期待先行過剰気味だが、山一電機はデータセンター投資の裏本命かもしれない

 山一電機のこの数か月の株価の動き(10年来高値を更新)に驚いている。同社はスマホの需要が戻らなければ業績は回復しないはずだというのが筆者の昨日までの認識であった。ただ、あまりに他の「アップル関連」と目される会社の株価の動きとかけ離れた動きをしているので、その原因をさぐるべくいろいろと調べてみたら、どうやら、同社は、データセンター投資の裏本命ともいえる会社であることがわかった。

2022年の1月に、同社はこのようなコラムを同社ホームページで発信している(太字による強調は筆者によるもの)。

池端:日々の暮らしになくてはならないインターネットですが、その膨大なデータ通信を支えているのが、世界各地にある無数の基地局です。当社のコネクタは、通信をエリアごとに総括している通信基地局やその先にあるデータセンターとの間で、信号のインターフェイス(データやりとりの窓口)として活躍しています。
―― インターネットに欠かせない重要な基幹部品なのですね
池端:私たちが普段目にすることはありませんが、インターネットを利用する身近なモノやサービスにはすべてコネクタが関わっています。例えば、今話題の5G(第5世代移動通信システム)は、遅延のない高速通信が特徴ですが、その通信品質を支えているのがコネクタです。数千キロメートルの都市間を結ぶ「海底光ケーブル」も、信号の窓口として当社のコネクタが採用されています

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1月にアマゾンが、先日マイクロソフトが日本に巨額のデータセンター投資を行うことが報道された。また、昨日はグーグルが日米間をつなぐ海底ケーブルに大規模な投資を行うことも報じられた。山一電機のコネクターの需要が喚起されそうではある。

では、同社のコネクターは競合他社に対して強みはあるのだろうか。それについて同社の池端氏は上記コラムにてこう説明している。

池端:コネクタは「電気的」な要素だけでなく「機械的」な要素も併せ持っています。信号をきれいに通すためには「まっすぐ一直線」に機器をつなぐのが理想的ですが、コネクタにはかならず機械的な接触機構があり、そう簡単にはいきません。そこで当社では端子の形を最適化するとともに、1/100ミリの精度で製品をつくりこみ信頼性を担保しています。そのため何回抜き差しても、同じところで位置が決まり、高速信号を歪みなくきれいに通すことができるのです。
池端:はい。コネクタは樹脂部品の膨張・収縮などで寸法のズレが生じると、期待通りの性能がでません。そのため開発では実際の製品のばらつきを考慮して設計をしています。開発の仕事は「ばらつきにくくする」だけでなく「ばらついても精度がでるようにする」のが大事だと思っています。
最近では製品の信頼性を上げるため、シミュレーションにも力を入れて開発に取り組んでいます。「この形にすれば、信号はどれくらいきれいに通るか?」「コネクタの噛み合わせはどうか?」など、CADデータをもとにコネクタの特性や性能をシミュレーションで検証しています。データやノウハウの蓄積による試作のコストダウンも期待されています。

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で、同社は今年の1月になってこのような新製品を発表している。

山一電機の800Gbpsイーサネット対応コネクタは、データセンターにおけるデータ伝送速度と容量を大幅に向上させることにより、AIアプリケーションの処理能力と応答速度の向上へ貢献します。生成AIの普及とデータセンター技術の進化を後押しする役割を果たし、社会に新たな価値をもたらすものと期待されています。

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ところで、同社は昨年の5月に向こう3年間の中期経営計画を発表している。そこには「データセンター」という文字は使われていない。ということはどういうことを意味するかというと、同社は、昨年5月の中期経営計画段階では重要視していなかったが、それ以後生成AI用のデータセンター投資が急増するはずと見るや、機敏にそれに向けてのコネクターを開発し、今年の1月の上市にまでこぎつけたことになる。ビジネスの外部環境の変化に対応するスピード感はなかなかのものがあるのではないだろうか。

同社の平均年収。2023.03期は過去最高益更新の年度で、ボーナスも含めた数字だろうが、891万円と結構厚い。

出典 https://www.ullet.com/6941.html#summary

また、同社には従業員持ち株制度があり、15%のインセンティブをつけている様だ。

従業員持株会
社員自身で設定した金額を給与から天引きし、会社補助15%を加えた金額で定期的に自社の株式を購入していく制度です。

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同社の従業員の士気は高いはずと筆者は見ている。

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