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チーム制作3ヶ月目、学生ゲームプランナーの備忘録

「歳寒くして松柏の凋むに後るるを知る」

〔「論語子罕」による。寒い冬に他の植物がしおれても松柏の葉は緑の色を保っているという意から〕
困難苦労に出合って初めて人の真価がわかる。


昨日、新宿グランドタワーにて開催された「ゲームクリエイターズギルドEXPO2019」に参加してきました。

専門学校や大学でゲーム制作活動をしている学生の集まるイベントで、同世代の学生や実際にゲーム開発に携わっていらっしゃる方々から、本当にたくさんのお話をお伺いすることができました。

私自身も、ディレクター兼プランナーを務めている「れーぞく!ネクロマンスちゃん」の出展を行ったり、アピールタイムには200名を超える学生の前で登壇しプレゼンを行いました。


さて、今日はそんな「れーぞく!ネクロマンスちゃん」開発にまつわるお話です。

自分語りという性質上、ポジショントークとなってしまうことをご容赦ください。


チーム制作、始動

この企画は元々、サークル内でチームによりゲームを開発するという試みの元で生まれました。

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↑8月中旬、深夜3時に突然企画を思いついて書き上げたドキュメント。細かい点を除けば今の形とほとんど異なりません


私がゲームデザイン・世界観・シナリオ・キャラクターの設定と3Dモデルを作り、デザイナー担当がロゴ・UI・パンフレットのデザインをし、東工大で行われたゲーム開発者イベント「GAME^3」に出展したのが8月下旬です。

そして9月には、既に他のチームに参加していたプログラム担当をチームに迎え、ようやく開発がスタートしました。

その後話し合いを重ね、必殺技や敵モデルの選定、システムの改良や声優の起用等を決めていきました。


仕様策定、そして仕様策定

一般的にプランナーは「企画さえ立てればあとはエンジニアとデザイナーに投げておしまい」と思われている節がありますが、全くそんなことはありません。どんなに素晴らしいアイデアであっても、そのアイデアを実現するためにはプログラムが必要であり、プレイヤーの感情を動かすためにはデザインが不可欠です。

というわけで企画書を書き上げたプランナーは、次にその企画をエンジニア向けの言語とデザイナー向けの言語にそれぞれ翻訳するために、途方もない量の仕様書を書きます。

私はアイデアの創出にはiPad ProとApple Pencil、ノートアプリを使っていたので、仕様書はそのまますべて手書きで作っていました。が、これがとても大変な作業でした。


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まずエンジニアと、どのような手法を使えばゲームデザインを実現できるかを話し合います。私自身もUnityには触れたことがありましたが、プログラム周りやUnity特有の機能については疎かったので、エンジニアと密に話し合いつつ仕様を決めていきました。

教えてもらうばかりではなく、当然自分自身も勉強しなければなりません。

Unity Asset Storeで使えそうなアセットをくまなくチェックし、時には自腹を切って使い方を確認し、エンジニアの手が回らなさそうな部分(Terrainやカメラを制御するシステム、ノベルシーン)は自ら学習し、実装を行いました。


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そしてデザイナーには、UIだけではなくUnityのパーティクルシステムの学習を依頼しました。やはり「好きこそ物の上手なれ」とはよく言ったもので、普段から特撮物が好きな彼はみるみるうちに上達していきました。

その傍らで私も実現できる表現方法を学び、かつゲームプレイとの兼ね合いを図りつつ弾や魔法の仕様を策定していきました。この辺りのバランス感覚は非常に難しいものがありましたが、最終的にはすっきりとした、それでいてダイナミックで迫力ある表現ができたと思っています。

またデザインスキルはプランナーであっても持っておいて損はないと考えたので、Adobe CCを購入し、現在制作にも活用しています。

操作方法01

↑「GCG EXPO2019」にて展示した際に作成した操作方法シート


ゲームプランナーの真価

エンジニアとデザイナー、理論を立てる側と抽象を操る側、双方の人間とものづくりをしていく中で、気づいたことがあります。

それは、プランナーに求められる能力とは「抽象的なことを明示する能力」なのではないかということです。


たとえば“オモシロイ”という言葉があります。

しかしその言葉自体には情報量が全くありません。なぜなら自分と他人の思い描く“オモシロイ”は、まるっきり違うからです。

「どうしてオモシロイのか?」「何がオモシロイのか?」「どんな時にオモシロイと思えるのか?」「どんな客層を狙ったオモシロイなのか?」

ゲームに限らず絵や3Dモデル、映像などのメディアには作り手による感情や狙いが込められています。それはただ“オモシロイ”というひとことで片付けられるものではありません。きちんと頭で考え抜き、理由を付け、言葉を尽くして“オモシロイ”を解き明かさなければなりません。


制作中にとある課題と直面した時、エンジニアからは「このゲームは何が面白いの?」と聞かれました。厳しい質問に聞こえるでしょうか。

しかしそれは詰問ではなく当然の問いなのです。

「何が面白いのかわからない」そんな状態で制作を進められるクリエイターなどいないでしょう。私はこの一件をきっかけに、ゲームデザインの奥深さを実感しました。


ゲームプランナーを志すということ

ゲームプランナーは企画のみならず、ゲームエンジンやデザインなどの幅広い知見が必要とする職種です。実際に実装してみなければわからないことも山ほどあるので、心苦しいながらもせっかく作ってもらったものをリテイクすることだってあります。そんな時のメンバーのモチベーションを管理するのもまた仕事だったりします。前記の理由でヘイトを買いがちな立場でもあります。


それでも私は、ゲームプランナーという職に魅力を感じています。

それは「ゲームの面白さを担保することができる」という点に尽きます。確かにエンジニアやデザイナーであってもアイデアは出せますが、実際に仕様に盛り込むのはプランナーです。ゲームを面白くするのもクソゲーにするのも、プランナーのさじ加減ひとつというわけです。

だからこそゲームクリエイターズギルドEXPO2019で来場者から「面白い!」「楽しい!」という声が聞けたときは、飛び上がるほどに嬉しい気持ちがこみ上げてきました。

私は開発を終えるその最後の瞬間まで、そんなユーザーの感情を揺さぶるゲーム作りを心掛けたいと思います。


最後に

私がディレクター兼プランナーを務める「れーぞく!ネクロマンスちゃん」ですが、今月12月31日に行われるコミックマーケット97に体験版を出展いたします。

このゲームが面白いのは「弾を避けるという“リスク”が、敵を一網打尽にする“リターン”に繋がる」というポイントです。

また、私が運営している公式Twitterもあります。

興味を持っていただいた方はぜひ、併せてこちらもフォローをお願いします。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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