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映画業界のハラスメントの実態を描いた映画「アシスタント」

映画(アシスタント)(ネタバレありです)

映画プロヂューサーのアシスタントである女性の職場を描いた映画です。誰よりも早く出社して社内の電気を点け、帰りも会社の電気を消して帰宅する毎日で、絶対的なボスの元での過酷な仕事の実態が描き出されています。 

絶対的な映画プロヂューサーというキャラクターは、#Me Tooのきっかけを作ったニューヨーク・タイムズの女性記者を描いた「SHE SAID」を彷彿とさせますが、実際この映画もそのムーブメントをきっかけに製作されたと新聞記事にありました。

上司のパワハラや会長室に出入りする女性へのセクハラなど、「SHE SAID」のように、いつ主人公がキレるのか、最後のどんでん返しを期待しながら、中盤あたりは観ていましたが、その傾向は中々出現しません。最近の映画は120分程の長さが普通ですが、今回は90分程で終盤は時間がないぞと焦りながら観ていましたが。

後半に主人公が社内ホットラインのカウンセリング室へ向かい、上司のセクハラを訴えますが、結果的には社内カウンセリングは機能していませんでした。アドバイスどころか、当の上司にも主人公がカウンセリングに来たことが報告されてしまいます。 

仕事帰りに、疲れ切って寄ったファストフード店で休憩しながら、忙しくてできなかった父親への誕生日祝いの電話をしますが、父親からは仕事の内容を聞きたいと期待しているとの内容です。憧れの映画業界に就職できた娘への期待であり、自慢でもあるのでしょう。

店を出て歩く姿がラストシーンになりますが、何とも悲壮感が漂う主人公の後ろ姿が印象的でした。ただ映画はこれがラストでも、新たな行動を予感させるエンディングでもあります。このままでは終わるはずがない、このままの現実を主人公が受容し続けける訳がない、このまま耐え続ける訳がない等々。

今まで長い間黙認されていたセクハラやパワハラなどのハラスメントが、今次々と明らかになり糾弾されつつあります。勿論#Me Tooもその1つのムーブメントでありましたし、他にも様々な動きがあります。映画に限らず芸術のジャンルでは、セクハラやパワハラが常態化しながらも、告発が困難な土壌であると指摘されています。

映画では、残念ながら最後のどんでん返しはありませんでしたが、主人公の次なるステップを提示したものであり、その新たなステップへの飛躍を望んでやまないことを、観終わった後に感じた映画でした。(写真は公式サイトより引用しました。)

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