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【映画感想】 『白と黒の恋人たち』 Sauvage Innocence - 久々の "ガレルらしさ" に歓喜の120分

ああそう、これがフィリップ・ガレルなんだよね!!!

もの哀しさが残るぶっきらぼうなカット、
不安と切なさをほんのわずか残す残響、
情緒の入り込む隙間もない硬派な映像美に、そのはずなのに胸が締め付けれられる不思議な世界観…………

くちっとしてよく締まった口元をもつ、目立たないけどなぜか魅力的な女優陣、これはガレルの他作品にもよく思うんだけど圧倒的に "ガレル主観の好み" が全面的に反映されている、そうかこういう女性がタイプなのかガレルは。

ガレルを観ているとたまに「魅力的な耳を持つ女の子」をテーマに書いた村上春樹の何かの小説を思い出す。タイトルは忘れてしまったが。ガレルは村上春樹だったのかもしれない。いや、撤回だ、わたしはガレルを愛しているが村上春樹の男たちはどうも好かないからな。

一応形式的にあらすじは書き残しておくか。

あらすじ:冬のパリの街角。若き映画監督フランソワと、女優を志すリュシーは出逢い、その瞬間から恋に落ちた。一本の映画を撮るために、お互いを強く必要とする二人。しかし、一見順調に進んでいるかのように見えた撮影の影で、リュシーはヒロインの激しく奔放な役がうまく演じられずに戸惑い始めていた。深く愛し合い、純粋だからこそ傷つき合う二人は、やがて苦悩への道を歩み始める…。

 フランス現代文学界の新鋭メディ・ベラ・カセムと新星ジュリア・フォールを主演に迎えた、みずみずしくも豊潤なモノクロームの世界。本作は、70年代、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌姫ニコとの愛の日々を送ったフィリップ・ガレル監督の私小説ともいうべき、激しくも狂おしいラブストーリー。ヌーヴェル・ヴァーグの "アンファン・テリブル(恐るべき子供)" と呼ばれ、ゴダールからカラックスまで、世界中の映画監督が心酔するガレルの、新たなる到達点とも呼ぶべき傑作である。

日本版DVDパッケージより

2001年ヴェネチア国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。

ああそういえばニコとガレル、付き合ってたね。その時のね。

雄叫ぶニコと全裸のガレル。砂漠がこんなに寒々しく、また清々しく感じられたのは生まれて初めて。広大な空間に轟く魂を絞り上げるようなニコの叫びと、ガレルの沈黙の演技に鳥肌が立った。ニコの逞しく、どこかぶっきらぼうな歌声も相まって最高級の映像。ベタつきを一切感じさせない二人の愛の産物。オールタイムベスト。

『内なる傷痕』当時の自身のレビューより

男性の肩越しに撮られる女性が美しい。ほとんどがバストサイズ、アップで映される窮屈めの人物のカットの中でも、そうして愛おしそうに撮られる女性の佇まいには安心させられる。フィリップ・ガレルの男達ってどうしてこう弱そうで情けないのに、母性を掻き立てられるものがあるんだろう。一人きりで生きていけない男達に向けるガレルの友愛の眼差し、彼らの友情の描き方が好き。ついでにガレルの女性達は現実的ながらどこか聖母のような包容力がある。女性目線ながらそんなさりげない女性達が大好き。

『愛の誕生』当時の自身のレビューより

このあたりか。
若きガレルがニコを思いながら撮ったであろう初期作は。


ガレルの他作品をおさらいしているうちに、ガレルについて愛の賛美の限りを尽くし過去のレビューとして叫んでいた自分を散見したのでガレル愛を叫ぶのは当時のわたしの言葉に任せよう。


それはそれとして今作、あらすじにもある通り "ある到達点としてのガレル" を観られるのは本当。傑作。まじ傑作。大好き。愛してる。



Emoru

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