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磯崎新が具現化したプラトン立方体「北九州市立図書館」

建築(北九州市立図書館)(敬称略)

北九州市小倉北区の市役所近く勝山公園にある市立図書館は、設計が磯崎新で1974年の竣工です。同年に竣工した同じく同氏設計の北九市立美術館と共に、北九州市における磯崎作品の代表的な建築物と言えます。現在は市立図書館とこども図書館、市立文学館の3つの施設から構成されています。

よく比較される2つの建物の特徴は、図書館の屋根のボールト(半円)と、美術館のキャンティレバーのキューブ(張り出した四角)の対比です。
1970年代の磯崎は自らの理論に基づくその具現化(建築化)に取り組んでいましたが、プラトン立体のような形態の中でも基本形となる〇と△と□を具現化することで、純粋幾何学的形態であるがゆえに、建築における象徴性を表現することができると考えたのではないかと推測します。

そういう意味でその具現化を実践したのがこの図書館であり、この建物の紹介で多用されるのが上部から見た鳥観図です。プラン(平面図)においても半円状のシリンダーのような建物が同様に半円を描いています。つまり立面だけでなく平面にも円をデザインしている訳です。

これは内部に入っても同様で、ボールトの屋根の形状に沿った半円形のフレームが屋根材を支えるデザインになっており、建物内部にも半円形の空間が広がっています。さらに文学館の側面には豊後の思想家・三浦梅園の著書に描かれた図を基に磯崎自身がデザインしたステンドグラスがはめ込まれてあり、この建築物において、そのシンボリックな存在感を放っています。

1974年竣工ということは既に50年を経過していますが、建物のメンテナンス状態は良い方ではないかと感じました。見学に行った5月1日はメーデーで、あいにくの雨で水曜日にもかかわらず何と図書館は振替の振替で休館日。それでも開館している文学館には入館できたので、内部空間も見学することができました。

東大に在学中から父親の人脈により建築の仕事依頼があったという磯崎は「パトロンに恵まれた建築家」と言われます。代表的なパトロンは福岡相互銀行の頭取だった四島司と言われますが、この北九州市長を務めた谷伍平もパトロンであったと、磯崎自身が公言するのをはばからなかったといいます。
行政と建築家の癒着を疑念視されながらも、その才能を見抜いた谷と、それに数々の作品でその期待に応えた磯崎との関係は、パトロンと建築家の良好な1例だったかもしれません。

この後1990年に竣工した国際会議場で、さらなる磯崎の進化系を見ることになります。

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