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ミラノデザインウィーク4(90年前の自転車で走る)

4人分4台の自転車はどれもデザインが違うものでした。

私は一番背が高かったので、足つきの悪い自転車をお借りしました。


乗れない
こどもの頃の自転車乗り(笑)



乗る時、降りるときの不安はありましたが、少し乗っているうちに
慣れてきました。

私がお借りしたのは、1930年代のイギリスの自転車だそうです。
川辺の細い道には散歩をする人たちがたくさんいました。
もちろん今の自転車に乗る人たちもいます。
色んな種類の木の異なる新緑と水面、真っ青な空。
ちょっとひんやりした空気。
都市ミラノとは全く違うイタリアがありました。


こんな道を走ります


スタンドはありません
美しい風景

自転車は景色を見るのに、ちょうどよい速度で走ります。
自然と頬が緩みます。自然のなかに溶け込む感覚になっていました。

しかし、相変わらず車高の高い自転車は足つきが悪いので
止まる時は注意が必要です。
走り出すときも、小学校低学年の子供がお兄さんの自転車を
借りた時のように、腰をハンドル側に近づけて、エイとばかりに
こぎ出してバランスをとる必要があります。

しかし、その不便さ以上に高い車高と快適な速度で
流れる景色は素敵だったのです。

そして気がつきました。
自転車に乗っている時の姿勢が、馬に乗っている時に近いのです。

サドルの位置。ハンドル、ペダル、自然と背筋が伸びる。
目線が高くなる姿勢は馬でゆっくり走る時の姿勢に近いのです。

今から90年前。この自転車を設計した人は
もしかしたら、馬に乗っている気持ちよさをこの自転車で味わいたい。
そう思って設計したのかもしれません。
その時代だって、乗りやすく機能的な設計にはできたはずです。
でも、このデザインになったのは、もしかすると、
この日、私が感じた心地よさを感じてもらうことを
最大の目的にしたからなのかもしれません。


ダヴィンチが設計したという動力無しの渡船の前で
こちらも一緒に走りました
ビアンキ


ビアンキのエンブレムがイイネ♥

Yさんの自宅に戻ると、当時の自転車、自転車パーツのカタログと本を
見せて貰いました。
ページを開くと、さっきまで私の目の前に広がっていた
景色と、素敵な服を着こなす人、それに自転車が描かれていました。
それはまるで上品な絵本のようでした。


表紙からして素敵
美しい
当時の空気が感じられます

Yさんが言いました。
「いい自転車には、いい景色と、素敵な人が必要なんですね。」

良いモノを作るということは、
機能的で買いやすい価格で便利なものを作るだけではなく、

そのモノを手にした人がどれだけ豊かな気持ちになれるのか?
モノと人が創り出す、生活の豊かさ、美しさまでも意識して
デザインすることが大事なのだと。

良いデザインは、モノのそのもののデザインだけでなく、
生き方までもデザインする力があるのだと思いました。

ミラノデザインウィークで、
多くのブランドが、展示会場ではなく
街中を表現の舞台にしているのは、
日常のなかにある、豊かさ、心地よさ、その空間から
伝えたいブランドとしてのメッセージがあるからなのだと思いました。

美しい日本に住んでいるのだから。

身の回りの美しさを感じて、感謝して
そんな日常を、もっと貪欲に楽しもうと思いました


公園
新緑が綺麗すぎ
日曜日を過ごす人達
街に溶け込む旧車

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