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沖縄無駄遣い

「沖縄無駄遣い」これは私が勝手に作った言葉だ。

年間何十万も費し、休暇を使い、手間も暇もかけて沖縄を訪れている。
気に入りの店を予約し、天候の不安を抱えながら離島船とシュノーケリングツアーの予約もする。
滞在中は泡盛を飲み、普段の食事にはかけない金額を払って琉球王国時代からの伝統料理を味わっている。
生きる活力で楽しみなのだ。
この活動こそが「沖縄無駄遣い」という説もあるが、耳を塞いで話を続けよう。

一方、私の友人達。
友人達の殆どが沖縄で生まれ育ち、今も沖縄で暮らしている。いわゆる生粋のウチナーンチュだ。
彼女達は沖縄に住んでいるにも関わらず、シュノーケリングもダイビングもしない。離島に行かないし、伝統料理を食べない。そして、泡盛も飲まない。
手を伸ばせば届く離島も沖縄でしか食べられないおいしい料理も、未経験のまま日々暮らしているのだ。あぁ、もったいない。
飲み会中、一度はやっかみ半分に「沖縄無駄遣い」と言ってやる。連中は「だからよ〜」と大笑いだ。
そして、何も改善しない。
「痩せたらシュノーケリングしたいさー」と言って10年経った。多分、死ぬまで海に入らないと思う。

今日も沖縄無駄遣いのひとりからLINEが送られてきた。この友人は離島部門トップの無駄遣い女王だ。
トップ画を飾る青い海。
世界中から美しい海と海洋生物を求めて観光客がやって来る慶良間諸島の写真だ。
「今日は日帰り出張で座間味島です」というメッセージ。

まず、細かいツッコミ。あなたが写しているのは座間味村ではあるけど、阿嘉島です。

なんて面白みのないツッコミも吹き飛ぶ程、思いがけず送られてきたライブ感溢れる写真にテンションが上がる。
好きなのだ。慶良間の海にゾッコンなのだ。

「どうだった?海きれいだったでしょ」と食い気味の質問に暑かった。不便だね〜という脱力極まりないお返事。
「鹿6頭見たよ。かわいいけど、うちの犬の方が断然かわいい」という犬自慢で締めくくられた。

いいのだろうか、これでいいのだろうか。
世界が恋する海、というキャッチフレーズで売り出している慶良間諸島の感想が「暑かった」「鹿見た」。
いいのだろうか。。。少なくとも私は悔しい。
そして、友人らしくて笑える。悔しいけども。

その頃、私が見ていた景色は、ざんざかに雨が降るおもしろみのない街のふやけた風景。
くたびれた顔でジムのマシンを動かすおもしろみのない人々。

自分で選んだ人生とはいえ、枕を抱えて叫びたかった。沖縄行きたい。
最近、沖縄不足で情緒不安定だ。

もし、私が沖縄に移住したら。沖縄無駄遣いするようになるのだろうか。
あれもしたい、これもしたいと興奮した挙げ句に血圧が上がってあっという間にパンクしそうな気もする。

私も友人達に言われている。
ディズニーランドの近くに住んでるのに行かないなんて。
東京で働いてるのにおいしいスイーツの店に行かないなんて。
東京ドームに巨人戦を見に行かないなんて。
無駄遣い!だと。

このやり取りがおもしろいのだけど。

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