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崖から扉を開く

先日、浅野撚糸のダキシメテフタバというタオルを購入した。
浅野撚糸さんのタオルは吸収性が飛び抜けて素晴らしいという評判だったので、気になっていた。
会社のことを調べてみると、お父様の代から続いていたが、倒産の危機に何度も立たされて、再起復活をしていることがわかる。
浅野社長の

『悩む時は貯金がある時ですよ。
借金しかなければ、悩まず行動するのみです』

という言葉がとても印象的だった。
そんな会社の起死回生のタオルが届いた。
品の良いグリーンのタオルで、娘のなかなか乾かない髪がすぐ乾く。
本当に素晴らしいものだった。

今日、Kindleでたまたまとある本を読んだ。

売らないから売れる!

というタイトルの本で、これまた驚いたことにタオル業界で活躍されているタオルソムリエの
寺田元さんという方のものだった。
彼もまたお父様を継ぐ二代目だ。

ギフト業を営んでいたが、やはり上手くいかず、郵便局が大きな取引先だったが、郵政民営化で、そことの取引が3分の1になった。
さらには、パニック障害を発症し、なかなかうまく取りかかれない。
このままではいけないと様々な対策に取り掛かる。
まず、ギフト全般ではなく、何かに特化しようと試みる。
寺田さんが自分の心の中を探ってみたときにこれだ!と思ったものがタオルだったそうだ。
そこから、寺田さんのタオルでの起死回生人生が始まる。

人は崖に立たされると、根拠はなくとも無我夢中で、落ちまいと踏ん張る。それでも風に吹かれたら真っ逆さまなので、藁をも掴む思いで、一歩前に進む。

でも、目の前に、扉がある。
鍵が見つからない。
けど、開けないと後ろは崖なので、必死になって鍵を無理やり作って開ける。

でも、扉を開けても、また扉がある。
さっきより大きく、重そうだ。
鍵を探しに動きまくる。
ようやく見つける、開ける。
また、思いもよらないところで扉が出てくる。

これの繰り返し。

最終的には透明なドアにぶつかる。
その時は、ドアを探すところから始まるのかもしれない。

でも、ドアは、足や手を動かし、もがき続ける人にしか見えない。
やればわかる。
けど、やらないと本当に見当たらない。
小さいことでも、やらないと見つからないのだ。

私は、医療専門学校2年生の時、妊娠が発覚した。親やその時のパートナーは学校をやめなさい、といった。
先生も休学しなさいといった。
信念を伝えて、どうしても資格が欲しいと必死に訴え、理解してくれたのは母親だけだった。

妊娠しても、その日から何か起こるわけではない。
それなら小さいことの積み重ねだと思った。
できるとこまで、学校に通えばいい。
私は母親以外の反対を全部押し切って、出産の前日まで学校に通い、出産した。

その後も周りは反対した。
三年生は病院実習。
土曜日に通学し、国家資格の勉強をする。
まだ、生後2ヶ月の子供を抱えて、できるはずがないと猛反対された。

それでもそこは小さな決意しかなかった。
私が休学して、万が一資格が取れなかったら誰が責任取ってくれるのか。
そう考えて、やれるとこまで突き進んだ。
扉を開けるたび、新しいドアはどんどん大きくなったが、体が慣れた。
壁が出てくるのは当然と思えてたのだ。
思えばあの時は本当にまっすぐしか見えなかった。

そんな私を、母は、祖母のガンのケアをしながら、母自身の国家資格の勉強もしながら支えてくれた。
あんな素晴らしい人は他にはいないと思っている。

母が鍵になることもあり、扉は順調に開いていった。
無事に母も私も国家資格を1発で合格した。


崖に立たされる。
ドアがある。

そう気づいたら、それはその人にしかないチャンスだ。

私も、今もう一度崖に近づいている。
でもまだ余裕がある。
ドアは見えない。

もう一度、崖に立ちたいと思っている。
そして昔立ち向かった扉よりもっと大きな扉と向き合いたいとも、思っている。

人生は本当に一回きりだ。
何度も扉を開いてやる。


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