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韓国の社会構造の歪みを描いた映画「あしたの少女」

映画(あしたの少女)(ネタバレありです)

2017年実際に起きた事件を基に作られた韓国映画です。学校の紹介でコールセンターの実習生として働いていた女子高生の悲劇を描いたものですが、その劣悪な労働環境を通して現代社会の闇の部分を抉り出していきます。

最近の韓国映画ではこうした社会問題をテーマに描いた作品が多く、「半地下の家族」での貧富の格差、原作を基にした「82年生まれ、キム・ジヨン」での男尊女卑や出産で仕事を辞めざるを得ない現状、「ベイビー・ブローカー」におけるシングルマザー問題など、様々な社会構造の歪みを描いて、社会全体への問題提起をしています。

今回は1人の女子高生を通して、送り出す高校の就業率の数字至上主義や、受け入れる企業側も同様の利益第一の営業方針の中で、コールセンター特有の顧客からの苦情やクレーマー対応に追われながら、契約の継続と解約率の低下がノルマとして課され、社員ごとのランキングが壁に貼り出されます。さらに二重契約書で正当な賃金を支払わない労働搾取も横行しています。

こうした労働環境のために当然離職者が多く、さらに会社への抗議文を残して主人公の上司が自殺します。この事件で主人公は、増々精神的に追い詰められていきますが、辞めたいと思っても学校からの紹介で辞めることもできず、ついに情緒不安定になって、新しい女性上司と口論となり、3日間の出社停止を言い渡されます。

その後事件が発生しますが、担当した女性刑事が捜査を開始し、職場、学校、女子高生の友人、自殺した上司の妻、学校を管轄する地方の役所など、様々な聞き取りを行います。
そして浮かび上がったのは、下請けのコールセンターに業務を委託している大企業の隠蔽体質で、自殺した上司はギャンブラーで浮気性との偽情報を流して会社との関係を否定し、女子高生の場合も家庭内の問題と、これも関与を否定します。さらにセンター長は今回の件で、会社の名誉が傷つけられたと逆切レしてしまう始末なのです。

さらに学校でも就業率の結果で役所からの補助金が決まるので、実習先の労働環境も確認せずに、教頭から主人公が問題児扱いにされてしまいます。学校を統括する役所の対応も責任転嫁の役所体質で、巨大な病巣が潜む韓国の社会構造の現実が、否応なしに突き付けられます。

主人公の女子高生は、そうした社会構造の歪みに押しつぶされた被害者に他なりません。自助だけではどうしようもない社会構造は、政治が主導しながらその仕組みを変えていく必要があります。この問題は日本でもまさに今直面している喫緊の課題であると思います。
(写真は公式サイトより引用しました)

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