。それを活かしてもらうように任せています。普段はLINEやZOOM中心に情報共有しているため、気が付いたことは何でも伝えるようにしています。意見がぶつかることもありますが、ちゃんと耳を傾けようというルールにして、最初は聞く、そのあとに意見を言うことを心掛けている。忙しい中、自分ごととして関わっており、みんなが使命感を持っているのでありがたいです。
深川:<私>個人として関わっていく原動力をもっていることと、対話を重ねていく努力が大切なのですね。

🔼活動を支えるコアメンバー

深川:ちょっと意地悪なことを聞きますが、お二人の活動の中で辞めていった人はいないのでしょうか?
細見:京都子どもセンターのプロジェクトでは、スタッフは毎年ほとんど入れ替わります。特に学生スタッフは1年だけが多いです。仕事を始めて遠のくスタッフも出てきます。活動するときは、45人程度のメンバーがいるのですが、コアメンバーは15~20人ぐらいです。
深川:入れ替わりがあるから、コアメンバーがしっかりしていないといけない。「自発性は揮発性」(※早瀬昇)という言葉があります。自発的に関わるというエンジンをもっているが、それが何からをきっかけに失われていると、関わりがなくなってしまう。中心メンバーが強く継続していくことが重要ですね。
久保寺さんはどうですか?
久保寺:江北図書館は公益財団法人なので、関わっているメンバーは理事が中心です。2年任期で3年目を迎えます。財団法人としての歴史は100年、ずっと理事制をとっています。今までの理事は2年で代わることが多かったようですが、今のメンバーはみんなで建物を建て替えるまで見届けようという意気込みです。

🔼次世代はどう育つ? 継承の工夫

深川:京都子どもセンターは、元参加者がスタッフになっている、小学生が大学生になって戻ってくるなど、長期的に縁が巡ってきているようす。どうやって長い期間活動できているのですか?仕掛けとして何か意図されていますか。
細見:青年部KAMONASUは法人化3年目の2003年から始まりました。当時は無人島キャンプしか事業がなく、1年だけの予定だったらしいです。「次の年もやったろう!」と続き、継続事業になってきました。今ではごく自然に、参加者が高校生になったらスタッフになるという形になってきています。
深川:何人ぐらいがスタッフになるのですか?
細見:3~4人がスタッフになったら「やった!」という思いです。小学生のころの子どもらしかった様子を知りながらも、スタッフになるとしっかりこなしてくれていてうれしいです。
深川:子ども食堂にも通っていた子どもたちが、次は担い手(スタッフ)になるという事例が見受けられる。参加者からスタッフへという流れは「憧れの自己実現メカニズム」(※上田信行)としてみることができそうである。アイドルグループのバックダンサーが、アイドルの背中を見てあこがれ、自分もその存在になる(なろうとする)、というサイクルに似ていますね。

無人島キャンプのみなさんの様子
(写真:NPO法人京都子どもセンター)

🔼活動を支えるサポーターの仕掛け

深川:久保寺さんには、これができているから継続できているという部分を教えてもらいたいです。
久保寺:そうですね、コアメンバー以外にファンクラブを作っています。お掃除やイベント手伝い、準備などをお手伝いして助けてくれています。ファンクラブの人数も徐々に増えてきて、心強く思っています。こちらの方は、どちらかというと年配者が多いです。“関わりしろ”が多いのでいいなと思っています。
深川:コアでやる人と、1年で交代する人、と分かれているようですね。いろんな人が関われるように、関わりのあり方にグラデーションを設けているのかなと思います。「できるときにできることを」という「関わりしろ」が大きいのではないでしょうか。

🔼モチベーション維持のポイント

深川:京都子どもセンターは事業ごとに活動されているようですが、どうしてその仕組みにしているのでしょう?
細見:あえて、というより勝手にその仕組みになった感じです。第1回目を実施したときに隊長をした人たちは「何かデカいことをやりたい」という気持ちを持ってやっています。それが次のスタッフにつながったものが、次にも残っています。実現しなかった事業も、終わっていったものもある。やりたいという人がいる限り、延々と作られていきます。そこを応援しよう、というこのスタイルになっている。
深川:「やりたいを実現する組織」なのですね。やりたいができる、継続する、となったら積極的に関わろう、とするのですね。

🔼「無人島キャンプ」の始まり方

深川:会場から、聞いてみたいことがあればどうぞ。
参加者:無人島キャンプはどうやって始まったのですか?失敗もあると思うのですが、それは次に活かして続いているのでしょうか?
細見:始まったのは僕はいなかった頃の話です。当時の話を聞くと、はじめは島も、地域も決まっていなかったらしいです。まず海に行ってみて、よさそうな無人島を紹介してもらい、そこで山に登っていたら帰れなくなって、「助けて~」と叫んでいて助られた漁師のおじさんにちょうどいい島を紹介してもらって、今も続いているらしい(笑)。長い事業で、活動が今風になるなど、細かな部分は変わっていますが、大事なところは曲げないようにしようと伝えています。
参加者:子どもの参加について、告知や申し込みはどうやってやっていますか?
細見:FacebookやInstagramで紹介しています。京都には、夏休みに向けて小学校で配られるキャンプ事業などが載った冊子があるので、それに載せてもらって配布されて知っている子どもは多いです。あとは口コミですね。1人で5人ぐらいの友達を連れてくる人もいます。
深川:口コミは強いですよね。

🔼やりたい意欲を育てるには

参加者:京都子どもセンターの活動で、この事業をやりたいという人が複数いたとき、どうやっていくのですか? この人が進めるとトラブルが起きそう、というような人が関わっているときなどもあると思う、そういうときはどう対応しているのでしょうか。やる、やめる、は最終的に誰がどう決断しているのか、気になりました。
細見:よくある状況です(笑)。例えば、事業計画を話しているけれど、先の展望が中心になってしまい、来年何をするか、という話が決まらないんです。そういう場合は、根気よくこちらが歩み寄って「まずは1年ごとの話をしよう」と話題を戻して、ちょっとずつ進めています。
他に何かやりたいことがあったら、定例会だけではなくて普段の会議でも発信してもらっている。複数人から提案があっても、その人のやる気が伝わればスタッフも集まる。集まらなくても、その時に考えよう、としている。やりたい気持ちが実現できるようにベテランスタッフがサポートしています。
深川:うまくエンパワメントして進めているようです。フォロー体制がきちっとある。

🔼参加者は受け身? 主体的?

参加者:自分の団体のことと重ね合わせながらお話を聞いていました。私たちも、活動の中で無人島キャンプをやっています。子どもたちも一緒にやりたいことをやる、やりたくなければやらなくていい、と自由にすごしている。
お二方の活動では、スタッフの方と参加者の関係性はどうですか?準備をする人がいて、参加者は受け身で参加されるのでしょうか。
久保寺:イベントの内容にもよるけれど、おおむね作る側と来る側に分かれています。古文書講座をしていますが、スタッフの一人が講師をして、参加者が来てくれています。ただ、参加者がそこからファンクラブに入ることもあるんです。古本市は、参加者は参加者。楽しみに来る人と、お店を出店する人、そして主催者に分かれています。参加される対象としては、お子さんが少なく、大人が多いです。なので、参加者と一緒に育ちあうという視点はこれからの課題かと思います。

江北図書館 にぎわうイベントのようす (写真:公益財団法人江北図書館)

細見:事業によって違います。無人島キャンプは主催側が準備して、班単位で過ごしてもらう。どうやって過ごしていくかなどは一緒に考えるんですが、テーマや活動は主催側でがっちり決めています。「京都部」という企画では、子どもたちと一緒に会議して、どういうことを学びたいか考えています。それぞれに担当を決めたり、当日もプレゼンしてもらったりと子どもも運営主体になります。「KAKEHASHI」という東日本大震災をきっかけに生まれたボランティア活動では、東日本のどこでどんな活動をするか、どんなものを学びたいかを子どもたちから聞いてやっている。という風に、一部企画では一緒にやっているものものあります。

🔼活動の価値観をどう引き継ぐか

深川:ありがとうございます。他に、付箋でいただいている質問からも尋ねます。「継続していくため、次に引き継ぐときの課題は何ですか。人的なものより、想いや価値観を引き継ぐ工夫について」ということです。何かありますか?
久保寺:江北図書館の長い歴史の中、私たちは40分の1しかまだ活動していません。引き継いでやっていく場合、価値観は変わっていっていいと思っています。形は変わってもこれだけは変えてはいけないものという中心的なものは変えてはいけないと思う。
ただ、引き継ぐための「人」がネックになっていると思う。5年後、10年後、どうなっているか、誰か代わりにやってくれるだろうかと思っています。一緒になって同じような熱を持って、動いてくれる、面白がってくれる、という人が増えてくれば、と思いながら活動しています。

深川:江北図書館はとても新しい取り組みをされています。関わってくれる人の中にも面白がってくれる人がいるのではと思いますね。
久保寺:前例がないことをやっているので、共感してくれる人はいます。今は全国公募しようかと思っています。一緒に走ってくれる人がいると嬉しいですね。
深川:京都子どもセンターはどうですか?
細見:お話聞いていて思ったのは、今年の無人島キャンプの時、5~6年前に隊長をしてくれていたスタッフが参加してくれていました。最後の感想に「KAMONASUとして大切にしていた部分がぶれて来たように思う」と書いてあり、ショックでした。どこかしらブレが生じる、昔から大事にしてきた部分の認識を改めて見直す必要があるかなと思っています。餅つきなどの恒例イベントも、お互いにどう受け継いできたのか、団体としての想いなどをそれぞれのスタッフが改めて認識して、次の世代に伝えられたらと思っています。
深川:新年会や餅つきは、振り返りを行うとともに、過去のことを聞いたりする機会でもあるんですよね。
細見:昔の面白いエピソードとか、こんなことを大事にしてきたと聞き、いろんな方が関わっている団体なんだなと感じて、大事にしていく、という気持ちがします。
深川:大学時代に神戸市真野地区でフィールドワークしていましたが、そこでも飲み会などの場で過去のまちづくりの歴史、震災体験などを引き継いでいました。日本には、鍋を囲むというものがある。そういう機会に、振り返ったり、共通体験の引継ぎなどができているのかなと思いますね。

🔼活動が続く秘訣とは!?

深川:お二人からのお話を踏まえて、まとめを紹介したいと思います。活動を継続する秘訣には、
① 私や、わたしたちの、もいや問題意識を大切にする 部分→人
楽しみややりがいを原動力にする「人」の力
互いの信頼関係と活動のWith志向  協働志向  →関係性
 相互信頼関係、つながり、あの人とだったらできるという他者を含んだ自信
ぎの世代が関わりやすい仕組みづくり
→仕組み
みんなが乗っかれるコミュニティづくり。できる範囲で、活動に応じたマネジメント、フラットでなくても事業にあったやり方(京都子どもセンターの隊長やスタッフなど)を考える。
これら、それぞれの要素が相互連関的に絡み合っている ということがポイントです。
活動が続いていくためには、想いの分かち合いが大切です。そのうちに、人・関係性・仕組みの分かちがたい集合体になってくる。
それが「うまい活動」ができあがっていく秘訣かと思った次第です。
頭文字をとって「お・お・つ」としてみました。
(会場歓声&拍手)

以上でクロストークを終了したいと思います。ありがとうございました。
進行:特徴的な2つの活動から継続の秘訣や関わり方の工夫を伺いました。深川先生、細見さん、久保寺さん、ありがとうございました。

開催日:2023年12月2日(土)

登壇者紹介

深川 光耀(ふかがわこうよう)さん
花園大学社会福祉学部准教授

住民参加のまちづくりやコミュニティ・ガバナンス、対話の場づくりのファシリテーションなどが専門。2009年から京都市まちづくりアドバイザーを務め、2019年より現職。

久保寺 容子(くぼでらひろこ)さん
公益財団法人 江北図書館 館長

江北図書館は長浜市木之本町にある滋賀県でもっとも古い私立図書館。 2021年に理事の世代交代を行い、同年10月から館長に就任。一箱古本市「いろはにほん箱」や、小説『星と祭』復刊プロジェクトなど本を通じたまちづくり活動に取り組む。

細見 侑亮(ほそみゆうすけ)さん
NPO法人京都子どもセンター 青年部代表

同団体内で青年部KAMONASU(かもなす)の代表として事業運営に参加。京都府親と子の劇場協議会から始まった京都子どもセンターは、1週間の無人島キャンプや、親子狂言など、子ども自然体験や文化体験の企画を多数運営。多くの社会人ボランティアが事業や組織の運営を支えている。


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