扶桑化学(4368)についてのメモ(4)

連投になったが、山本潤氏の昔の同社についてのレポートを見つけたため。掘り起こしを記録するため note にする。今読んでも同社を理解するうえで非常に示唆に富む。

初出が2018.1で、最終Updateが同年12月のレポート。

扶桑が圧倒的なシェア(wafer polishing 80-90%)を誇る理由は、その供給能力にある。 需要を凌ぐ供給能力を一社で誇示することにより、他の参入を諦めさせている。 たとえば、現在、100億円単位で原料を供給するのは扶桑一社のみである。 そこに追加投資120億円(fab 1 fab 2にそれぞれ1ライン)を決めた。 他を圧倒する供給能力と技術力で市場を独占できるのは、それがまだニッチ市場だからである。
これは同じ大阪の企業である、日東電工(NITTO)がかつて実施した戦略でもある。彼らは台頭するアジアのライバルに対して大投資を行うことで牽制球を投げ続けた。実際、現在の彼らの業績の拡大をみれば、長期的にはそれが正解であったことがわかるだろう。短期ばかり見ていては(たとえば来期の減益はごめんだという投資家の態度)、本質を見逃してしまうのかもしれない。

そうか、過剰とも思える設備投資が追随者をあきらめさせる肝なんだ。でも、相応の市場の成長が見込めないとそれは本当の設備過剰となってしまう。そこのところの見極めに同社が優れていた、ということか。

過去の設備投資の経緯を見ると、この高純度コロイダルシリカ事業は、多額の設備投資が必要となるものの、更新投資の類はほとんど不要のようだ。これは過去の設備投資の系列を並べているとわかる。2006年2007年に市場が急拡大したとき、それぞれ40億円、60億円と投資を行ったが、それ以降は3億円という年もある。更新投資が不要であることがわかる。
つまり、設備自体は大規模なのだが、よって高価なのだが、毎年のように多額の更新投資や費用が不要であるビジネスであり、営業キャッシュフローそのものを信じることができる会社である。企業の中には、毎年、多額の償却費が恒常化しているために営業キャッシュフローが潤沢でも株価は割安にはならないケースもあるのだが、この企業はOPCFを見ていれば、本質的には利益と見なせるのだ。そのことは、償却が加速の有税償却を行うことでも確認できる。近年の流れは償却は定額への流れであるが、扶桑化学は定率にこだわる。8年の定率がスタンダードだが、本音では償却は4年で終えたいという、そんな昔ながらの気質が残っている企業だ。

設備の更新投資が低額で済むのであれば、それは儲かるよなあ。

同リンクのコメント欄のやりとりも面白い。四季報 Online によると同社のメインの販売先は

【販売先】 フジミ,花王,三栄源

後者二つはライフサイエンスの顧客かな。フジミはフジミインコーポレーテッドのことだろう。同社の高純度コロイダルシリカが伸びているとすればフジミインコも好調、ということになるのだろうか。(フジミインコについては、メモを残している。)





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