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会えて嬉しい! 4

支店長さん

〝殺される訳じゃないんだから…〟
その一言で心のしこりが一気にほぐれ 号泣
ずっと俯いていた顔を上げる事ができました

うちは建築系の自営業
平成の大不景気
姉歯の事件
元請け業者の夜逃げ倒産
身内の不祥事……

そんな事が一度に降りかかり
お金に困っていました

毎月毎月100万単位でお金が足りない

職人への給料や材料代支払いや
借りられるだけ借り尽くした借金の返済金

借金を返すための借金という
最悪の負のスパイラルに入っていました

小さい子ども3人を育てながら
毎日毎日お金の心配ばかりしていました
5日 10日 14日 20日 27日 末日
全て何かしらの支払日でした
心の休まる日などありません

家事 育児 仕事で疲れきっているのに
夜 布団に入っても寝られない
〝次の支払いどうしよう…〟
そればかりがぐるぐるぐるぐる頭の中を巡って
2時や3時に眠りについても
4時や5時に目が覚めてしまう
そしてまた寝られない

それが毎日

それが毎日

まだ小銭をかき集めて
支払いの足しにしていた頃は良かった

保険の契約者貸付が利用できるうちは良かった

各銀行のカードローンの申請が通る頃は良かった

実母に無心して借りまくれた頃は良かった

胃ガンが発覚し手術をして
その保険金を全て支払いにまわせた時は良かった

身内名義でカードローンを作れた時は良かった

眠れない毎日が続くと思考が停止します

でも
小さい子どもたちの〝今〟は〝今〟しかない

仏頂面したり当たり散らしたり
そんな事をしてはいけない
お金がないなら
お金のかからない事をしてやれば良い

家族旅行なんて行けるはずもなく
テーマパークも行けるはずもなく

でも春夏秋冬
おにぎりを作って
海へ
山へ
川へ
雪遊びへ
誰よりも贅沢な遊びを経験させました

当時の写真を見ると泣けます
ガソリン代だけだね かかったのは…って
ここも
ここも
ここも
って

みんな最高の笑顔で

みんな穏やかな優しい子に育って

でも私の胸のうちは毎日どん底
辛い気持ちを見せないようにするのも
涙を流すまいとするのも
神経をますます擦り減らす元となりました

数万円だけ毎月払って
何百万円も支払いが溜まっていた材料屋さんが
ありました
集金に来るのは従業員で
嫌み1つ言われずにいたので
尚更 早くどうにかしないと…と悩んでいました

ある日その店の支店長がやって来ました
車から降りて
事務所に向かって歩いて来る支店長を見て

〝あぁ…とうとう来た…〟と思いました

〝いい加減 払ってもらえんかな
こっちだって大変なんだ〟
という声が私の頭の中で聞こえました

事務所に入って来た支店長を前にして
棒立ちのままの私

気候の話や健康の話
そんななんでもない話をにこやかにする支店長

この話の後だ
この話の後か…とボーッと相づちだけ打つ私
でも我慢できずに
〝支払いの事でしょう?〟と言いました

支店長は納得したように頷きながら
〝あのね 奥さん…〟と話し始めました

催促をしに来た訳ではない事
自分も過去に同じように苦労した経験がある事
その時に一番大切な事は何か考えた事

〝殺される訳じゃないんだから〟

〝真面目に誠実に頑張ればいつかなんとかなる〟
〝奥さんいつもニコニコしてたのにそんな顔して〟
と…

憑き物が落ちました

これでもかって言うぐらい涙が出ました

お金が毎月 毎回足りない事実は変わりません
でも俯いていた顔を上げる事ができました

修理や工事が終わった顧客に
お礼のハガキを出していました

手描きのイラストを入れて

メッセージはお礼の言葉と
〝また何かありましたら…〟と書いていました
そのメッセージをやめて
季節の事や顧客の体調の事などに変えました

すると
そのハガキを受け取った
お礼の電話をいただけたり
お礼のハガキをいただけるようになりました

仕事の依頼も増えました

お礼のハガキのつもりが
次の仕事の催促のハガキになっていたんですね

俯いていた顔を上げてから
見えなかった事が
見えるようになって来たんだと思います

殺される訳じゃない
殺される訳じゃない
できる事をしていくだけ

って呪文のように呟きながら

今も借金の額は変わったもんじゃありません

でも内容が変わりました
仕事がスムーズに行くための設備などの借入です

あの支店長からの言葉をいただく事なく
俯いていたままの私だったら
今の生活はなかったかも知れません

先日小さな工事で主人の手伝いとして
同行していました

その家の奥さんが
〝奥さん働き者やね!〟と言ってくださり
それに対しての主人の一言が
〝はい いなかったらこの商売をやめてたかも〟
でした

かなり驚いて〝え~!〟っと叫んだ私

そんな風に思ってくれていたなんて
知りませんでした
いつも多くを語らない人ですから

そういう言葉の1つ1つに
支えられて生きて行けるんですね

そんな気の効いた台詞で
私も誰かを幸せにできたら良いのに

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