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『すべての、白いものたちの』ハン・ガン 2024②

私の人生史上初めて、白が好きだった時期があり、(去年の3月ごろ?)その時に買った本で、これまで積読されていた。

三章に分かれた詩のような、小説のような、揺蕩いの中の文章。これを手に取った時は、翻訳された本が読みたかったのだ、と思いだす。
韓国映画を最近好きになり始めたが、その理由の一つは色彩の豊かさ。同じアジアだからかどこか懐かしいようでもあり、日本では見られない色使いが画面を彩っている。神社とか。

昔読んだ韓国の小説は、甘い豆腐の出てくる物語で、やはりこの本と同じ、透き通った印象があった。

そう。この本は、透き通っている。だから通過してしまったのだ。

生まれてからたったの2時間でこの世を去った姉に向けた、作者の「すべての、白いものたち」でできた産着であり、寿衣だ。

白いものについて書こうと決めた。…中略…傷口に塗る白い軟膏と、そこにかぶせる白いガーゼのようなものが私には必要だったのだと。

1 私

解説にあった通り、私は初読でこの本を「通り過ぎて」しまったけれど、いつかどこかへ向かう途中の列車の中で読みたい。なぜか、外の景色は海のイメージだ。

雪の三内丸山遺跡

青森へ行く時、この本を携えていたけれど一度も開かなかった。1月。雪が絶え間なく降り続けて、しんと静かで、むしろ寒さはなかった。急に風に吹きつけられた柔らかい雪の塊が、海を望む温泉の窓に沿って昇っていく。高速で回るメリーゴーランドのような風の軌道に乗って、雪たちは、歓声を上げながら目の前を飛びすさっていく。これを見た時、雪は生きている、と思った。

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