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なぜ「D.P.-脱走兵追跡兵」が海外評価が高いか考えてみる

 第一に、韓国=兵役のある国という認知とともにそのヴェールに包まれた実態についてフィクションを通じて描くというのは、知らないことを覗いてみたいという気持ちにさせるものです。「軍隊」から連想されるものは、世界中どの国においても、「権力勾配が凄まじいもの」「厳格な規律」「閉じた男性社会」「暴力」などが想像される場所でもあります。(女性の兵役がある国もありますが)圧倒的な理不尽がそこに待ち受けていること、そして主人公はそれに屈せずにもがいて戦ってくれる物語だろうという期待を持って、クリックボタンを押すのは私だけではないはず。

 第二に、慣れ親しんだ男性2人のバディものの追跡アクションものです。主人公は第一話が始まってすぐに、父親が母親の稼ぎを吸い上げDVで苦しむ家庭で育ったトラウマを持つ表情の固いキャラクターであることが説明されます。このテンポのよさ、分かりやすさも魅力でしょう。バディ相手は第2話から、軍隊の特権主義・排他的な体質に対して飄々と距離を置いて付き合うタイプです。非軍人的な、でもマイノリティ側でもない。
 バディの彼の非マッチョな態度がより一層、このバディ2人が軍隊の抱える大きな闇や権力や「けっして変わらないもの」に「マッチョじゃない方法で」向かっていってくれるのではないかと期待します。 

第三に、各話45分程度で他のドラマより圧倒的にスムーズに視聴し進めていくことができます。

そのほか、このドラマの要素はいくつもあって、表にしてみました。

D.P.-脱走追跡官-

重要なことは、軍隊=古くからある巨大な体制に対して、この2020年代にどんな、古くないアプローチで、その「簡単には変わらないもの」に立ち向かうか。梨泰院クラスのようなド・シンプルに曲げない根性で通すかどうか?勧善懲悪では軍隊は語れないので、「敵」をどう設定して、主人公をどう成長させてそれに向かわせるのか。

大きな物語(=徴兵という社会構造や、軍隊という国家組織(朝鮮戦争の話も少し出てくる)と、脱走兵となってしまうそれぞれの個人が背負う小さな物語のバランスが非常に良いのかなと思います。ありえないだろうそれは、というようなことももちろんあるのですが、シーズン2も決定しているそうなので楽しみです。海外の期待もされているこの作品、ポリティカリー・コレクトネスに、脱ステレオタイプに、どう(男性)社会の特権性や排他性に「NO」を突きつけていくのでしょうか。


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