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制服

「友達がアイドルってどんな感じ?」
この質問、何回聞かされただろう?
「別に普通だよ。」
テンプレみたいに答える聡美。

瑠璃とは幼なじみで、家族ぐるみで交流があった。
バーベキューやお花見、温泉旅行など、どっちがどっちの家の子か分かんなくなるくらい仲良しだった。

瑠璃は可愛らしい女の子で、小学校の頃はよく男子にイジワルされていたが、その男子をぶっ飛ばしていたのが聡美だった。

中学に上がると、瑠璃の可愛さはレベルアップし、イジワルしていた男子共が手のひらを返したように好き好きアピールしてきたけど、瑠璃は全てお断りしていた。

「だって男子って汚くて臭くて野蛮で嫌いなんだよね。聡美みたいにキレイだったら考えるけど。」

イジワルされて泣かされていたとは思えないくらい強く育った瑠璃のセリフ。
絶対に本人には言わないであげてね・・・
ってか、私が背後から刺されるからむしろ言っちゃダメ!

ある日、
「こんばんは!」
お母さんが夕飯の片付けをしていると瑠璃がウチに来た。
「あら瑠璃ちゃん。こんな時間にどうしたの?」
「ママとケンカしたから家出してきた!」
「あらあら、夕飯は食べたの?」
「食べた!聡美は部屋?」
「そう。これからお風呂だから一緒に入っちゃえば?」
「分かった!そうする!お邪魔します!」

こんな事もいつも通り。
どちらの家にも、それぞれの着替えが有る。

「聡美!」
瑠璃がいきなり部屋のドアを開けた。
「うわぁっ!ビックリした!瑠璃、せめてノックして・・・」
コンコン
「今した!家出してきたから泊まる!お風呂入るよ!」
「・・・はい」
瑠璃様、たくましくなられて・・・

お風呂から出て聡美の部屋でくつろいでいる時、
「で、今日の家出の原因は?」
と、聡美が聞いた。
瑠璃は自分のバッグの中をガサゴソし、
「コレ観てるの見つかった。」
と、1枚のDVDを聡美に見せた。
「何のDVD?」
「観たい?」
「怖いヤツなら嫌だなぁ。」
「ホラーじゃないから大丈夫。」

瑠璃は聡美の部屋のDVDプレイヤーに持ってきたDVDを挿入し、再生した。

内容は、男性と女性がお楽しみの最中強盗が押し入り、男性と女性を縛り上げ、男性の目の前で強盗が女性をいただいちゃうのだが、男性より強盗の方が・・・その・・・大きくて・・・えと・・男性より・・気持ち良かったから・・・女性が相手を乗り換えちゃう話。

DVDが終わり、
「聡美、どお?」
「瑠璃様は、どちらでこのシロモノをお手にお入れなさったの?」「お兄ちゃんが居る友達からもらった。」
「瑠璃様。コレはお母様もお怒りになると思われますよ。」
「でも興味あるでしょ?」
「そりゃぁ・・・まぁ・・・」
「じゃあ、これからは一緒に観ようね!まだまだ持ってるって言ってたから!」
聡美は返答に困って、瑠璃を見つめたまま固まってしまった。

部屋の明かりを消し、いつものように2人で寝たのだが、聡美の脳内ではさっき観たDVDの映像が何度もリピートして寝付けない。

(いつか瑠璃もあんな事するんだ・・・)

横で眠る瑠璃を見て、理由は判らないけど何だかモヤモヤした。
すると、眠っていたはずの瑠璃が目を開てこちらを見た。
「聡美、眠れないの?」
「起こしちゃった?ごめん。」
「ううん。・・・さっきのDVD?」
「・・・・・うん。」
「嫌だった?」
「ん〜・・・嫌と言うか・・・いつか瑠璃にもそういう相手が出来るんだなぁって・・・」
「聡美もそうでしょ?」
「私かぁ・・・想像出来ないなぁ・・・・・」
「ねぇ、私達もしてみる?」
聡美が驚いて瑠璃を見ると、瑠璃に唇を塞がれた。
瑠璃の可愛い顔がゼロ距離に有った。

(瑠璃・・・)

瑠璃が唇を離し、
「聡美、嫌?」
「・・・嫌じゃない」

聡美は瑠璃に覆いかぶさり、唇を合わせた。
DVDでのキスを思い浮かべ、そっと舌を入れてみる。ちょっとずつ、ちょっとずつ。
瑠璃も少しずつ聡美の舌に応える。
初めはちょっと触れては離れしていたが、徐々にお互いを確かめるように絡み合わせていった。

聡美が瑠璃のTシャツの中に手を入れ、瑠璃のふくらみを手のひらで包んだ。
「んふっ!・・・・・」
舌を絡ませ合いながら、瑠璃が吐息を漏らした。
聡美は、ゆっくり優しく瑠璃のふくらみを揉みほぐしていく。

(やわらかい。こんなにやわらかいんだ。)

自分にも付いているのに可笑しな感想だが、聡美は本当にそう思った。

聡美は瑠璃から唇を離し、瑠璃のTシャツをたくし上げ、胸の先端に舌を滑らした。
「・・・・・っ!」
瑠璃は声が出ないようになのか握った手で口を塞ぎ、身体をくねらせた。

(本当にこんな風になるんだ・・・)

聡美はさっきのDVDを脳内でスロー再生させながら、ふくらみの先端を舌で転がしたり、反対側のふくらみを手のひらで解したり先端を指先でこねたりした。
「・・・聡美・・・・・もっと・・」
聡美は瑠璃からスウェットと下着を脱がせ、そっとプライベートな場所に指先を伸ばした。

(多分この辺・・・)

指先で瑠璃の感じる場所を探ると、瑠璃の身体がビクッとした。
聡美はそこをゆっくり、優しく指先で撫でた。
「瑠璃、ここ?あってる?」
瑠璃は口を両手で塞ぎながら、何度も頷いた。
聡美は優しくそこをクルクル撫で続けた。

『こんなに固くなって。舐めてほしいの?「舐めて。」って言ってごらん。』

(ここは舐めても良いの?でもどうやって舐めるんだろう?)

聡美は、とりあえず舌を運ばせてみた。
瑠璃が一瞬驚いた顔でこちらを見たが、自分の身に起きている快楽の渦に巻き込まれていった。

『彼氏のはお粗末なのか?オレのをぶっこんだだけでビチョビチョに溢れてくるぞ。モノがちっちぇえ男が彼氏だと可愛そうだな!』

そんなセリフを思い浮かべながら瑠璃に舌を這わせていると、瑠璃がシーツを掴みながら身体を大きくのけぞり、ストンっと力無くベットに落ちた。

(え?こんなシーン無かった!)

聡美が慌てて瑠璃の顔を覗き込む。
「瑠璃!大丈夫?」
「聡美、抱きしめて・・・」
聡美は瑠璃を抱きしめた。
「瑠璃、大丈夫なの?」
瑠璃はフフフフと笑い、
「聡美のそうゆう所好きよ。」
と、聡美にキスした。

しばらく抱き合いながらチャイチャイ、チュッチュ。
「ねぇ、瑠璃。『ビチョビチョに溢れてる』って何?」
「あぁ。」
瑠璃はそう言うと、聡美の手を瑠璃のプライベートな場所へ導いた。「こうゆう事。」
瑠璃のプライベートな場所は、潤いで溢れていた。
「おぉっ!誰でもこうなるの?」
「気持ち良ければね。」
「このままじゃ気持ち悪いよね?今拭くね。」
「ねぇ聡美。・・・中も試してみる?」
「中?瑠璃、痛くない?」
「したこと無いから分かんない。」
「そうか。じゃあ・・・試してみようか。痛かったら言ってね。」

聡美は、ゆっくり瑠璃の中に入っていった。
すごく温かくて、ビックリした。
「痛くない?」
「少し・・・でも大丈夫。」
聡美は、ゆっくり瑠璃の中を動いてみた。
瑠璃が時々大きく息を吐く。
「・・・聡美・・・そこ・・・・・」
瑠璃に言われた場所を、指先で優しく撫でる。
瑠璃が身体をくねらせる。
「・・・聡美・・・・・そと・・・して・・・」
聡美は瑠璃の中を撫でながら、さっきの場所に舌を這わせた。「・・・・・・・・っ!」
聡美が舌を這わせ始めてじきに瑠璃はさっきみたいに身体を大きくのけぞらせてベットに落ちた。
聡美は瑠璃のプライベートな場所をティッシュで拭いて、瑠璃を再び抱きしめた。

「聡美。」
「何?」
「私以外とは、こんな事しないでね。」
「分かった。瑠璃以外とはしない。」

この日以来、2人は互いの家でお泊りし、DVDの鑑賞会をし、好奇心のおもむくままに快楽に溺れた。

そんなある日、
瑠璃と瑠璃のママとで都内にお出かけしていたら、瑠璃がスカウトされた。
瑠璃のご両親はあまり前向きではなかったが、事務所のゴリ押しに、
「中学の間だけ。それまでに芽が出なかったら辞める。」
の条件付きで事務所入りを許可した。

それから2ヵ月後、清涼飲料水のCM出演でいきなりブレイクし、瑠璃は時の人となった。

学校では、瑠璃を一目見ようと教室前の廊下は常に人だかり。
校門には他校の生徒が大挙して押し寄せた。

ある朝、聡美は体育祭の実行委員の集まりがあり、いつもより早く家を出ると、聡美の前を瑠璃と瑠璃のママが歩いていた。
「瑠璃ぃ~!」
2人が険しい顔で振り向いた。
「あぁ、聡美。」
聡美の顔を見て瑠璃と瑠璃のママは、表情を緩めた。
聡美は駆け寄り、
「おはようございます。」「おはよう。早いね。」
「おはよう。聡美も早いじゃん。」
「体育祭の実行委員会。2人は?ってか荷物多くない?」
「ん〜、色々ね。」
「色々?」
「ママ、今日は聡美が居るからここまでで良いよ。」
「女の子2人で平気?」
「2人なら、1人が電話出来るから大丈夫。」
「そうね。聡美ちゃん、お願いできる?」
聡美はよく分からなかったが、
「ママ、大丈夫です!」
と笑顔で言った。

瑠璃と学校の昇降口に着くと、瑠璃の下駄箱が手紙で溢れかえっていた。

「!!!っ」
聡美が驚いてフリーズしていると、瑠璃は除染業者さんがするような手袋をして手紙を袋に入れ始めた。
「瑠璃、その手袋は?」
「悪意有る手紙の場合、カミソリの刃や得体の知れない液体が入ってるから。」
「カミソリっ?液体って何っ?」
「男が出すヤツだったり、時には毒物。まぁ、私にはどちらも毒物だけどね。」
「もしかして、机やロッカーにも?全部読むの?」
「ありとあらゆる場所だね。全部事務所に渡す。私は開封すらしないよ。」
「瑠璃、大丈夫?私いつでも力になるよ。」
「ふふ、ありがとう。私はいつもカメラの向こうに聡美が居ると思って撮影してるから、こんなの平気だよ。もう、力になってる。」
「瑠璃ぃ〜、今の告白?ねぇ、今の告白?聡ちゃん大好きって事?」ニヤニヤしながら聡美が聞くと、
「もう!分かってるでしょ?バカ。」
ちょっと頬を赤くして瑠璃が答えた。

手紙を回収すると、瑠璃はバッグから上履きを出して履いた。
「毎日持って帰ってるの?」
「イタズラされたり、持ってかれたりするからね。」
「もしかして教科書とかジャージも?」
瑠璃は頷いた。
「アイドルさんは大変だねぇ!なのにファンの見えない所で聡ちゃんとあんな事!」
聡美は大げさに両手で口を覆い、目を見開いた。
「もうっ!早く委員会行きなよっ!」
瑠璃は顔を真っ赤にして聡美を叩くふりをした。
「はぁ~い!行ってきまぁす!」

笑顔で手を振り別れた。

それからは、委員会が有っても無くても聡美は早めに家を出て瑠璃と登校した。
体育祭が終わっても、早めに家を出て瑠璃と登校した。
途中、瑠璃を待ち伏せしている男がたまに居たが、聡美がスマホで録画しながら近付くと、逃げていった。

「瑠璃は高校どうするの?」
「芸能科が有る高校だね。」
「家から通うの?」
「寮に入ると思う。」
「そっかぁ〜。まぁ、お仕事が有るからね。でも、寮ならセキュリティ万全じゃない?」
「・・・でも・・・・そんなに会えなくなるよ?・・・・・」
「メールとかは出来るでしょ?寮だったらお仕事の苦労を分かり合える人も居るし。」
「聡美は寂しくないの?」
「寂しくないって言ったら嘘になるけど、画面で瑠璃の笑顔が見れるから平気!大丈夫!」
「そっか・・・私は寂しい・・・・・不安・・・」
「瑠璃・・・」

中学を卒業し、聡美と瑠璃は別々の道へ進んだ。
聡美はちょっと離れた公立高校。
瑠璃は芸能科の有る都内の高校。

瑠璃はメディアでの露出が多くなり、毎日見ない日は無いくらい瑠璃の顔を見た。
でも、瑠璃は月に1度くらい自宅へ帰り、夜は聡美の部屋で過ごした。
瑠璃は、以前より少し痩せていた。

「聡美・・・私・・・・もう・・」
唇を合わせながら2人でお互いの感じる場所を弄っていると、瑠璃がそう言った。
「もお?・・私まだだから・・・・我慢して。」
「聡美・・・我慢出来ない・・・」
「一緒にイコうよ・・・・」
「・・・・・分かった・・・」
しかし、聡美は撫でる速度を早めた。
「聡美!・・ダメ・・・ダメ!」
瑠璃は聡美にしがみつき快楽の渦に巻き込まれた。
「瑠璃はお約束守れない悪い子だなぁ。」
「だって、聡美が・・・」
「一緒にって言ったのに。もうしないよ?」
「・・・ごめんなさい。」
「じゃあ、自分で弄りながら私もイカせて?」
「・・・恥ずかしいよ・・・・」
「じゃあやめる?」
「・・・します。」
瑠璃は聡美の感じる場所を弄りながら、自分の感じる場所を自ら弄った。
聡美は、その瑠璃の淫らな姿を見ながら、自らが高まっていくのを感じた。
ちなみに、これもDVDで観たプレイ。
「聡美・・・・私・・・」
「うん・・・私も・・・・もうすぐ・・」
「いい?」
「いいよ。」
聡美は瑠璃を抱き寄せ、唇を合わせながら2人同時に渦に巻き込まれた。

「聡美。」
2人裸で抱き合ったまま瑠璃がふいに聡美を呼ぶ。
「ん?何?」
「次のお仕事ね、ドラマなんだけど・・・・・キスシーンが有るんだ・・・」
「・・・そうか。」
「聡美以外となんて、嫌だなぁ・・・・・」
「でも、お仕事でしょ?ストーリーには必要なんだろうし。」
「聡美は平気なの?何とも思わない?」
「そんなことは無いよ!でも瑠璃はその世界の人だから、覚悟はしてた。」
「聡美、私の事嫌いにならない?汚れるんだよ・・・私。」
「瑠璃は汚れないよ。瑠璃はキレイなままだよ。」
「撮影の後は、忘れさせてくれる?」
「大丈夫。私は瑠璃だけ見てる。」
2人は唇を合せた。
「ねぇ・・・」
「うん。」
不安を打ち消すようにお互いを求め合った。

その後、2ヵ月ほど瑠璃は帰って来なかった。

(ドラマって大変なんだなぁ。瑠璃、ちゃんと食べてるかなぁ?)

毎日のようにメールはしているが、前回の帰宅の時痩せていたのが気になった。

「岸本さんって、橘 瑠璃と友達なんでしょ?」
「え?あぁ、うん、まぁね。」
「サイン書いてもらえないかな?」
色紙を差し出しながら言われた。
「ゴメン、瑠璃から断るように言われてるんだ。」
「1枚くらい良いじゃん!お願いっ!」
「友達との約束だから。ゴメンね。」

(サイン欲しいのに、呼び捨てってどぉなの?)

毎回サインを求められる度に思う。
聡美は席を立ちその場を離れた。

それから更に1ヵ月。
夜中に瑠璃からメールが来た。
「聡美の家の前に居る。」
聡美は急いで部屋を出て玄関を開けると、以前より更に痩せた瑠璃が泣きながら立っていた。
「瑠璃?」
瑠璃は聡美に近寄ろうとしたが、その場で崩れ落ちた。
寸での所で聡美が抱えたが、瑠璃は聡美にしがみつき泣き続けた。
とりあえず中に入れ、聡美の部屋へ連れて行った。
聡美の両親が、瑠璃の両親へ連絡をし、ご両親が慌てて迎えに来たが、瑠璃は聡美にしがみつき泣くばかり。

結局、瑠璃の両親は自宅に帰り、聡美が瑠璃と一晩過ごす事となった。

「瑠璃、何か有ったの?」
聡美が瑠璃を抱きしめながら聞いた。
「・・・・・もう・・・無理かも・・・・・」
「何が?お仕事?」
「台本読むのも・・・現場に行くのも・・・写真撮られるのも・・・インタビューも・・・・怖い・・・・・涙が出てくる・・・・」
「少し、お仕事お休み出来ないの?」
「お仕事の数を減らしてもらってた・・・・でも変わらない・・・・・」
「そうか・・・」
「聡美は、芸能人じゃない私は嫌い?」
「私は、笑顔の瑠璃が好き。芸能人でも一般人でも、どっちでも良い。」
「・・・・・キス・・・して」
2人は唇を合わせた。舌を絡ませ合いながら、しっかり抱き合った。

翌朝、聡美はいつも通り制服に着替えた。
「制服の聡美、カッコいい。」
「そぉ?カッコいい?もっと言っても良いよ!」
瑠璃は立ち上がり、聡美にそっとキスした。
「瑠璃は準備OK?」
「うん。」

瑠璃と聡美と聡美のお母さんとで瑠璃の家へ行った。

瑠璃のご両親は、聡美が昨日瑠璃から聞いた話を真剣な面持ちで聞いていた。
聡美は、
「これ以上悪化させないためにも、専門家に診てもらった方が良いと思います。」
「聡美ちゃん、それって精神科って事?瑠璃はまだ未成年よ。」
瑠璃のママは泣き出した。聡美のお母さんが瑠璃のママを抱きしめ優しく擦っていた。
「未成年だからこそです。未熟だからこそ、ちゃんとした治療をしないと取り返しがつかなくなるんです。」
「こんな事なら、芸能界になんて入れなきゃ良かった・・・」
瑠璃のパパは下を向き、肩を震わせていた。
「このまま放っておいても、瑠璃は回復出来ないと思います。学校の先輩に伯母さんが精神科医の方が居ます。イジメから不登校になってしまったお友達が診てもらって、今は元気に登校されています。聖の過去の作品『普通の高校生』をご参照ください。」

カメラ目線で聡美が言う。

宣伝、ありがとう。聡美ちゃん。(筆者)

「今日、その先輩にお話ししてみます。瑠璃、それで良い?」
瑠璃は頷いた。
「パパとママはどうですか?」
「娘が回復するなら、我々は何でもする。」
「分かりました。とりあえず任せてください。」
聡美は学校へ向かった。

お昼休み、聡美は3年生の教室へ行った。
教室の出入り口の側に居た先輩に、
「私、2年の岸本 聡美と申します。お手数ですが、菊池 美紅先輩はいらっしゃいますか?」
「ん〜と?あぁ居た。キク〜、お客さん!今来るから。」
「ありがとうございます。」
すぐに先輩は来た。
「はい?何かご用?って、あれ?、あなた瑠璃ちゃんのお友達の子だ。」
「はい、岸本 聡美と申します。突然すみません。」
「どうしたの?」
「不躾なお願いなのですが、どこかでお時間いただけませんか?」「ん?ここでは話せない内容って事ね。分かった。今日の放課後空いてるよ。」
「では、今日の放課後お願い出来ますか?」
「分かった、昇降口で待ち合わせって事で。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

放課後、学校の最寄り駅近くのカフェに2人は居た。
聡美は、瑠璃の状態や家族の反応、美紅を呼び出した経緯を話した。「そっかぁ、瑠璃ちゃん大変だったんだ。可哀想になぁ。」
「はい。あんなになるまで頑張ってたなんて・・・」
「で、私を呼び出したのは、私の伯母に診てもらいたいから。で合ってる?」
「はい。知り合いでも無いのに図々しくすいません。」
聡美は頭を下げた。
「分かった。ちょっと待ってて。」
そう言って美紅は店の外へ出た。
しばらくして帰って来ると、
「了解取れたよ。『いつでもどうぞ』だって。」
美紅は手帳から1枚破ると伯母さんの名前、電話番号と病院の名前、住所を書いて聡美に渡した。
「ありがとうございます!あれ?携帯の番号ですか?」
「うん、伯母さんの携帯。瑠璃ちゃん有名だから、別の対応するって。病院が騒がしくなっちゃうと、他の患者さんにも影響が出ちゃうからね。13時頃なら電話出れますって。」
「そんな配慮までしていただいて、ありがとうございます。」
「何のツテも無いのに必死にダメ元で私の所に来たって事は、私にとって萌が特別な存在なのと同じで、聡美ちゃんにとって瑠璃ちゃんが特別な存在って事でしょ?」
不意の言葉に聡美は下を向いてモジモジしながら、
「・・・・・はい。」
と答えるのがやっとだった。
「耳まで赤くして。可愛いなぁ。瑠璃ちゃんは幸せ者だね。しっかり支えてあげるんだよ。」
美紅先輩の笑顔は、カッコ良かった。

その後、聡美は瑠璃の家に直接行った。
先輩からの話を伝え、連絡先の書かれた紙を渡した。
話しの間中、瑠璃は聡美の制服の袖口をずっと握りしめていた。
「ママの都合の良い時を伝えて、瑠璃と2人で行ってください。瑠璃もそれで良い?」
瑠璃は頷いた。
「聡美ちゃん、ありがとう。」
瑠璃のママは、ずっと泣いていた。
「ママ、私意外と頼りになるでしょ?」
「そうね。瑠璃がベッタリなのも分かるわ。」
「いつでも頼ってください。それじゃ、私帰りまぁす。おじゃましましたぁ。」
「聡美、私も行く。」
「ん?瑠璃のお家はここだよ?」
「カメラ・・・・居るから・・・・・怖い・・・」
「確かに。報道陣に囲まれてるもんね。ママ、瑠璃、しばらくウチの子で良いですか?」
「ご迷惑で無ければ・・・」
「了解しました!じゃ、ウチに帰るか!」
聡美は瑠璃を連れて、裏口から帰った。

瑠璃は診察してもらい「適応障害による摂食障害と不安障害」と診断された。
回復には長期の療養が必要だから、お仕事を長期お休みするか、思い切って辞めるかした方が良いと言われたそうだ。

瑠璃はご両親と話し合い、診断書を所属事務所に提出し退所することとなった。
学校も退学し、退寮した。

一段落ついたから、美紅先輩の所へ報告に行こうと教室を出たら、出会い頭で美紅先輩とぶつかりそうになった。
「ごめんなさい!」
「ううん、こっちこそゴメンね。」
「ちょうど先輩の所に伺おうと思ってたんです。」
「だろうと思ってコッチから来た。」
「色々ありがとうございます。先輩のおかげで無事色々落ち着きました。」
「後は時間に任せるしかないからね。で、コレ。」
美紅先輩に畳まれた紙を渡された。
「萌が昼間の外出を嫌がってた時に利用してたんだ。良かったら参考にして。それだけ。じゃっ!」

こちらの返事も待たずに去っていく美紅先輩。

(?)
と中を見ると、夜間に営業している美容院や、出張カットしてくれる美容師さんのリストだった。
(美紅先輩、瑠璃より萌先輩の方がはるかに幸せ者です!)

下校し、美紅先輩からもらったリストを瑠璃に見せると、瑠璃は子供みたいにはしゃいで喜んだ。
「そろそろ切りたかったんだぁ!」
久し振りに見る瑠璃の笑顔は、写真に残したいくらい輝いていた。
聡美は1つ決意した。

瑠璃は瑠璃のママと一緒に毎週病院に通った。
4ヵ月ほど経つと瑠璃は笑う事が増え、食べる量も増え、確実に回復へ向かっていた。
家の前の報道陣も減り、瑠璃は聡美の家と自宅とを行ったり来たり出来るようになった。

聡美もホッとしていたある日、聡美が学校から帰ると、
「お帰り〜。」
どこかの学校の制服を着た瑠璃が出迎えてくれた。
「あれ?可愛いじゃん!どうしたの?」
「通信科の有る高校に編入したの!本当は制服要らないんだけど、買ってもらっちゃった!」
「そうかぁ、良かったねぇ!制服も可愛いし、瑠璃に似合ってるよ。」
「うふふ。ねぇ、ねぇ、報告があるの!」
「報告?何?」
「お部屋でね。」
瑠璃はそう言って階段を駆け昇って行った。

空のお弁当箱をお母さんに渡し、
「瑠璃どうした?」
と聞くと、
「直接聞いてみなさい。聡美に1番最初に伝えたいみたいだよ。」
笑顔で言われた。

自室に行くと、ベットの縁に瑠璃が座り、自分の隣を笑顔でポンポンした。
聡美は瑠璃の隣に座り、
「報告って何?」
「私ね、芸能界辞めて、学校も辞めて、何も能がない中卒ニートになるんだと思ってたの。病気も治るか分からないし。でもね、私が病院に通ってる間も、聡美は毎日学校行ってて、聡美が眩しく見えたの。凄く羨ましかった。」
「私が?」
「うん。その事を先生に話したら、『定時制でも通信制でも高卒認定でも、その気になったら再開出来るんだよ。』って言われて、パパとママにも手伝ってもらって、過去の修得した単位と出席日数を持って手続きしたら2年生に編入出来たの!私、まだ1人では外に出るの怖いけど、高校卒業したら大学に行って心理カウンセラーになる!」
「おぉっ!スゴい進歩だね!」
「私には聡美が居てくれた。でも辛くて苦しい人全てに聡美が居る訳じゃ無いでしょ?私は聡美に助けられた。ボロボロな私を、聡美が支えてくれた。だから今度は私がみんなの聡美になりたい!私、バカみたいな事言ってる?無理だと思う?」
「瑠璃なら出来るよ。苦しみ、悲しみ、痛みを知ってるから。瑠璃にしか出来ないサポートが出来るよ。そうかぁ、瑠璃には新しい希望が出来たんだね。でも、無理はしないでね。少しずつだよ。」
聡美は、希望に満ちた輝く笑顔の瑠璃の頭を撫でた。

「瑠璃、私も決心した事が有るんだ。」
「なになに?」
「私、美容師になる。先輩からもらった美容院や美容師さんのリストを見て、喜んでいた瑠璃の笑顔を見てそう思った。あの笑顔がまた見たいって思った。」
「美容師さん?聡美が美容師さん?うわぁ~、きっとカッコイイんだろうなぁ~。私の髪もカットしてくれる?」
「もちろん!瑠璃の笑顔を見て決めたんだから。」
聡美は笑顔で答えた。

「カッコイイ美容師さんなら、モテるだろうなぁ~。浮気しないでね・・・・」
「その心配は瑠璃がお仕事してる間、私の方がずっとしてたよ。」「そっか・・・」
瑠璃は聡美の肩に頭を乗せ、
「聡美。聡美が美容師さんになって、私が心理カウンセラーになったら、2人で暮さない?」
「瑠璃ぃ~、今のプロポーズ?ねぇ、今のプロポーズ?聡ちゃんとずっと一緒に居たいって事?」
「もう!分かってるでしょ?バカ。」
聡美の肩に頭を乗せたまま、瑠璃は聡美の指に指を絡ませた。
「瑠璃の制服姿に、聡ちゃんムラムラしてるんだけど。」
「え~、夜まで我慢して。」
「はぁ~い。」
聡美は、指を絡ませあった手を、少し強く握り、
「お婆ちゃんになるまで、一緒に居ようね。瑠璃。」

瑠璃は顔を上げ、聡美のキスを受けた。


                            おわり

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