秘密のお茶会



学校はどうだい?
「普通だよ」
友達とは?楽しくやっているかい?
「ほどほどに居るよ、普通に楽しいよ」
そうかい...君は普通しか言わないねえ。でも、それでいいんだろ?
「...そうだね」
...好きな人はできた?
「っ!?知らないそんなの!」
ふふ、顔が赤いよ。
さあ落ち着いて、この紅茶を飲みなさい。ゆっくり、ひと口ずつ、じっくり味わってね...。


 アルフレッド・ブランは普通な奴だった。
彼は名門の男子校に通っているが、ごく普通の家庭から、親の希望で入学した。成績も普通、運動も芸術も普通。彼がこの学校に合格した理由は、神のみぞ知ると言ったところか。
人並みに努力はする方なので、嫌われ者にはならなかった。
「アルフレッド、お昼ご飯どうする?」
「今日はお弁当を持ってきたよ」
「お前〜!寮生なのによくやるな〜!!」
こんな調子で、いつもと変わらない普通の日だった。

「知ってるか?裏庭のお茶会。今度俺呼ばれたんだ〜!」
「え、いいな〜あのお茶会、呼ばれないと参加も見ることもできないんだろ?おまえは運動できるもんな〜」
「お茶会...?」
「なんだアルフレッド知らないの?」
「裏庭でとある先輩たちがいつもやってるお茶会!貴重な情報交換や、先輩方から色々なお話聞けるって!外部に行く人もいるから女子の話も聞けるかもよ!」
「女子〜!」
アルフレッドはにこやかにしながら、内心あまり興味がなかったので、黙って聞いていた。親に希望されて入学した身。浮いた話よりも先に、数年後に訪れる卒業の方が待ち遠しかった。
 学校の裏庭のことは知っていた。綺麗にされた花壇と木々、そして奥には、通れないくらい生い茂ってしまった茨の森。そんな裏庭でお茶会があったなんて...。
「そのお茶会にさ、うちのクラスのエドワードがいつも参加してるんだってよ。すごいよな。」
「本当に?!すごいな...」
お茶会への参加は、先輩方からの招待制。盛り上がる会話の中で、アルフレッドにはエドワードという名前がよく耳に入った。
「エドワードって、髪の長いあいつ?」
アルフレッドが口を開いた。
「そうだぜ、喋ったことないけど、なんか暗い感じだよな。なんで先輩のお茶会に毎度呼ばれてるんだろ。」
「俺も喋ったことないなあ。髪が長くてよく見えないから、顔もはっきり見たことないけど、華があるって感じではないよな。アルフレッドはこないだ、体育でペア組んでなかったっけ?どんな奴だった?」

 ある日の体育____________ペアでキャッチボールだった。いつもの2人で組まれる中、アルフレッドは彷徨っていた。
(あいつら早々と組みやがって...もうみんなペアが決まってるのに僕はどうしたらいいんだよ...!)
そこに、エドワード・サリバンが居たのだ。
彼は普段から口数が少ない、所謂内向的な生徒だった。サリバン家は名門という話もあるが、彼は黒く癖のある髪を、顔を覆い隠すように伸ばしていた。おかげで表情も見え辛く、皆は彼を遠巻きに見るだけとなった。
「あ、エドワード...。ペアいない?」
「あ、うん...君も?」
「.......一緒にやろっか」
エドワードはこくりと頷いただけだった。

「........あんまり喋らない奴。暗い奴だったよ。」
「キャッチボールしてる時も黙ってたな!それは見てた!」
3人で並んで歩く廊下。肩をぶつけ合う友達。普通人並みに生きてきたら経験すること。もしやエドワードは、この小さな幸せを普通に感じられないのかと思うと、アルフレッドは柄にもなく少し気の毒に思った。
「そうだ、俺が招待されたお茶会、みんなで行こうよ!」
「え、いいのか?俺たちは招待もらってないぞ?」
「こないだも友達と一緒に行ったって奴いたよ、大丈夫だろ!アルフレッドも行こうぜ!俺も1人で行くのは流石に緊張するからさ。」
あまり目立つことを好まないアルフレッドだったが、少し考えて、友人の期待の顔に折れて承諾した。
「よかった〜アルフレッドはテーブルマナーはちゃんとしてるから安心だぜ〜!困ったら助けてくれよな!」
 3人でお茶会に参加することにした彼らだった。そこにエドワードも居るのか、と気がかりはあるが....。

 土曜日。昼下がりの放課後______
3人は裏庭のお茶会に参加していた。先輩方からは、招待していない2人について問われるが、幸い同席を許可された。
緊張の面持ち、彼らは談笑した。
 そこには、エドワードも居た。
 長い前髪に隠されて表情は見えないが、あまり楽しげではないようだ。
(緊張してる...?でもいつも居るって聞いたけど...体調でも悪いのか?)
アルフレッドが怪訝な顔でエドワードを見ていると、彼と目が合った。(ような気がした)
前髪のカーテンの隙間から、澄んだヘーゼルの瞳が、アルフレッドをじっと見つめていた。
(えぇ....なに?なんか気に障ったのか...?)
アルフレッドは目を逸らした。と、その時。
ガチャン!
「大丈夫かい?エドワード、新しいお茶菓子とフォークを」
友人の1人が菓子とフォークを落としてしまった。
エドワードは黙って近くの小屋へ行くと、新しい菓子とフォークを持ってきた。
(ああ、こいつ、パシられてんだな)
アルフレッドは静かに察してしまった。
(いつも静かだしなんにも言わないから、先輩方からいいように使われてるんだな)

「楽しかったよ。いい話も聞けた、クラブ頑張ってね。」
「ありがとうございます!またご一緒させてください!」
下校のチャイムが鳴る。お茶会がお開きになる。
アルフレッドはエドワードのことを気にしていた。あのヘーゼルの瞳に見つめられてから、気がかりでしかない。助けを求められたのか、はたまた_______
「あ、ハンカチがない」
アルフレッドは裏庭にハンカチを落としたことに気がついた。
「先に帰っていいよ、僕ハンカチを落としたみたいだ。」
「わかった〜。」
「じゃあなアルフレッド!また来週!」
 アルフレッドは裏庭へ急いだ。入寮祝いで母からもらったハンカチだった。
(すごく汚れてたら嫌だな....)
裏庭へ着くと、話し声が聞こえたので歩みを緩めた。
「楽しかったねエドワード」
「あの子と見つめ合って、好きになっちゃったの?エドワード」
「もっと深くして、喉まで」
声は、先輩方と____エドワードの少し苦しそうな声だった。
(え...?何してるんだ.....?あれは....エドワード?)
「お茶会抜けたいなんて言わないよね?君は僕らの犬になるんだもんね?」
「僕らなんにも悪いことしてないもんね?僕らのこと好きだもんね?」
エドワードは先輩たちの言いなりのようだった。モノを咥えさせられ、まるで物のように犯されていた。
(こ、怖い.....!!)
本能的にアルフレッドは物陰へ身を潜めた。エドワードの苦しそうな声が聞こえる。足が震える。
行為を終えた先輩方は満足気に帰って行った。
「あの子ももう一度呼ぼうか」
「そうだな、楽しんでくれるかもしれないからね」
 エドワードは顔を洗い、お茶会で使った茶器を片付けようとしていた。
アルフレッドは恐る恐る彼に近づいた。ハンカチのことなど忘れていた。
「あの、さっきの...」
「アルフレッド、だよね。何か用?」
「いや、えぇっと....大丈夫?その...なんか、さっきの、ダメな奴だよね。その...僕ら学生...」
「ここ、男子校だよ。しかも寮生活の生徒がほとんど、仕方ないよ、いいんだ、気にするなよ。」
今までで一番会話した。アルフレッドは驚いた、なんだ喋れるのかよ。
「君は、嫌って言わないのかよ。」
「言わない。ダメかよ。なんなの?」
「大丈夫かよ、僕は心配してるんだよ!」
アルフレッドの正義心が、エドワードについて珍しく感情的になった。アルフレッドはエドワードの肩を掴み、そんな自分に驚いて続けた。
「先輩相手でも、嫌なことは嫌って言えよ!さっきのはどう見たって普通じゃない、おかしいよ!」
「じゃあ、君が助けてくれるの?」
アルフレッドはエドワードから咄嗟に離れた。
彼の瞳が、急に輝いたのが、なんだか怖くなったのだ。
「...僕帰るよ」
「明日も来てよ。日曜だけど、僕はここに居るから。」
返事もせずに、アルフレッドは裏庭を後にした。

翌日、日曜日____________
(ハンカチのこと完全に忘れてた.......)
アルフレッドは昨日忘れたハンカチを取りに、寮を出て学校の裏庭に来ていた。
迂闊に人様の私情に口を出すなんて失礼なことをした、と反省していた。
(そんなつもりじゃなかったけど来てしまった。本当に居るのか?)
“明日も来てよ”
エドワードの言葉がよぎった。あんなに不思議な奴は初めてだった。
「来てくれたんだ」
昨日の小屋の方から、エドワードが声をかけた。
まさか向こうから声をかけられるなんて、アルフレッドは思ってもなかったので驚いた。
「君から声をかけてくるなんて珍しいじゃないか!」
「そんなに驚かなくても...とにかく来てくれて嬉しいよ。」
「そんなつもりじゃない!僕は昨日ハンカチを落としてそれを取りに...」
「これのこと?」
エドワードは見計らっていたかのように、ブーゲンビリアの刺繍が施されたハンカチを差し出した。
「土がついて汚れていたから、綺麗にしておいたよ」
「あ.........ありがとう....」
拍子抜けながらもアルフレッドはハンカチを受け取った。
ハンカチはとても綺麗だった。
「...案外優しい奴なんだな。」
「失礼な。」
「この学校の人が、土のついたハンカチを拾うとは思えないからさ。」
2人は見つめ合った。先に目を逸らしたのはエドワードの方だった。
(なんだか内向的だけど、本心は読めない奴だなあ。)
エドワードは目を逸らしたまま、沈黙してしまった。
(別にこいつと喋りに来たわけじゃないけど、黙らせてしまった...。ハンカチは見つけたし、もう帰るか。)
ハンカチをポケットに入るようたたみ直し、それを胸ポケットに入れた。じゃ、と声をかけて去ろうとすると、エドワードが少し寂しそうに見てきた。
アルフレッドはその瞳に思わず言った。
「また、明日も来ていい?」
エドワードの顔が少し明るくなった。小さく頷いた。
「ハンカチありがとう、先輩がいない時間に来るよ、2人で...もうちょっと喋りたいしさ。」
「待ってるね。」
アルフレッドは裏庭を去った。なんだか変な気分だけど、嬉しかった。
クラスでもひとり異質な、あのエドワードとこんなに喋ることができるなんて!案外エドワードもいい奴じゃないか!と思っていた。ハンカチも胸ポケットから、アルフレッドの様子がわかっただろう。

 翌日は少し曇りだった。アルフレッドは放課後に、例のお茶会が開催されないことを確認し、裏庭に向かった。(先輩方は午後から校外学習の日だった。)
その日は友人2人もクラブがあって、アルフレッドはひとりだった。好都合だった。
 裏庭に着くと、あの小屋に、昨日のように、エドワードが居た。
「やあ、エドワード。」
「アルフレッド、待ってたよ。」
側から見れば2人は友人そのものだった。
「僕と喋るなら、教室でもいいんじゃ?」
「えっと、2人きりがいいだろ?」
小屋の中の小さな椅子に2人は座った。テーブルの上には茶器が。
「アルフレッド、お茶を飲むかい?先輩には秘密の、良い茶葉があるんだ。」
「え、なんでそんな?ああ、君んちはそういう取引がある家だったっけ。入学の時に言ってたね。」
「覚えててくれて嬉しい。さあどうぞ。」
エドワードは、カップに茶を注いだ。慣れた手つきで、湯気の出るポットを傾けた。
すると、なんとも甘く華やかな、そしてうっとり溶けてしまいそうな香りが漂った。
「どうぞ。」
「ありがとう、こんなに良い香り、高価な奴なんだろう?僕なんかがいいのか?」
「アルフレッドに飲んで欲しかったんだ。」
不思議に思いながらもアルフレッドはその茶に口をつけた。
香りは甘くとろけそう、味は少し舌にピリッとくるスパイスとコクのある深い味わい...正直今まで飲んだどの茶よりも素敵だと感じていた。
「美味しい...!ただなんだかふわふわする...」
「スパイスが血行を良くしているんだよ、お口にあって良かったよ。」
エドワードは微笑んだ。彼の笑顔を見るのは初めてだったかもしれない。
 2人で友達みたいな会話をして、2人で笑って、手を繋いで曇り空の下散歩してみたりした。アルフレッドにとっては、エドワードはもう友人だった。
 下校のチャイム。アルフレッドはもう帰るよ、と少し微睡んだような目でエドワードの手を離した。
エドワードは離したくなかった。せっかく楽しい時間なのに、と。
「明日、教室で、声かけても良いかい?君は意外と楽しい奴じゃないか。」
そう言われて、エドワードは肩を落とした。
「わかった。そして、放課後はここに来て。お願い。」
アルフレッドは大きく頷いた。
「わかったよ。君、寮生?」
「ううん」
「そっか、じゃあまた明日ね。」
アルフレッドは手を振って歩き始めた。
エドワードは彼の背中を見つめながら、手を振り返し続けた。エドワードにとって、初めてと言える恋だった。

 帰り道のアルフレッドは、エドワードのことを考えていた。
(案外喋ってくれるじゃないか、暗い奴なんて見た目で決めるもんじゃないな。僕にあんな良いお茶を出してくれるなんて、気もきくし。...あのお茶、どんな味だっけ?美味しかったのは覚えてるけど...。あいつ、明日またアレ出してくれないかなあ。)

 それから、ほぼ毎日、アルフレッドとエドワードは教室で挨拶を交わしたり、放課後は先輩がいない時間に、裏庭の小屋で2人きりのお茶会をしたりしていた。
2人の時間は楽しかった。けれど、お茶会が開催されない日でも、たまに先輩が裏庭にやってきては、エドワードのことを犯すのだった。
2人きりでいる時、アルフレッドはそのことについて、また聞いてみた。
「不躾なのは分かってるけど、先輩たちのアレはなんとかならないの?君がかわいそうだよ。仕方ないって言ったって...」
するとエドワードは、少し黙ってから、話し始めた。
「別に、犯されるのが、嫌いなわけじゃないさ。何も感じないよ。先輩たちは、どういうつもりか知らないけど、僕は、なにも...だったら君が、君が代わりにしてくれるの...?」
思ってもみない返事に、アルフレッドは怖くなった。
(僕が?君にあんなことをしろって?友達に何言ってるんだ...)
「ごめん、なんでもないよ。あ、お茶、できたよ。」
「あ、うん...。」
甘く溶けてしまいそうな香り、少し舌にピリつく味わい...。エドワードは、アルフレッドと小屋にいる時、必ずあの茶を出していた。
それにはアルフレッドも善意と受け取り、高価そうな茶に申し訳なさもありつつ、頂くのだった。
「やっぱり、このふわふわはちょっと気持ちいいね。」
「だろ?僕もこれが好きなんだ。」
不思議な茶の虜になっていたのかもしれない。少し浮遊感のある感覚が、アルフレッドはクセになっていた。
「アルフレッド、あのね。」
「なあに、エドワード。」
「僕は、君のことが好きなんだ。」
ピンと感覚が戻る音がした。心臓が急足になり、アルフレッドの本能が、何かを感じ取った。
「君が....?僕らは友達じゃ...?」
「アルフレッド、愛しているよ。」
アルフレッドはエドワードに手を掴まれた。なにか急に怖くなり、アルフレッドは逃げ出すように椅子を立ち、走り出した。アルフレッドが座っていた椅子がガタンと倒れ、小屋の扉も開け放たれた。
 エドワードは、倒れた椅子を置き直し、それに座った。

 勢いで帰ってきてしまったアルフレッドは、帰路のことを覚えていなかった。
(急に逃げ出すなんて悪いことしたな...明日謝るか...。でも僕のこと愛してるって、どういうことだ?あんまりピンと来ないや...)
彼は急に逃げ出してしまったことに反省していた。エドワードに急に好きと言われたことでも頭はいっぱいだったが、それと同時に謝らなければと思っていた。
(...今日はなんだか眠いから、早く寝よう...。明日は日曜日か...あいつ裏庭にいるかなあ?)
就寝の支度をして、アルフレッドはエドワードのことを考えながら眠りについた。

 翌日。アルフレッドは起床後、シーツを綺麗にたたみ、枕を整え寮を出た。天気は重めの曇り。雨でも降りそうだった。
 裏庭の方へ行くと、エドワードの気配を感じなかった。
(変な逃げ方して、嫌われちゃったかな...)
エドワードを探して小屋へ入ると、テーブルの上にあの茶が置いてあるようだった。
すると、物陰から突然、アルフレッドは何かに手を掴まれた。
「!?エドワードッ...!」
それはエドワードだった。アルフレッドを掴む手とは反対の手に、大きめのポットを持っていた。
「これを、これを飲んで!これを飲んで僕のものになってよ!」
エドワードはアルフレッドの顎を掴み、口に無理やりポットを当てがった。
(何が起きているんだ!?)
流れ出る茶を、アルフレッドは飲むしか術がなく、口から溢れていった。それでもポットから茶は出続ける。アルフレッドは必死に、飲むしかできなかった。
(ふわふわが...まわる........)
じんわりと茶は、アルフレッドの体を駆け巡り体の自由を奪っていった。膝から崩れ落ちて、再びエドワードに手を掴まれた。
「これには幻覚作用と中毒性のある成分が含まれているんだ...君が毎日ここに来てくれる理由になったんだ...僕は君が好きなんだ...だからこうするのがいいんだ...君は、僕のこと好き?」
 エドワードはアルフレッドに乱暴した。
こんなことになるなんて、思ってなかった。友達だと思っていたのに。
けれど、不思議と、嫌ではなかった。
(エドワード...君のヘーゼルの瞳を見た時から、君に惹かれてたのかもしれないな...)
「アルフレッド、君が好き。」
(君と喋るのが楽しいと思えたのは、お茶のせいじゃないだろう?)
「アルフレッド、愛してるよ。」
(君は、素敵な奴じゃないか...。)
「アルフレッド、僕のものだよ。こんなに優しい、優しい...僕を大切にしてくれる...本当に好きだよ...。」
エドワードは、細い体のどこにそんな力があるのか、動けないアルフレッドを引きずって、裏庭の奥へと進んだ。
(動けない、動けないよエドワード。どうして川の中を歩くの?溺れてしまうよ!でも僕、君にこうされるのが嫌じゃないんだ。ああ、嫌って言わないよ。君のこと、好きになっちゃったんだなあ。だから僕は嫌って言わないよ。)
そこに川なんかない、アルフレッドは酷い幻覚を見ていた。けれど、そこにはエドワードという要因があるので、高揚感に似たものを感じていた。アルフレッドもいつの間にか、狂ってしまったのかもしれない。
 そしてエドワードと引き摺られているアルフレッドは、裏庭の奥、茨の森の前まで来てしまった。
バキバキと茨の道を進むエドワード。アルフレッドは体を動かせず、ただ成されるがままに、茨にズタズタにされていた。もう考えることもおぼつかない、痛みなど感じない、中毒症状が、全身を巡っていた。
「アルフレッド...僕...君とひとつになりたい!このまま!2人で...!」
エドワードは茨の真ん中に倒れ込んだ。そのまま引っ張られるように、アルフレッドも横たわった。
2人向き合うように、手を握り、そして、茨が絡みついてきた。2人で目を瞑ると、真っ暗になった。
「愛してるよ、エドワード。」
最期にエドワードが聞いた、アルフレッドの言葉だった。



あとがき

夢でメリバティーンBLを見るなと言いたいです自分に。
なんちゅう夢見とるんじゃ。けしからん。
夢日記よくないって聞くけど、寝てる間に作品創るのが悪いよネ。俺は夢を覚えているぞ。

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